第60話(最終回)「夢幻の終わり、そして帰還」
元和二年、駿府城。
死の床にある——
徳川家康。
武田勝頼が——
家康の手を握っていた。
「……楽しかったな、勝頼」
家康の声が、静かに響いた。
「敵対した日々も、共闘した日々も」
「ああ」
勝頼の声が、静かに響いた。
「お前が泥を被り、礎となったからこそ、戦国は終われた」
家康は——
微笑んだ。
「……礼は言わぬ」
家康の声が、静かに響いた。
「向こうで信長殿と囲碁でも打って待つ」
家康は——
安らかに逝った。
平和になった日本。
勝頼は——
影たちを呼び出した。
解散を——
宣言した。
上杉謙信が——
現れた。
「戦のない世など退屈だが、悪くはない」
謙信が、微笑んだ。
「信玄と決着をつけてくる」
謙信は——
消えた。
滝川一益が——
登場した。
第一話付近で仲間にした——
最初の影。
「長い鉄砲運びでございました」
一益の声が、静かに響いた。
「……御屋形様、最初に私ごときを信じてくださり、感謝いたします」
「一益」
勝頼の声が、静かに響いた。
「お前がいたから俺は歩み出せたのだ」
武田四天王も——
勝頼に称えられた。
「日本一の家臣団であった」
勝頼の声が、静かに響いた。
光となって——
天へ還った。
数年後。
甲斐、躑躅ヶ崎館。
老いた妻——
桂の最期。
老婆となった桂の手を——
若き勝頼が握った。
「……貴方様は、いつまでも私の自慢の殿方」
桂の声が、静かに響いた。
「……皆様が待っておりますよ」
「……すまぬ」
勝頼の声が、震えていた。
「俺だけが時を止めて」
勝頼は、続けた。
「……だが、心はずっとお前と共にある」
桂が——
息を引き取った。
勝頼は——
彼女の額に口づけした。
最後の未練を——
断ち切った。
南光坊天海が——
登場した。
「……全て見届けられましたな」
天海の声が、静かに響いた。
「第六天魔王を討ち、魔王秀頼を鎮めた英雄よ」
「天海」
勝頼の声が、静かに響いた。
「……俺を『人』に戻してくれ」
天海の読経により——
勝頼を構成していた「紫紺の炎」が解けた。
桜の花びらのような光に——
変わっていった。
光の中——
死後の「躑躅ヶ崎館」へ。
武田信玄、織田信長が——
酒を酌み交わしていた。
豊臣秀吉が——
泣きながら土下座した。
「勝頼様!」
秀吉の声が、震えていた。
「倅の秀頼を……あのアホ垂れを救ってくださり、かたじけない!」
真田親子——
四天王——
一益——
そして若き姿に戻った桂や母たちが——
笑顔で迎えた。
信玄が——
勝頼の肩に手を置いた。
「……四郎」
信玄の声が、静かに響いた。
「わしは『甲斐の虎』止まりだった」
信玄は、続けた。
「だがお前は『日ノ本の守護神』になったな」
信玄の目が、鋭く光った。
「……誇りに思うぞ。わしを超えたな」
勝頼は——
涙を流した。
武人として——
深く頭を下げた。
「……四郎勝頼、只今、帰参いたしました!」
勝頼の声が、響き渡った。
満面の笑顔で——
宴の輪に入った。
物語は——
幕を閉じた。
翌朝の甲斐の山々。
青空。
「風林火山」の旗が——
風になびいた。
平和な日本を——
風が吹き抜けていった。




