第53話「鳴り響く魔鐘と、修羅たちの宴」
京都、方広寺。
巨大な梵鐘が——
完成した。
銘文——
「国家安康」「君臣豊楽」。
魔力が——
込められていた。
ゴォォォン……!
鐘が——
鳴った。
その瞬間——
空間が歪んだ。
音は——
東国まで届いた。
江戸城の瓦が——
砕け散った。
徳川家康が——
耳から血を流した。
「……物理的な距離を無視した『言霊』の砲撃」
南光坊天海の声が、静かに響いた。
「……魔王は既に、神の領域にいます」
武田勝頼が——
東の空から来る衝撃波を片手で払った。
「……行儀の悪い目覚ましだ」
勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。
「教育してやるぞ」
大坂城下。
民は——
飢えていた。
だが——
秀吉が残した「魔力の金貨」を舐め、幻覚を見て幸福に浸っていた。
街全体が——
腐った果実のような甘い匂いに包まれていた。
「秀頼様万歳!」
「豊臣の世が来る!」
民が——
叫びながら踊り狂っていた。
真田幸村が——
到着した。
「……親父の言っていた地獄より酷い」
幸村が、呟いた。
「ここは、魂を腐らせる揺り籠だ」
大坂城内。
浪人たちの屯所。
後藤又兵衛が——
幸村に絡んだ。
「お前が真田か?」
又兵衛の声が、静かに響いた。
「親父の七光りで来た若造が、俺たちを指揮できると思うなよ」
一触即発。
又兵衛が——
槍を突き出した。
幸村の闘気と——
激突した。
物理的な衝撃で——
周囲の床が抜けた。
ドガァン!!
「へっ、親の七光りかと思ったら、とんでもねぇ『火薬庫』じゃねえか」
又兵衛が、ニヤリと笑った。
「爆発するぞ」
幸村が、静かに言った。
「取扱注意だ」
互いに——
背中を預けられる実力者であることを認めた。
幸村たち浪人衆が——
豊臣秀頼に謁見した。
御簾が——
上がった。
そこにいたのは——
「美しい怪物」。
二メートルを超える巨躯の青年。
顔は——
信長に瓜二つだった。
だが——
その背中からは「黒い触手」が無数に蠢いていた。
魔王の腕。
触手が——
浪人たちの首に巻きついた。
霊的に。
強制的に——
平伏させた。
幸村だけが——
影・山県昌景の炎で触手を焼き払い、立ったまま対峙した。
「……ほう。余を見下ろすか、赤いの」
秀頼の声が、静かに響いた。
「……気に入った」
秀頼は、続けた。
「余の『咀嚼』に耐えてみせよ」
軍議。
大坂城は——
鉄壁だった。
だが——
南側だけ防御が薄かった。
「ここに出城を作る」
幸村が、提案した。
「……私がここを『死に場所』に変える」
幸村は——
父から継いだ「土の術」と、山県から継いだ「火の術」を融合させた。
地面を隆起させ——
その土を炎で焼き固めた。
鋼鉄のような赤土の要塞を——
一晩で作り上げた。
「真田丸」。
それは——
城ではなかった。
巨大な「処刑台」。
徳川・武田連合軍——
二十万が、大坂の目前に迫った。
幸村が——
真田丸の櫓に立った。
迫り来る徳川の大軍を——
見据えた。
「さあ、始めよう」
幸村の声が、静かに響いた。
「……俺の命を懸けた、最後の大芝居だ!」




