表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/60

第30話「鬼の慟哭と、冥府の援軍」

近江北部、賤ヶ岳。

柴田勝家は、魔物化したかつての部下たちを斬り続けていた。

心身ともに——

限界を迎えていた。

斧は、刃こぼれしていた。

全身——

傷だらけ。

それでも——

勝家は、倒れなかった。

「来い!」

勝家が、叫んだ。

「わしを喰らって、その穢れた血肉となせ!」

勝家の咆哮が、響き渡った。

だが——

その時。

「しぶといのう」

羽柴秀吉が、冷笑した。

「おい官兵衛」

秀吉は、黒田官兵衛を呼んだ。

「はい」

官兵衛が、進み出た。

「あの鬼を、生け捕りにせよ」

秀吉の目が、鋭く光った。

「最高の『種馬』になる」

「……!」

勝家は、歯噛みした。

尊厳を奪われ——

獣にされようとしている。

絶体絶命。

だが——

その時。

ゴォォォォォ……

突如、戦場に猛吹雪が吹き荒れた。

「な……!?」

秀吉が、目を見開いた。

「むさ苦しい男たちだ」

声が、響いた。

「……少し、頭を冷やせ」

影・上杉謙信が、白銀の剣を振るった。

その瞬間——

襲いかかる魔獣たちが、氷像のように美しく凍りついた。

そして——

砕け散った。

キラキラと輝く氷の破片が、宙を舞う。

「う、上杉……謙信!?」

勝家が、驚愕した。

「なぜ死人がここに……!」

「死人ではない」

謙信は、静かに言った。

「冥府の先兵だ」

謙信の白銀の剣が、魔獣を斬り裂く。

その圧倒的な「美」と「暴力」に——

戦場が一瞬で静まり返った。

「……下がれ『鬼』よ」

謙信の声が、静かに響いた。

「ここは『軍神』の戦場だ」


その時——

秀吉軍の側面を、武田勝頼率いる影の四天王が強襲した。

「全軍、突撃!!」

影・山県昌景が、叫んだ。

影の軍団が、秀吉軍に襲いかかる。

「くっ……!」

秀吉軍が、混乱した。

勝頼が——

勝家の前に立った。

「柴田勝家」

勝頼の声が、響いた。

「ここで犬死にするか?」

勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。

「それとも、俺と共に『魔王』と『獣』を殺すか?」

「……!」

勝家は、葛藤した。

「貴様は敵だ!」

勝家が、叫んだ。

「織田の敵だ!」

「織田はもういない!」

勝頼が、叫び返した。

「安土にいるのは化け物、目の前にいるのは外道だ!」

勝頼は、続けた。

「……お市の方を救いたくはないのか!」

「……!」

「お市」という名が出た瞬間——

勝家の目に、正気が戻った。

「お市様……」

勝家は、呟いた。

そして——

咆哮した。

「……外道どもめ!」

勝家が、叫んだ。

「わしの命、くれてやる!」

勝家は、立ち上がった。

「その代わり、お市様だけは救い出すぞ!」

勝家が——

勝頼の手を取った。

物理的な握手。

「冷たいな……」

勝家が、呟いた。

「これが、地獄の温度か」

「ああ」

勝頼は、頷いた。

「だが、アンタの命は火傷しそうなほど熱い」

勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。

「……その熱さ、俺の軍には必要だ」

生者の熱。

死者の冷気。

それが——

混ざり合った。

新たな力が、生まれる瞬間。

「……よし」

勝家は、頷いた。

「行くぞ、勝家!」

「おう!!」

勝家が、叫んだ。


影・山県昌景と柴田勝家。

かつての宿敵同士が——

背中を合わせた。

「おい赤鬼!」

山県が、叫んだ。

「遅れるなよ!」

「誰に口を利いている!」

勝家が、叫び返した。

「わしの方が年季が入っとるわ!」

二人は——

言い合いながらも、動いた。

山県の槍と勝家の斧が——

同時に閃いた。

巨大な魔獣が——

X字に切り裂かれた。

「……!」

それを見た兵たちが、戦慄した。

「二人の鬼神だ……!」

その圧倒的な武力の前に——

秀吉軍の包囲網が、崩壊していった。

「……くそ」

秀吉が、舌打ちした。

「殿」

黒田官兵衛が、進み出た。

「勝頼が出てきては、厄介です」

官兵衛の目が、鋭く光った。

「ここは引きましょう」

「……ふむ」

秀吉は、考え込んだ。

そして——

ニヤリと笑った。

「勝頼と勝家、そして謙信」

秀吉の目が、鋭く光った。

「……これだけの役者が揃えば、あるいは『魔王』と相打ちになるかもしれん」

「……!」

官兵衛は、秀吉の真意を悟った。

漁夫の利。

自分が手を汚さずに——

信長を弱らせるつもりだ。

「よし、退け」

秀吉が、号令を発した。

秀吉軍は——

撤退していった。


賤ヶ岳。

戦場は——

静まり返っていた。

勝家は——

勝頼に保護されていた。

「行くぞ、勝家」

勝頼が、静かに言った。

「甲斐へ来い」

勝頼の瞳が、紫紺に輝いた。

「……そこで牙を研げ」

「……ああ」

勝家は、頷いた。

勝家は——

複雑な表情をしていた。

敵だった勝頼に——

命を救われた。

だが——

お市の方を救うために。

そして——

織田信長という魔王を討つために。

「よろしく頼む、勝頼」

勝家の声には——

複雑な信頼が滲んでいた。

「ああ」

勝頼は、頷いた。


かくして——

東国に、新たな戦力が加わった。

武田勝頼。

北条氏直。

上杉謙信(影)。

そして——

柴田勝家。

対魔王連合が——

結成されようとしていた。


遠くから——

羽柴秀吉が、戦場を見つめていた。

「……面白くなってきたのう」

秀吉は、ニヤリと笑った。

「だが、最後に笑うのは、わしじゃ」

秀吉の目には——

冷たい野心があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ