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岩船山奇譚  作者: 藍染 迅
10/12

第10話 秘法

「この岩がマヤ文字と何の関係がある?」

「巨石文化の謎ですよ」


 古代文明と離れがたく結びついた巨石文化。エジプトのピラミッド、マヤの石造建築、日本の岩船。

 重機が存在しない古代に、人々はどうやって巨石を運搬し、積み上げたのか?


「人力とてこの原理だろう。それに岩船は自然石だ」

「かつて重力を無効化する技術が存在したのです」


 反重力。それを巨石に働かせたものを、人々は岩船と呼んだ。古代人は岩船に乗り、空を飛んで移動したのだ。

 マヤ人が日本に来ることも岩船に乗れば可能になる。


 ニギハヤヒの天孫降臨とは、マヤ人が大和に降り立ったという事実を伝えたものではないか?


「馬鹿々々しい! 不可能に決まってる」


 教授はわたしの仮説を頭から否定した。


 重力、つまり引力とは物体の質量に働く「場」の効果である。

 質量のないものに引力は働かない。


「物質を純粋なエネルギーに変換する時、『ゼロポイント・エネルギー』と呼ばれる巨大な力が解放されるんですよ」


 わたしはネットで仕込んだ量子力学の知識を披歴した。

 ZPEとも呼ばれるその力は、原子力エネルギーをはるかに超える究極のエネルギー源だ。


「それが岩船の動力源だとでも言うのか? ナンセンスだ!」

「そういわれてもね。科学者である以上、再現可能なものは否定できないでしょう?」


 マヤの碑文にはそれが事実だと記されていた。ニギハヤヒは当時天候不順で飢饉が続いたマヤの土地を捨て、遥か太平洋を渡って日本にたどりついたのだと。


「日本以外にも世界各地に渡ったマヤ人がいたようです。それがイースター島のような孤立した島に巨石文化が残った理由ですよ」

「くだらん妄説だ。そうだとしたらマヤ人の痕跡はどこに行った? DNAタイプに痕跡が残っているはずだろう?」


 新天地に定住したマヤ人がいたとしたら、現在生きている人間のDNAに痕跡が残っているはずだ。それは正当な議論なのだが、この場合は当てはまらない。


「彼らは『神』ですからね。人とは混血しませんでした」


 ZPEは「神の力」だ。機械文明が生まれる前の時代にあっては、圧倒的な軍事力でもあった。

 空から巨石を降らす力に対抗できる勢力など、地上には存在しないのだから。


 マヤ人は神として君臨し、寿命と共に消え去った。後に残ったのは神に対する崇敬と畏れである。

 人々は神をまねて巨石を積み、像を作って崇めたのだ。


「それなら、なぜ巨石なんだ? 小さな石からでもゼロポイント・エネルギーとやらを取り出せるだろう?」

「大きすぎたんですよ、力が」

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