ビックリ巡察⁉
「俺達の巡察区域は、逢異原八・九丁目だ。」
と、トシ兄が地図を見せながら教えてくれる。
「特にここ、藤華院は異界とつながりやすいところだからくまなく探す事。」
藤華院は新道家のお墓のあるお寺で、とてもお世話になっているお寺。
「よく俺とトシは三〇分くらい張り込みしているよ。長い時は二時間くらいだな。」
「だな。」
二、二時間・・・。想像していた時間より長くて驚くよ。
「まぁ、今日は前を通るだけだから警戒心を持たなくても大丈夫だけれど、二人だけの巡察のときは気を引き締めるんだよ。」
「「はいっ。」」
「よし、じゃあ行くか!」
「「「おっしゃあ!」」」
新道家の門を出ると、なんかイヤーな人影が・・・・。
「はぁ、出てすぐにいるとかありえなさすぎるだろ。」
「だね、トシ。総司は誠奈ちゃん背中で守っといて。」
「わ、分かった。」
私は?何で私が総司に守られないといけないの⁉
総司に後ろに隠されると、あんまり戦闘状況がわからない。けれど、さっき見たときは農民の格好をしていたなぁ。
と思いながら、総司の後ろからばれないように観戦。
「時の神・月読命よ、旅の神・猿田彦神よ。かの者を元の時代へ戻したまえ。」
と言いながら、勇兄は刀を振り上げる。
「送封。」
と言うと、一気に刀を振り下ろした。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
という声が残りながら、農民は消えていった。
私は勇兄の刀に注目する。
ウソでしょ・・・。刀に、血が、付いてる・・・・。
「・・・あ、誠奈ちゃん、見ちゃった?」
「おい、誠奈お前見たのか⁉」
焦る兄二名。
え、ウソ、でしょ・・・? ウソ、じゃない? え、どういう、事・・・・?
と思っていると、私のことを呼ぶ声がすぐそばで聞こえながら、私は地面に近づいていった。
「んん~っ。」
あれ、ここって・・・。
私が目を覚ましたのは、見慣れた天井がある自室だった。
「誠奈、大丈夫か?」
「そ、総司?何で総司がここに?」
「誠奈が巡察中に倒れたから、心配でここにいる。今は午後六時三〇分過ぎ。」
え・・・。やっぱり私、倒れたんだ。
「待って、夕飯の時間じゃん!急いで降りないと・・・。」
と焦ってベッドから降りようとする。
「お前が大丈夫なら下に行くか。」
「うん!」
私は隊服のまま下の食堂に向かう。
階段を降りると、厨房の電気がまだついていた。
「あ、誠奈。起きて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、お母さん。心配かけてゴメンなさい。」
「まぁ、初任務なら必ずなることよ。あ、これ誠奈と総司君用の夕飯。自分たちで持って行ってね。」
「「はい。」」
いつもなら私も総司もご飯の量は一緒。だけれど、体調のことを気にしてか今日のご飯は少なめが一つあった。それを持って食堂に向かう。
カラカラ
「あ、誠奈。」
「誠奈ちゃん・・。」
「セイ姉ちゃん。」
「せ、誠奈・・・。」
反応がバラバラ。ここにいる人はほとんどが私の倒れた理由を知っているのだろう。
私の定位置に座ると、隣に座っている小三の妹・誠華が目をキラキラさせながら聞いてきた。
「お姉ちゃん。今日どうしたの?いきなり勇兄とトシ兄と総司兄と一緒に遊びに行ったと思ったら、倒れて帰ってきて。ねぇどうしたの?」
どどどどどどどどどどうしよう!助けを求めて横に座る総司を見る。
ふいっ
えぇ!そっぽむかれた~っ。前にいる兄の誠助、勇兄、トシ兄などの事情を知っていそうな人に目線を向けるが、全員にそっぽを向かれる。
これ、私がなんとかしろ!ってこと⁉
「あ、ええっとね、お姉ちゃん、カエルが苦手すぎて、肩にカエルが乗って気絶しちゃったんだ。あははははは・・・。」
「お姉ちゃん、カエル嫌いなんだ。じゃあ、ぴょん吉かわいそう。」
「ぴ、ぴょん吉?」
「私のクラスで飼っているカエルちゃん。」
「そ、そうなんだ。」
ググーッ
だ、誰のおなかの音?
「すみません、俺です。」
総司のおなかの音だそう。
「誠奈も早く食べたほうがいいと思うぞ。おなか鳴っても知らないからな。」
ググーッ
「はい、食べます。」
自分のおなかの音が鳴り、さすがに私ははしを持ち、少しずつ食べだした。
これっきり、ご飯が食べ終わるまで誠華は声をかけて来なくなった。
カラカラッ
「トシ兄ー、入るよーっ。」
「誠奈なぁ。総司もだがそういうのは開ける前に言えよ。」
「「ごめんなさーい。」」
謝る気ゼロ。
「はははっ。トシも少しは多めに見てあげなよ。」
「ダメだろ勇兄。総司はいいが、誠奈はもう中一女子だろ?」
「私、トシ兄なら一本投げで倒せるけれど・・・。」
「そういう問題じゃないだろ・・・。」
トシ兄お手上げ状態。
「というか、誠奈達は出動要請が来ているんだろ?調べたりしなくていいのかよ。」
「私はほとんどしなくて大丈夫。それより総司、父さんから教材来ていないの?」
・・・
部屋の中が一瞬で静かになる。
「来てた。今日から勉強しないとか・・・。」
「あったりまえでしょ。じゃ、ここでやろっか。歴史得意なトシ兄と勇兄がいるし。」
「・・・・はーい。今持ってくる。」
「あ、私はノートとか持ってくる。」




