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露神の拳  作者: 齋藤十二
5/11

その5



コ・シルマ・チダンが、旅を続けているのは、つがいを探すためだ。

それがレビドの力を受け継ぐ者の義務だと、里から送り出されたからだ。


古代より、レビドの民は異能を持ち、個としては人の範疇を超える特殊な力を誇った。

だが、それを受け継ぐのは民族にたった一人、そして、その特殊な力以外は、有限の寿命と平凡な肉体を持つ存在でしかなかった。


神より選ばれたレビドの血を絶やしてはならない・・・レビドの民たちは、その異能の子に、身を守る術を与えるべく、研鑽に研鑽を重ねた。当代の天才に次代の天才が加わり、何千年にも渡って研究されてきた護身の技は、レビドの異能と組み合わさって、無敵の技術と成り得た。


だが、レビドの民はその特殊性から、閉鎖的で外界との接触は最低限に止め、その力の事は徹底的に秘匿されていた。だからこそ、激動する歴史の淘汰の洗礼を受けずに済んでいたともいえる。



AI「ソピア」が世界全体の秩序を掌握してからも、レビドの民は、さらに深く身を潜める事で、その存在を秘匿し、生き延びてきたのだ。


だが、皮肉にも、その閉鎖性が配偶者の深刻な枯渇を生み、当代のコ・シルマ・チダンは、ヘッペスタンの管理外である荒廃した大地を当ても無く、歩いていた。


AI「ソピア」の管理下にあるヘッペスタンの人工都市は、身分認証が極めて厳格で、そこの住人は、とてもではないがレビドの里へは連れてはいけない。


コ・シルマ個人であれば、AIの監視をくぐって行動する事は可能だが、他の者を連れて歩くのは不可能だったからだ。


とはいえ、噂通りスタビネシアンも激減していて、旅路の中で人と出会うことは、殆ど無かった。



高温で蜃気楼がゆらめく荒れた大地を、コ・シルマはあてどもなく歩いていた。

この砂漠地帯一帯には、近郊に里も都市の跡も無く、飲料水の確保が困難だった。

行き交う人の影すら無く、コ・シルマは渇きに徐々に苦しめられてきた。


意識が少し遠のき、軽い眩暈を覚える。


「・・・これは、さすがにまずいな」


とりあえず、夜に雨が降るのを期待して、日陰に潜るつもりであったが、遠巻きに人影が見えた。



それは「人狩り」とおぼしき連中に囲まれた、一台の車両だった。


人狩りから助けて水を貰うのもいいが、自分の能力は隠しておかなければならない。

もしくは、人狩りに襲われた後、皆殺しにして水と食料を得るか・・・。

渇きのあまり湧いて出た、物騒な後者の考えは慌てて捨てた。


「あの程度の人数なら、普通の技でなんとかなる」


コ・シルマはそう呟いて、襲われた側の加勢につくことを決め、足を速めた。


すると、襲われていた3人のうちの一人、年若い美しい娘が、人狩りを前に裸身を露わにしだした。


「??」


一瞬身体を売って、命乞いをするつもりか?とコ・シルマは思ったが、レビドの民にしか感じ取れない波動を、その娘が放っていることを理解した。



「・・・・これは、まさか、滅んだと言われるメロスの民?」


コ・シルマの予想通り、人狩りは次々と意識を失って倒れたが、その力は弱く、全員を無力化まではできそうにない。


「急がないと死人が出かねない」


そう判断したコ・シルマは、一気に駆け出し、その彼らの死角から襲おうとした人狩りの残党を、背後から襲い、能力を使うことなく無力化に成功した。


その姿を、彼らも目にしたようで、警戒しつつも近づいてくる。

急激に動いたこともあり、もう、その時は脱水状態で、急速に意識が薄れて行った。


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