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魔人種  作者: マーチ13
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序章 9    大量の獲物

ユウは、研究所の物を次々と収集していた。

ヤルザンブは、変な奴だったが、確かに上位悪魔と言われるほどの力を持っていた。

その内の一つが大規模な空間の制御で、場所の移動は基より、自分専用の亜空間を作れ、そこに大量の物を入れられる。

「まるで何々ポケットだな。」

大量に持ち運べるのを、これ幸いと、とくに判別したりせず、手当たりしだいに亜空間に入れて、持って行く事にした。


作業がすべて終わるころになると、外は薄暗くなっていた。

実はここにはまだ人が残っている。実験用に連れてこられた奴隷達だ。

彼らは、命令に服従するよう、魔法の呪いや枷を掛けられて牢屋に入れられていた。

ユウは彼らを解放するつもりだが、自分の事は知られたくないので、姿を見せずに眠らせてから、牢屋の鍵をあけ、枷や魔法を解き、彼らの分の当面の食料と金を残してから研究所を去った。



奴隷達は困惑していた。

警報が鳴り響き、大きな振動が襲うが、ここでは何が起きているのか分かるはずもなく、ましてや、ここに説明出来る者など居ない。

何人かは、脱出のチャンスかもしれないと、騒ぎ始めたが、殆どの者が無理だと諦めて、ただ鳴り響き続ける、警報の音を、聞いている事しかできない状況だった。

暫らくして、警報の音が止んだ。

「さっきの音はいったい何だったんだ?」

「さあな。何にしろ俺達には、関係無い事だろうよ。」

「あいつら、説明しに来ないかな。」

「どうせ殺す奴隷なんかの所に、来るわけ無いだろ。」

「そうだよな。」

警報が止まったことで、脱出と騒いでいた者も、無理だと諦めていたが、淡い期待も抱いていた者も、一様に落胆していた時、突然強烈な眠気に襲われて、全員抗うことなど出来ずに、意識を失った。


「おい!起きろよ!!」

「う・・・ううん・・・・・・なんだよ、いったい。」

「いいから起きて目を覚ませ!!そして手足を見てみろ!!」

男は、奴隷仲間に言われるまま、自分の手を見て気付く。

「なっ!!?無い!!?」

あわてて足を見る。

「こっちも!!いったいどうして!!?」

手足に掛けられていた枷が、無くなっていた事に驚き、周りを見ると全員が、同じ状況だったのを見て、さらに驚く。

「枷だけじゃない、扉の鍵も開いてるんだ。」

扉に目を向けると、扉は外側に開いていた。

「いったい、何がどうなってるんだ?」


意識を取り戻したら、枷が無くなり、おまけに扉が開いていたという、

あまりに出来すぎた状況に、奴隷達は最初に罠を疑い、外に出るのを躊躇していたが、ここに居ても殺されるだけという恐怖と、助かるかもしれないという希望によって、外に出ることを選んだ。


恐る恐る牢屋の外にでた奴隷達は、そこに大量の食料と、いくばくかの金が置いてあったのを見つけて、首を傾げた。

その後も、慎重に研究所の探索を続けるが、誰とも出会わず、というか何も見つからない。

大型家具さえ見つからず、まるで引越し跡のような部屋ばかりだった。


奴隷達は、すでに夜だったので、一晩をここで過ごし、明日の朝早くここを出ることにした。

ここの人間が、一時的に何処かへ移動しただけなら、直にでも戻ってくるかも知れず、また捕まったら、今度こそ殺されるかもしれず、急いでここを離れることにしたのだ。

なぜ枷が無くなっていたのか、なぜ扉が開いていたのか、なぜ誰もいないのか、なぜすべての部屋からあらゆる物が無くなっていたのか、なぜ食料と金が牢の外にあったのか、何一つ分からぬままに、早朝、明るくなると彼らは急いでこの場を後にした。



この世界の人間が使う、瞬間移動の魔法は、あらかじめ入り口と出口に、魔法装置を設置しておかないと使えず、魔法使い単独での転送は未だに出来ていない。

だがユウは、悪魔の空間制御の力によって、単独での瞬間移動が出来るようになっており、この瞬間移動は悪魔の力なので、人間の魔法のように空間結晶を使わず、また、入り口と出口に、何も設置する必要が無く、何処にでも自由に行ける様になったので、研究所から遠く離れた、場所に来ていた。


ユウが来たのは、大型の魔獣が多数いる場所で、人間は住むどころか、通ることもできない場所で、ここで彼は手に入れた物をゆっくりと確認していた。

亜空間の中にある物の数は膨大で、すべて調べるのは骨が折れそうだった。

キメラに関する資料、道具、装置などなど、これがやはり一番多くあり、他には、警備兵の武器や防具などの装備、職員の私室にあった私物などである。

中には金庫もあり研究の為の資金などが入っていた。

また、食料や日用品、変わったところで厨房に居たゴーレムも、持ってきていた。

手に入れた現金だけでも、一生食うのに困らないだろう。

彼は、亜空間から、見慣れないものを取り出しては、魂の記憶を見て調べていっていた。



その後ユウは、ここで、自分の身体や魂を、徹底的に調べ研究した。

それは、時間を掛けて焦らずにじっくりと行い、結果的にこの場所で、半年以上もの長い時間、過ごすことになった。


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