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この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜  作者: ゲスト047562


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第7話 バトルモノが苦手な人は、大体属性相性で挫折する

「えー。ではこれから、入学式までにお前を強くしようと思う」


「は、はい。よろしくお願いします……!」


 うーん、始まる前から及び腰。そりゃそうか。

 翌週の休日。俺は主人公ちゃんと試練の祠にいた。名前は知らない。


「……そういや、自己紹介してなかった。代陀羅団です、どうぞよろしく」


「あ、天外理愛(てんがいりあ)です。よろしくお願いします」


 あ、デフォルトネームってそんな名前なんだ。妹は実名とか愛称でやってたからなぁ。


「おし。試練の祠ってのは、人と神霊との結びつきを強くするダンジョンらしい。詳しくは知らん」


「ええっ!?」


「まあまあ、そんな事は重要じゃないから。大事なのは、天外には戦う手段が必要って事だ。はいこれ」


 驚きと緊張で立ち竦む彼女に、拳銃を渡す。


「霊銃だ。それに神力を込めて『当たれ』と思いながら引き金を引けば、勝手に敵に当たってくれる」


 身を守れる物を手にして落ち着いてきたのか、天外はゆっくりと辺りを見回し始める。その目は、心なしか少しずつ輝いている。


「……何か、凄いね。こんな場所あったんだ」


「ああ、そうだな」


 この試練の祠は、植物に覆われた洞窟だった。何処からか差し込む木漏れ日が、木の葉にかかる水滴に反射し、幻想的な雰囲気を醸し出している。雨音の旋律が良く響く、美しい空間だった。


「妖魔の住む場所が、こんなに綺麗な場所だったなんて知らなかった。もっとお化け屋敷みたいな感じかなって……」


「はは、分かる。俺ももっと地獄みてえな場所を想像してたし」


「ふふ。そうなんですか?」


「おう。意外に綺麗だったから逆に驚いたくらいだ。










だから俺達の手でここを地獄に変えます」


「侵略者?」


 うむ、あながち間違いじゃないから何とも言えない。いや俺の言い方が酷いだけか。

 試練の祠は、妖魔や神霊が生み出す空間と言ったな? つまりここの主は、穏やかで静謐な空気が好きなようだ。

 だが、そこに住まう妖魔が穏やかであるという訳ではない。寧ろ、こんな穏やかな場所は気が緩みやすくなる為、その隙を狙ってこぞって命を狩りにやって来るのが妖魔という生物だ。


「だから、どんな場所でも油断すんなよって事だ。綺麗でも、ここはもう戦場なんだからな」


「は、はい! 分かりました!」


「あ、それと一応同い年だからな。タメ口で良……」


「ええええええええええっっ!?」


 何でそこで1番デカい声出すねん。そんな目ん玉飛び出そうな程驚かなくてもええやん。


「だ、だって雰囲気が、その……と、年上みたいだし」


「……ま、まあうん。せやな」


 だって心はオッサンだし。見た目より内面に目を向けて会話するのは、流石乙女ゲームのヒロインって感じだな。

 気を取り直して、俺達は並んで祠の内部へ進んでいく。


「……いた」


「!」


 俺の言葉に、天外が再び身体を強張らせる。

 岩陰から赤い毛に覆われた足が現れる。他の部位は無く、1本の足だけが不気味に地面を蹴っている。


赤足(あかあし)だ。雑魚だが、的は小さい。まずはアイツに向けて撃ってみろ。出来るか?」


「は、はい……!」


 恐怖と緊張で身体を震わせる天外。俺の言葉には反応しているが、足元は覚束なく、銃を構える余裕すら無いようだ。

 そんな彼女を後ろから支え、ゆっくりと銃口を妖魔に向ける。


「大丈夫だ。ゆっくり息を吸ってー」


「……スー……」


「神力の使い方や戦いの基礎は、神霊がサポートしてくれる。お前はその感覚を信じろ」


 手の震えは止まっている。俺の支えを自分の意思で外し、しっかりと赤足に狙いを付けて……。


「行って!!」


 水色の光線が数発飛び出し、赤足を撃ち抜いた。

 突然の出来事に驚いている赤足。痛そうに飛び跳ね、こちらに爪先を向けたと思えば、霊力となって消え去った。


「はぁ、はぁ……はぁ」


「お疲れさん。良く頑張ったな」


「は、うん! ありがとう!」


 すぐさま身体をパッと離す。はいはいコンプラコンプラ。

 霊力が彼女の身に宿り、自身の手柄を自覚した天外は、大げさに身体を揺らす。その仕草はどこまでも可愛らしい。


「わ、私……やれたんだね」


「おう。さっき発射されたのが、加護持ちが持つ力、神力だ。今の力、もう一度感じれるか? 目を閉じて、自分に流れる力を感じ取るんだ」


「うん、やってみる」


 俺の言葉に従い、彼女は目を閉じる。

 少し経つと、彼女の周りから青いオーラ……神力が彼女を包み込んでいく。

 目を開けた彼女は、自分を包むその神力に感動した様に顔を綻ばせた。

 にしても、簡単な説明だけでこんなにすぐ感覚を掴めるのか……流石は主人公、と言いたいが、他に比較出来る奴いないしな。俺? 元厨二病ゲーマー舐めんな。


「師匠?」


「ん? おお、悪い。お前の成長が早いから、凄すぎてボーッとしてたわ」


「えっ、えへへ……そう?」


 我が家は言葉が悪い分、褒めて伸ばす教育方針なんでね。良い所はこれでもかと褒めまくる。それでも、お世辞抜きで彼女の飲み込みの早さは凄まじいが。

 嬉しそうに頬を赤らめる天外。だが忘れてはいけない。彼女はその後、妖魔も尻尾を巻いて逃げ出す世紀末女子に変貌する事を。

 高レベルの妖魔をワンパンで沈める超火力ビルドは、正に覇王。神力の使い方をすぐに覚えた彼女に、覇王の素質が見えた気がした。

 つか世紀末女子って何だよ。乙女ゲームに1番あっちゃいけねえ要素だろ。いやそこも含めて面白かったから良いんだけどさ。

 ……いかんいかん。また思考が脱線した。そろそろ意識を彼女に戻そう。


「青の神力って事は、今のお前の神霊は水属性か」


「水? 属性?」


「……あ、そうだった」


 五行思想、というのをご存知だろうか。古代中国における自然哲学の思想で、『万物は5種類の元素からなる』という考え方だ。

 5種類の元素とは、火・水・木・金・土。これらは互いに影響し合い、この元素の増減によって万物が変化、循環する。

 カミカゴのバトルシステムは、この五行思想の属性相性がベースとなっている。


「で、お前は水属性だから、火属性に強い。逆に、土属性の妖魔と相性が悪い」


「へぇ〜。さっきの赤足は何属性なの?」


「アイツは金属性だ。毛むくじゃらだったろ?」


「毛?」


「毛がある妖魔は金属性だ。妖魔には、属性によって特徴的な見た目がある。羽があったり、鱗があったりな。その内水以外の属性も使えるようになるから、慣れながら覚えていくか」


「わ、分かった」


 こういうのは一気に覚えさせてもパンクするからな。今まで戦いとは無縁の生活を送っていたのは見て分かるし、少しずつ慣らしていくしかない。

 幸い、彼女も力を使う事に抵抗は見られなかった。覚えるべき事はまだまだあるが、入学式までには全部叩き込めそうだ。


「そういや、付いてる神霊の名前は?」


「あ、それが……分からなくて。夢の中で声は聞こえるんだけど、まだ力が戻ってないから姿を見せられないんだって」


「ほーん、そうなのか」


 なるほどなるほど。つまり本来のチュートリアルで、何かしら神霊の覚醒イベントがある訳か。

 今はあまり力は無いそうだが、神力を使えるなら神技も繰り出せそうだな。


「そうだなー、もう少し妖魔と戦ってみるか。こういうのはやっぱ慣れが大事だし」


「分かった。あ、ねえねえ。師匠の神霊って何属性なの?」


「俺加護無しだぞ」


「…………え?」


「言ってなかったっけか。俺h」


 鼓膜破れるぐらいに驚かれた。リアクションデカすぎて草。


「なな、何で試練の祠にいるの!? 私だって怖いのに」


「目的があんだよ、俺だって」


 言える訳ないよなぁ、こんなクッソ下らない目的。誰かを助けたい、守りたいという想いで戦ってる天外からすれば、俺はあまりに自分勝手な願いで動いている。

 彼女が俺の真意を知る時。それはきっと、俺達の道が分かたれる時だろう。


「俺の事より自分の心配しろ。妖魔は心の弱さを見逃さねえからな。つかお前動揺しすぎ、心をもっと鍛えてくぞ」


「ええ〜……」


「不満そうにしない。ほら、置いてくぞー」


 天外から距離を取る様に歩き出すと、彼女も慌てて俺に付いてくる。

 うむうむ、良い感じに緊張も解れてるみたいだな。これならすぐに色々覚えられそうだな。

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