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軽トラ転生 我が道を行け!  作者: O.K.Applefield
4.軽トラ転生おっさん。もしくは、軽トラ ザ ラリー
29/30

4-9


 バーンズ男爵と彼の助手の男は大会係員に連れて行かれた。

 軽トラのタイヤに刺さったマキビシを全て抜き、治癒魔法を掛けてもらってパンクを直す。

 どういう原理なのか、空気漏れしていたタイヤの穴が塞がると同時に空気圧も適性値まで戻る。

 車体は完璧な状態になり、直ぐにでもレースに復帰できるのだが、俺達はまだ出発せずぼーっとしている。

「いや、ほんとに済まない。攻撃魔法や戦術魔法は得意なんだが、どうも、身体強化も治癒魔法も俺は不得手でな」

 リタが、そう謝る。

 俺の修理はラクティの治癒魔法によって行われた。

 そのせいで、彼女は魔力切れを起こしている。

 身体強化の魔法を自分と他の人にも連続で使用し、その上治癒魔法まで使ったので無理もない。

 別に気絶したり苦しそうにしている訳では無いが、軽トラの横に座り込み、やる気無さそうな顔で空を見上げている。

 魔力切れの症状はこの倦怠感らしい。

「別にいいさ。私の相棒だし、私がやるべきだったんだから。それに少しすれば回復するし」

 ラクティが隣に座るリタに答える。

「そうだが、今回の追跡は俺からの要請だ。ラクティは別に上位入賞は狙ってなかったんだろ、それを無理につき合わせちまった」

「まあ、そうだけど、私だって卑怯な手で競争相手を妨害する奴は許せないから」

「それはそうだな。お互いあの男爵を追うのには意見は一致してたんだな。でも、それで魔力切れになってしまったんだ。要請に対する報酬は払うぞ」

「いや、別に正式に契約した訳じゃないし・・・」

「確かに、前の時みたいに雇用契約を結んだ訳じゃない。そうだな、友達にお願いを聞いてもらって、それにちょっとしたお礼をするくらいか」

 そう言って、リタははにかんだ笑みを浮かべる。

「友達?そんな、偉いお方に対して恐れ多いですよ。私なんてただの運び屋です・・・」

 ラクティがそう言って、手を振る。

「・・・駄目か?そりゃ、俺自身も実家の名前を使ったり、筆頭魔法師の称号で色々する事も有るけどさ、そんなしがらみとか関係ない友達も欲しいんだよな」

 リタの言葉に、ラクティが考え込んで、押し黙る。

「良かったじゃないかラクティ。友達少ないんだから、増えるぞ」

 これまで敢えて女子二人の会話に挟まらない様にしていた俺だが、少しおどけた口調で口を挿んだ。

「友達少ないのか?」

 何故かリタが少し嬉しそうに喰い付いてきた。

「まあ、そんなに多くは無いって本人が言ってた」

「ケイジ!?」

 俺の回答にラクティが怒った声をあげる。

「そうかそうか、実は俺も友達は多くないんだ」

 リタがそう言う。

「あの、フィーナって娘は?」

「俺的には友達のつもりなんだけど、本人は上司と部下の関係を崩したくないみたいでな・・・」

 俺の問いにリタが答える。

 確かに、あの娘は常にリタの事を『エルデリータ様』と呼ぶのを崩さなかった。

「そんな訳で、友達になってくれないか?」

 リタがラクティを上目使いで見る。

「でも、そんなに頻繁に会える訳でもないのに・・・」

「それなら、ケイジに掛けた魔法の経過観察をしたいから、近くに寄った時だけでも、会いに来てくれると嬉しいな。・・・無理にとは言わないけど」

「そ、それで良いなら」

「ありがとう!」

 リタがラクティの手を握る。

 レースの最中だとは思えない和やかな雰囲気だ。

 と、思っていたら道の向こうから数台の魔動車がかなりの速度でやって来る。

「エルデリータ様ー!!」

 先頭の一台から、フィーナ嬢の声が聞こえる。

「来たか!」

 リタが立ち上がる。

 どうやら落石の撤去が終わって、足止めされていた他のレース参加者が追い付いて来た様だ。

 フィーナの魔動車が急ブレーキで俺の後ろに停まる。

 その横をカーンやホーラ兄弟の車が通り過ぎて行く。

 レースなので停まることは無いが、俺達に軽く挨拶する。

 自分の車に戻ったリタが助手席に頭を突っ込み何かを取り出す。

 俺達の所に再び戻って来る。

「これ、今回のお礼だ」

 ラクティにりんごの様な果物を、軽トラの車内に居るぬいぐるみボディの俺に光る石を一つ渡した。

「友達の件、忘れないでくれよ!」

 そう言って、リタは自分の車に乗り込む。

 フィーナが車を発進させ、先行したカーン達を追い掛けて行った。

 レースはまだ続いている。

 今俺達より前にいるのは三台だが、このまま留まっていたら更に後続車が来て順位は落ちる。

「さて、俺達も行こうか?六位までは賞金が出るんだっけか?」

「そうだな」

 俺が声を掛けると、ラクティが運転席に乗り込んで来る。

「魔石が有れば俺の運転でも行けるから、ラクティは少し休んでいてくれ」

 リタから貰ったそれを抱えて、俺がそう言う。

「うん」

 運転席に座ったラクティが、体力を回復させるために果物を齧る。

 久しぶりに俺は自分の車体を自分で操り、走り出す。


 その後は大きな問題も無くレースは終了した。

 一位はジュピター商会のマイク・カーン。

 終盤の良く整備された道では大パワーの彼の魔動車が有利だった。

 二位は招待選手であるリタとフィーナ。

 一度抜かれたホーラ兄弟を抜き返して、二位につけた。

 三位はそのホーラ兄弟。

 そして俺達は四位に成った。

 表彰台には登れないが、賞金は出るので悪くはない結果だった。


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