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露神の拳  作者: 齋藤十二
9/11

その9



「今回の件は助かったよ、君が強く主張してくれなかったら」

「私たちは今頃、殺されているか性奴隷だ」

いつもの稽古中、エマヌエルがフェニスに礼を言った。



「いや、たまたま近くを通りかかって酷い目に遭っただけだし」

フェニスが照れ臭そうに言う。



「ところで、何故そんな物騒な所に足を踏み入れた?」

エマヌエルが尋ねる、悪気や疑念ではなく、純粋に不思議で聞いたのだ・・・口調で分かる。



「いや・・・あの、旅の商人に騙されて、その「美人の多い集落」があるって」

フェニスの歯切れは悪かった・・・「美人の多い集落」とは、娼館の事だからだ。


だが、先にボンドには、そう説明しており、エマヌエルだけに違う事を言うのは、得策ではない。やむを得ず、そう説明する。



「は?」

一瞬エマヌエルは目を丸くしたが、その後肩を震わせて笑いを我慢していた。


「・・・す、済まない ククク、いや ご、ごめん」

「笑っちゃダメだな・・・うん、それが普通・・・健康な姿だもんな、ククク」


ひとしきり笑いを堪えると、落ち着いたのか、エマヌエルは笑った事を謝罪した。


「済まなかった、君の事をバカにした訳ではない」

「若い男性の事情は理解しているつもりだし」

「・・・不思議と君のそういう話は、不快感を覚えない」

「私は、そういう君を好意的に受け止めているのだと思う」

「だから、怒らないでくれ」


そう言って、エマヌエルは、優し気な眼差しを、真っ直ぐフェニスに向けた。

それは決して、誤魔化しの「それ」ではなかった。


「ああ、気にしちゃいない」

「俺も取り繕って格好つける年齢じゃないし」

「笑っていただいて、却って満足です・・・ご令嬢」


フェニスも何か優しい気持ちになって、紳士の振舞いを真似してみる。

面立ちが整っているだけに、なかなか様になっている・・・エマヌエルは、そう感じた。

だが、その見た目の良さが、却って、さっきの発言を思い出させる。



「いや・・・フェニス、今の君の仕草はマズいぞ・・・・思い出しちゃったじゃないか」

「・・・ククク、苦しい! フェリス・・・これ、止めてくれ!!」


フェニスは苦虫を噛み潰したような表情で、フェリスが悶絶する様を眺めていた。




「は~あ、ようやく落ち着いた」

「君は、妙に面白いよ」

「・・・ボンドも良い奴だが」

「私みたいな堅苦しい女は」

「なかなか君に対してみたいに、気楽にものが言えなくてね」


エマヌエルは、遠い目をする。



フェニスは気がついてしまった、エマヌエルはボンドを男性として意識している。

だからこそ、その代りとして、自分との距離感を縮めているのだと。


フェニスは、胸の奥で妙な感覚が湧き上がってくるのを覚えたが、それ抑え込み、数瞬の後には、忘れる事にした。


・・・どうせ、歴史という過去に縛られた、レビドの継承者として生きるしかない自分にとって、その望みは、しょせん縁遠いことだからだ。


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