表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/60

第38話「黄昏の都と、影の宰相」

新生・甲府。

夜。

生者が眠った後も——

影たちは働き続けていた。

松明と——

鬼火が、闇を照らす。

青白い燐光。

眠らない都市。

静寂の中で——

工事音だけが響いていた。

幻想的で——

少し恐ろしい「死者の産業」。

難民の子供が——

それを見て呟いた。

「綺麗……」

美と恐怖の共存。


政庁、躑躅ヶ崎館。

書類の山と格闘するのは——

真田昌幸と影・織田信忠。

信忠は——

単に早いだけではなかった。

未来予知に近い予測を行っていた。

「西国の米相場が三日後に上がる」

信忠が、静かに言った。

「備蓄を放出せよ」

父譲りの先見性。

その時——

影・信玄が通りかかった。

「フン」

信玄が、苦笑した。

「ワシの時代より国が富んでおる」

信玄は、続けた。

「……悔しいが、行政の手腕はオヤジ譲りだな」

「……皮肉なものです」

信忠が、静かに言った。

「人を殺すために学んだ『兵站』が、今、人を活かしている」

信忠の目には——

複雑な光があった。


その時——

西からの使者が到着した。

秀吉からの使者。

若き官僚——

石田三成。

彼の目的は——

「東国の弱点を探ること」。

三成は——

影たちが無償で働く姿を見て、計算した。

「食費ゼロ、睡眠ゼロ、反乱の危険もゼロ……」

三成の声が、震えていた。

「こんな労働力が普及すれば、西国の経済圏は価格競争で負ける」

三成は——

勝頼の国を「軍事的な脅威」以上に、「経済的な劇薬」として危険視した。

案内役の北条氏直に対し——

三成が言った。

「……貴殿らは、人の世の理を壊す気か」

三成の額に——

冷や汗が流れていた。

「恐怖でも金でもない」

氏直の声が、静かに響いた。

「『絆』だ」

氏直は、続けた。

「……貴殿の主には分からぬ理屈だろうがな」

「……」

三成は、黙っていた。


三成は——

勝頼に謁見した。

「秀吉様の傘下に入れば、この国は黄金で満たされます」

三成が、静かに言った。

「貧しい自立か、豊かな隷属か」

三成の目が、鋭く光った。

「答えは明白でしょう」

合理性。

「三成」

勝頼が、静かに言った。

「黄金で腹は満ちても、心は満たせぬ」

勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。

「……俺たちは、誰にも飼われん『狼』だ」

誇り。

「……非合理的だ」

三成が、扇子を直した。

「だが、侮れない」

三成の目が、鋭く光った。

「報告せねば」


三成が去った後——

信忠が、懸念を示した。

「秀吉は、武力ではなく『経済と物流』で我らを干上がらせる気です」

信忠の声が、静かに響いた。

「……次は、海上封鎖か、通貨の切り崩しに来るでしょう」

「……」

勝頼は、空を見上げた。

西の空は——

黄金色。

秀吉の繁栄。

東の空は——

紫紺色。

静寂。

「望むところだ」

勝頼が、呟いた。

「……生き残るぞ、皆」


嵐の前の静けさ。

だが——

勝頼は、準備を始めていた。

次の戦いのために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ