第58話「魔王包囲網と、第六天の黒い太陽」
天王寺の戦場。
真田幸村の槍が——
徳川家康の鼻先で止まった。
極限の寸止め。
家康は——
眉一つ動かさなかった。
ニヤリと——
笑った。
「……待ちくたびれたぞ、真田」
家康の声が、静かに響いた。
「芸が細かいですね、狸殿」
幸村が、笑った。
「……さあ、主役のお出ましだ」
二人が——
同時に振り返った。
全軍が——
豊臣秀頼へ殺到した。
敵味方の境界線が——
消えた。
人類が——
一つになる瞬間。
四方から——
殺到する攻撃。
だが——
秀頼は指一本動かさなかった。
不可視の障壁で——
全て弾いた。
そこへ——
空間を切り裂いて武田勝頼が現れた。
「お前の相手は俺だ、信長!」
勝頼が、叫んだ。
勝頼の【侵略する火】が——
秀頼の障壁を焼き溶かした。
「……勝頼か」
秀頼の声が、静かに響いた。
「死にぞこないが、まだ余に歯向かうか」
十五年越しの因縁。
秀頼が——
「本気」を出した。
背中の触手が——
絡み合った。
頭上に——
「黒い太陽」を形成した。
音も光も吸い込む——
虚無の球体。
兵士たちが——
吸い込まれた。
圧縮されて——
消滅していった。
「余の愛は重かろう?」
秀頼の声が、静かに響いた。
「……全て一つになろうぞ」
物理攻撃も——
魔術も通用しなかった。
圧倒的な「死の理」。
秀頼が——
家康を狙った。
黒い太陽から——
即死級の黒雷が家康へ放たれた。
その瞬間——
勝頼が割って入った。
地面に落ちていた「蜻蛉切」を——
拾い上げた。
「貸せ、平八郎!」
勝頼が、叫んだ。
「お前の主君を守るぞ!」
勝頼の**【侵略する火】**と——
蜻蛉切が共鳴した。
雷を——
受け止めた。
「キィィィン!」
蜻蛉の鳴き声のような金属音。
槍が——
砕け散った。
だが——
家康は無傷だった。
「勝頼……ッ!」
家康が、叫んだ。
黒い太陽を破るため——
影・上杉謙信が前に出た。
「興が乗った」
謙信の声が、静かに響いた。
「魔王とやら、軍神の冷気で凍てつくが良い」
謙信は——
残る全霊力を解放した。
自らを——
「氷の矢」へと変えた。
影の武田軍団も——
それに続いた。
霊体の奔流となって——
黒い太陽へ突っ込んだ。
「毘沙門天、加護はいらぬ!」
謙信が、叫んだ。
「……ただ道を拓けェ!!」
謙信の特攻が——
黒い太陽を一時的に凍結させた。
わずかな「通り道」を——
作った。
謙信と影たちが——
こじ開けた一瞬の隙。
幸村が——
跳んだ。
その背後には——
山県、馬場、内藤、高坂ら四天王の幻影が重なった。
「見えた……!」
幸村が、叫んだ。
「そこだァァァッ!!」
父・昌幸の策——
勝頼の炎——
武田の魂。
全てを乗せた槍が——
赤い彗星となって、魔王の核へ突き刺さった。




