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魔人種  作者: マーチ13
7/10

序章 7    制圧完了

警報が鳴り響いていた。

「とうとうバレたか。」

これまで、不意を突ききれずに戦ってしまい、痕跡を残してしまった場所がいくつかあったが、そろそろ見つかるとも思っていたので、慌てず予定どおりに行動した。

まず、転送装置を破壊して、兵の増援と逃げ道を潰す。


転送装置のある部屋に向かい、部屋の前まで来ると、呪文を詠唱しながら部屋に入る。

「火よ、風よ、我が命に従い、紡がれ出でよ、爆炎球!!」

手の中に現れた炎を、転送装置にむかって放つ。

炎は装置に当たると、大爆発を起こし、木っ端微塵にして、振動は建物全体を揺らした。

装置の近くには人が居て、爆発に巻き込まれたが、まだ生きていた。

「た・・・すけ・・・て・・・」

「イヤだね。」

ユウは冷酷に言い放つと、すぐさま融合して食らい、他に生きている人間が居ないことを確認して、物陰に隠れた。



研究所内は混乱の極みに達していた。

突然の警報と、それに続いての爆発。事態を完璧に把握している者など一人もおらず、むろん大半の人間が、すでに餌食となって食われていたことを、知る者はいなかった。


転送室に警備兵や研究員が駆けつけてきた。

「なっ!なんだよこれ!!」

「おい!!誰かいないのか!?」

「いったい、何が起こったんだ!?」

「とにかく人が居るはずだから探すんだ!ここには何時も何人か居たんだぞ!!」

「その前に火を消せ!煙が邪魔だし燃え広がったら拙いぞ!!」

室内の惨状に怯みながらも、警備兵は中に入り、火を消したり生存者を探し始めたりしたが、突然襲い掛かられた。

不意を突かれたこともあるが、一言で発動し、しかも発動と同時に着弾という、通常では考えられないスピードで襲い掛かる雷撃によって、瞬く間に全滅した。


彼の雷撃は、この世界の人間が使うものより明らかに早い。

それは彼が、光りの速度がどんなものか知っていたからだ。

むろん詳しく知っている訳ではないが、光りの速度を人間の感覚で知覚するなど不可能であり、ゆえに発動と同時に着弾という現象に、一切の疑問がなかったからだ。

魔法の発動に、イメージはかなり重要で、この世界の人間は、光速を理解も想像も出来なかった為に、雷撃本来の力を、発揮できなかったのである。


扉の外から、中を覗いていた研究員達は、突然起こった事に見入ってしまっていた。

物影から突然現れた男が、警備兵との間に一瞬で光る糸を出し、警備兵達が次々と倒れてゆく。

この光る糸がユウの使う雷撃なのだが、人間の目には早すぎて糸の様に見えてしまうのだ。

警備兵が全員倒されると、男は倒れた警備兵に近付いて球状の魔方陣に警備兵ごと覆われる。

魔方陣が光り消えると、その場に居たのは男だけだった。

「うわああぁぁーーーー!!!!」

この光景に、恐怖した一人が、悲鳴を上げ逃げ出すと、

残りの者も、後に釣られる様に次々と逃げ出したが、背後からの雷撃で、全員気絶させられて、食われることになった。



その後もここには次々と残った人が集まって来るが、少人数かつバラバラに来てしまったために、各個撃破に最適な形となり、誰も逃げられず、雪崩式に犠牲者が増えていった。


ユウは、自分の状況を、良く理解していた。

自分という存在は、この世界にとって明らかに異質かつ異常であり、到底受け入れられない存在で、知られれば社会全体が自分を排除しようとするだろうと。

そして、それを避けるには、徹底的に情報を封じ込めなければならず、そのため執拗なまでに、相手を逃がさない様に行動した。


結果、施設内においても情報がまったく伝わらず、次の様な事が起こる。

「なあ、この警報とさっきの爆発音、やっぱり関係あるのかな?」

「そうだな・・・じゃあ俺が様子を見てくるよ。」

「悪いな、催促したみたいで。」

「いいって、それより面白い情報、掴んで来てやるからな。」

「気をつけろよ。」

「おう。」


「あいつ、遅いな。」

「どうしたんだ?もうずいぶん経つけど。」

「しかたない、オレも様子見に行って来るか。」

この様な事が施設内の各所であり、少人数ずつ、来てしまう事になったのだ。



ちなみに唯一、警報を鳴らした警備兵は、この爆発が襲撃犯の仕業だと気付き、

爆発現場に向かう、他の警備兵と合流することができたが、

「おーーーい!!おーーーい!!止まってくれーーーー!!!」

「何か止まれって言ってるぞ。」

「馬鹿言うな、現場はこの先で、一刻を争う事態だったらどうするんだ。」

「そうだぞ、おーーい!言いたいことが在るんなら、走りながら話せーー!!」

「たっ!たのむ!!止まって話を聞いてくれ!!!」

「だから止まれないって!話ならこのまま言えよな!」

「わっ!わかった!!じつは、この警報オレが鳴らしたんだ!!」

「はあ?どう言う事だ?お前、爆発とは違う方から来ただろ?」

「そうじゃない!!警報は爆発の為じゃなくて、爆発のほうが警報の為に起きたんだ!!!」

「わからん・・・どう言う事なんだ?」

「だから!!この先には多分」あっ向こうから人が来るぞ、おーーーい!!」

「あんた、向こうの様子知ってるかーーー!?」

「まて!!もしかしたらあいつも」

彼が喋れたのはそこまでだった。

彼は結局、自分が知った事実を誰にも伝えられなかった。



建物の回りには塀があり、その間の庭にかなりの人数がいた。

彼らの大半は、爆発に脅えて、外へと逃げてきた者達だ。

建物の正面、玄関から唯一の門との間に、集まっていた。


「本当に、大丈夫なんだろうなここは?」

「さあ?でもさっき、かなりの人員が現場に向かいましたから、その内連絡が来ますよ。」

「さあってなんだ!さあって!それにこっちもさっき同じ事聞いたぞ!!

だからもうさっきじゃなくて、ずいぶん経ってるって事なんだぞ!!」

「本当にどうしたんでしょうか。」

「オレに聞くな!だいたいこんな時の為に、お前らが居るんだろうが!!」

「そういえば、そうでしたね。」

「ああもう、こいつは・・・」

「おや?また誰か出てきましたよ?」

「本当だ!なあ、あんた!向こうで何が起こったか知らないか!?」

「眠れ。」

「へ?」「ほえ?」

彼らは、あっさりと意識を失い食われたのだった。



ユウは眠らなかった者や、眠りの魔法の効果範囲外に居た者を、もっと、射程の長い雷撃で、次々と倒してゆく。

また、この雷撃にやられたのは、見えない位置に居たはずの、門の向こうに居た門番達、この光景を、建物の窓から見ていた者達もふくまれた。

悪魔の力、正確には悪魔の視覚を使いながら、行動が出来るようになっていたのだ。

人間の目には映らなくても、悪魔の視界からは、ばっちり見えており、あとは雷撃を曲げ、射程を伸ばせれば良く、両方とも左程難しくなかった。

軌道の変化は最初からでき、射程は普通、使う魔力を増やしたり威力を落とすかだったのだが、これは、目標到達まで発動させ続ける、時間に関する問題だったので、光速で発動する彼の雷撃は、とくに使用魔力を増やす必要も無かった。

これにより、四方上下すべての面を塞いでない限り、ユウの誘導型の雷撃を、防ぐ方法は無い。

一人も逃がせない制圧は、この後すぐに終わった。


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