表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

水飴

 とある寺にケチな和尚がいた。美味しいものが手に入ったら独り占めして、誰にも分け与えない。その寺の小坊主たちは「うちの和尚は冥土の餓鬼みたいに貪欲だ」と憤慨していた。中でも小坊主らを怒らせていたのは、和尚が甘い水飴を自分独りで食べていることだった。「少しは分けて下さい」と小坊主たちが頼んでも、和尚は「子供には毒だ」と言って一口も与えない。小坊主らは和尚を「地獄の鬼より意地汚い」と陰で罵った。

 ある日、和尚が外出した。その隙に小坊主たちは水飴を舐めることにした。和尚が隠していた水飴の入った壺を見つけ出す。その中に入っていた水飴を、少しだけ舐める……いや、少しでは収まらなかった。ちょっとだけ、ちょっとだけと言っているうちに、かなりの量の水飴が小坊主たちの口の中に消えた。

 異変が起きたのは、和尚が寺に戻ってくる少し前だった。水飴を舐めた小坊主たちが、一斉に苦しみ始めたのである。帰ってきた和尚は、小坊主らが藻掻き苦しんでいるのを見て、哄笑した。

「わはは、こんなこともあろうかと、水飴を毒にすり替えておいたのだ!」

 大半の小坊主は毒のせいで息絶えたが、体格の良かった小坊主が一人だけ生き残った。その小坊主は和尚に襲いかかり、空になった壺で殴り殺してから、何処ともなく姿を消した。

 この事件を題材にした物語が仏教説話集『沙石集』に収録され、それが発展して狂言の曲目『附子』になったとの説が明治中期に唱えられたが、元となった事件が『沙石集』成立後の江戸時代に起きたことが判明したため、その説は今日では否定されている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ