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露神の拳  作者: 齋藤十二
8/11

その8



それから数日間が過ぎた。

エマヌエルとボンドの目的は、レビドの民との接触は間違いないようである。

その証拠に、レビドの民が意図的に流している、偽りの里の方向へ向かっている。



「・・・マズいな」


その周辺に住むスタビネシアンは、極めて狂暴な集団だからだ。

人種的に体格に優れ、非常に屈強な種族であり、その殆どが兵士や盗賊や犯罪に手を染める者だ。ヘッペスタンの屈強で有名な外人部隊も、その地域周辺の出身がほとんどだ。


如何にマナンがメロスの民の力を持ち、ボンドやエマヌエルが格闘や軍事行動に優れていると言っても、多勢に無勢・・・あっという間に捕まってボンドは殺され、エマヌエルとマナンは性奴隷として売られるのは確実だ。



レビドの里の秘密を守る事だけを優先するなら、このまま黙っておけばいい。

だがフェニスの気持ちは落ち着かない。そもそも冷徹に物事に対処できる性格ではない。

本来、のんびり大過なく過ごしたいタイプだし、攻撃的でもない。


彼らは「嫁探しをしているフェニス」に親切にしてくれこそすれ、決して害をなす連中では無かった・・・ここでむざむざ見殺しにするのは、良心の呵責が許さない。


強大な力を持つ『レビドの継承者』としては、余りにも甘いのだろう。




フェニスは、意を決して先頭を行くボンドに声をかける。


「なぁボンドさん、この先は物騒なスタビネシアンしかいない場所だ」

「・・・悪いことは言わない、引き返すべきだ」



「ん? でもなぁ、我々にも目的があってね・・・」

「そこに行かないと、目的が果たせそうにないんだ」

「悪いね、心配させて・・・そう感じるなら、無理に同行する必要はないよ、フェニス君」


ボンドは忠告に感謝はしつつも、目的の達成が最優先だという。


「・・・いや、目的はどうあれ、本当に危険なんだ」

「俺はその近くを通って来て、危うく殺されかけたんだ」

「そいつらの他は、この先は誰も居ない」


普段、あまり周囲に意見しないフェニスが、この時は食い下がる。



「・・・なぁ、ボンド」

「本当に、お前の情報は正しいのか?」


エマヌエルがボンドに尋ねる。


「情報としては、かなり信用できる筋からのものだ」

ボンドは、そう答える。


「私は、そういう確実性に、却って危うい印象を受ける」

「実際、フェニスはその近辺を通っているというのだし・・・」

エマヌエルも珍しく異を唱えて引かなかった。

フェニスは、エマヌエルが自分を信じてくれた事に、喜びを感じる。



「・・・分かった、では遠巻きに、しばらく観察してみよう」

エマヌエルの加担もあり、妥協したボンドは折衷案を出した。


フェニスが安全だと判断するギリギリの所まで、ボンドとフェニスの二人で隠れて行き、周辺の様子を、慎重に見て判断することになった。



十分距離を置いた安全な場所に、マナンと彼女の警護としてエマヌエルが留守居をし、ボンドとフェニスが目立たぬよう、慎重に目的地周辺の調査を行う。



しばらく身を潜めていると、明らかに武装した野盗と思しき集団の出入りがあった。

状況からして、この近くに大規模なアジトがあるのは、間違いない。



「・・・君の言う通りだった、助かったよ」

「それにしても、何故君はこんな地域に立ち寄ったんだ?」

ボンドがしごく真っ当な質問をする。


「・・・いや、旅の商人に騙されて、この辺りに『美女の多い集落』があると聞いて」

思い出したくも無い・・・と言った表情を作り、フェニスは弁解した。



「・・・あ、なるほど、それでエマヌエルたちの前で言い淀んだ訳だ」

「いや、済まなかった、気が回らなかったなぁ!」


ボンドは妙に納得した顔をして笑う。



不本意だったが、結果オーライとしておこう。

フェニスは、そう自分に言い聞かせた。


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