第32話「進撃の魔城と、二人の赤鬼」
美濃国、関ヶ原。
地響きが——
大地を揺らしていた。
ゴゴゴゴゴゴ……
そして——
山を削りながら、それが現れた。
移動要塞・安土城。
城壁は——
脈打つ肉塊と化していた。
無数の骸骨が——
埋め込まれている。
天守からは——
織田信長の魔力が、赤い光柱となって天を突いていた。
その足元には——
数万の骸炭兵と、異形の軍勢。
「……来たか」
徳川家康が、呟いた。
対する東国連合軍。
武田・徳川・北条・上杉。
総勢五万。
「引くな!」
家康が、叫んだ。
「ここが人間の最前線ぞ!」
家康の声が、響き渡った。
「撃てぇぇ!!」
徳川の鉄砲隊三千が——
一斉射撃を開始した。
ドンドンドン!!
銃声が、響き渡る。
戦端が——
開かれた。
乱戦。
骸炭兵と、東国連合軍が激突した。
ガキィン! ガキィン!
刀と槍がぶつかり合う音が、響き渡る。
押し寄せる数万の骸炭兵を——
二人が並んで処理していた。
本多忠勝と影・上杉謙信。
忠勝が蜻蛉切で敵を物理的に粉砕し——
その隙間を謙信が氷の斬撃で埋める。
ズバァッ! ズバァッ!
完璧な連携。
「やるな、鹿角」
謙信が、呟いた。
「背中は任せるぞ」
「……承知」
忠勝が、静かに答えた。
「殿以外に背を預けるのは不本意だが、貴公なら悪くない」
互いの実力を認め合う——
静かなる最強の共闘。
その時——
敵の左翼を突き崩す、二つの赤い流星。
影・山県昌景。
そして——
徳川の若武者・井伊直政。
二人が走った跡に——
赤い残像が残った。
光のライン。
それが交差して——
敵陣を切り裂いていく。
「見えますぞ山県殿!」
直政が、叫んだ。
「貴殿の槍の軌道が!」
直政の槍が、敵を貫く。
「これが『赤備え』の極意か!」
「盗めるものなら盗んでみろ若造!」
山県が、叫び返した。
「儂の赤はもっと速いぞ!」
山県の槍が、敵を薙ぎ払う。
二人の赤い残像が——
戦場を駆け巡る。
ズバァッ! ズバァッ!
敵兵が、次々と倒れていく。
「な……!」
その姿を見た敵兵も味方も——
戦慄した。
「二人の赤鬼だ……!」
世代と生死を超えた——
「赤備え」の継承。
技術と魂の継承が——
戦闘の中で描かれていた。
戦場を見下ろす高台。
羽柴秀吉と黒田官兵衛が——
その様子を見ていた。
官兵衛の手には——
呪具が握られていた。
戦場で散った強者たちの魂や魔力を——
密かに回収している。
「潰し合え」
秀吉が、ニヤリと笑った。
「死ねば死ぬほど、わしの『養分』になる」
秀吉の目には——
冷たい野心があった。
武田勝頼は、戦場を見渡していた。
「……すごいな」
勝頼が、呟いた。
生者と死者が——
共に戦っている。
東国連合軍。
「だが」
勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。
「まだ足りない」
勝頼は、安土城を見上げた。
天守から——
赤い光柱が天を突いている。
「信長……」
勝頼は、拳を握りしめた。
「必ず、倒す」
勝頼は、影の四天王を呼んだ。
「全軍、突撃!!」
勝頼の号令が、響き渡った。
影の軍団が——
一斉に動き出した。
だが——
その時。
ゴゴゴゴゴゴ……
安土城が——
変形し始めた。
天守が——
巨大な「口」を開いた。
砲門。
「な……!?」
勝頼が、目を見開いた。
圧縮された魔力が——
赤黒い光となって放たれようとしていた。
その光の先には——
徳川家康の本陣。
「伏せろォォッ!!」
勝頼が、叫んだ。
だが——
間に合わない。
その時——
影・馬場信春が飛び出した。
「某が盾になります!」
そして——
酒井忠次と榊原康政も——
飛び出した。
「わしらも行く!」
三人が——
盾となって立ちはだかった。
ゴォォォォォ!!
赤黒い光が——
放たれた。
魔砲。
「防ぎきれるか……!?」
勝頼が、叫んだ。
絶望的な光景。




