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露神の拳  作者: 齋藤十二
10/11

その10

10




フェニスにとって、レビドの里から微妙に遠ざけている行為に、若干の罪悪感がある。

だが、そもそも自分自身が彼らの目的であり、その事を明かさない自分自身が、一番彼らを振り回している元凶である。


・・・それでも彼らとの旅は、フェニスにとって心地よいものである。

だが、いつまでも誤魔化すことは出来ない。

タイミングを見て、彼らと別れるべきだ。


如何なる事情があるにせよ、人外の力を持つ自分が、普通の人間と深く関わり合うべきではない。



「・・・それに実際、あんなザマを見せたら」

「思いっきり引かれるか軽蔑されるかのどっちかだもんな・・・」



フェニスが地面に寝っ転がり、ぼんやり空を見上げながら、ボヤいた。



すると目の前が暗くなる。


「どんなザマだと、引かれたり軽蔑されたりするんだろうね?」


声の主はエマヌエルだ。


視界が暗くなったのは、上からエマヌエルが覆いかぶさったような格好になっているからだ。


彼女は気がついていないのだろうが、シャツの首元が大きく開き、豊満な胸元が奥深くまで否応なしに視界に入る。


「うわぁぁ!!」

予想もしていなかった事態に、悲鳴に似た声をフェニスは上げた。



「何を油断しているのだね?情けない」

エマヌエルは落胆した口調を作るが、その実、してやったりの感が隠せない。

まるで、からかい甲斐のある弟に対する、それのようにも見える。


「大丈夫だよ、普段からそれだけの醜態を見せてくれる君ならば」

「私は、如何なる事があっても、君を軽蔑できる自信が無い!」

妙に楽しそうな口調で、自信満々に言う。



最近、エマヌエルの態度が、どんどんと変わって行くのを感じる。

多分、おもちゃにして遊べる弟のような存在が、元々彼女は欲しかったのだろう。


ふっ、弟ね


フェニスは自分自身の中で、そう考え、反芻している。

まあ、彼女とも、もう少ししたら永遠にお別れだ。

この束の間の時間だけでも、心から笑えるようにしていたい。


・・・そんな事を考えながら、フェリスはエマヌエルとの時間を過ごす。





***





「お頭、これからどうします?」


砂ぼこりが風で流れると、野盗の大集団が荒野の中から現れた。


「忌々しい、「ソピア」め・・・こんなところにまで機械化兵で干渉しやがって!」

「仕方がねぇ、迂回して西へ向かうぞ」


頭と呼ばれた男が、そう言うと、配下の者の合図で一斉に移動し出す。




その先では、ボンドたちが旅を続けている。

それが、偶然の皮肉なのか、必然という悪意なのかは、誰も分からない。


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