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露神の拳  作者: 齋藤十二
7/11

その7



ヘッペスタン管理区外の荒野を一台のジープが走る。


ボンドとエマヌエル、マナン、そして新たに旅の道連れとして加わったコ・シルマ改め、フェニスの4人だ。


この時点では、フェニスは彼らの旅の目的を知らない。

自身の秘密を守るには、他人の秘密も暴かない事が一番だからだ。

だから、フェニスは聞かれた事だけを最小限、しかもなるべく嘘偽りなく答える事にしている。


ただ、レビドの民ほどではないが、幻の民と呼ばれるメロスの民を旅の道連れとしている事実は、彼らがまともなヘッペスタンの旅人や研究者などではないことを示している。


つかず離れずの距離を巧みに維持しているのは、ボンドやエマヌエルの真の目的を把握するためである。仮に、彼らがレビドの民に仇名す可能性があるならば、殺害すら選択肢としては有り得るのだ。



マナンの、メロスの能力者としての力は弱い。

本来、レビドとマナンの能力差は「9:1」ほどだ。


一般の民間伝承に「レビドとメロスは双璧である」と伝えられているのは、レビドの情報操作である。圧倒的に強力な力は、その身を危うくするからだ。




***




怪しまれぬよう、ほんの少しだけ距離を置き、フェニスは彼らとの旅を続けた。

どうやら、ヘッペスタン区外での人探しのような事をしているらしい。

予想される最悪のケースは、レビドの民との接触を目的としているということで、残念ながら、それにほぼ間違いない。


では彼らは、何の目的でレビドの力を欲するのか?だが、例えばボンドとエマヌエルは、その点で、違う方向を向いているようにフェニスには思えた。


つまり、彼らは捜索と接触を命じられただけで、その目的は知らされていない・・・そう考えるのが妥当だろう。


ならば、その目的を探る「きっかけ」を探るのに、彼らとの同行は有効だ。

軍属であろうエマヌエルをはじめ、学者らしいボンドでさえ、かなりの格闘訓練を受けているように見受けられたが、それとて、その気になればいくらでも逃げる事は可能だ。




***




「君は何のために、旅を続けているんだ?」


フェニスの合気術に興味を抱いたらしく、時間があるとエマヌエルは手解きを求めるようになった。その稽古中、エマヌエルが尋ねた。


「俺の田舎は過疎の村で、嫁探しをして来いと追い出されたんだ」

「・・・まったく、そんな簡単にみつかりゃ苦労はしないっての」

フェニスは事実を言った。別にそれは隠すべきことではない。



「そうか、確かにヘッペスタンの都会娘は厳しいな・・・」

「と、なるとスタビネシアンの娘か・・・だが人狩りのせいで数が減っている」

「大変だな・・・嫁探しも」

「くれぐれも、私のような売れ残りを引かないようにな!」


エマヌエルが軽い口調で冗談を言う。

フェニスは、その言葉とエマヌエルの明るい笑顔に、一瞬心が動揺する。


「う、うわぁ!」


心が乱れたせいで、動きが乱れ、体勢が崩れる、フェニスはエマヌエルに思いきり投げ飛ばされてしまった。



「お! 上手く技がかかったぞ」

「どうだフェニス、私も上達しただろう?」


エマヌエルは嬉しそうだ。

一方のフェニスは、顔を砂だらけにして仏頂面を浮かべている。





「ねえ、ボンド、あの二人、仲良さそうだ」

「子を作るのかな?」


マナンがボンドに問う。


「さぁ、どうなんだろう・・・気持ちってのは、自分でも分からない時があるからね」



「ボンドもそうなの?」



「ああ、そうだね・・・案外、心っていうのは、自由じゃないものさ」



「ふうん、どうして、そんな苦しむように出来てるんだろうね」

「そんなことのために、生まれて来たいなんて、誰も思わないのに」



「・・・本当に、そうだよなぁ」



マナンの言葉に、フェニスとエマヌエルの稽古を遠い目で眺めつつ、ボンドは答えた。


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