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浅葱色の背中 ~歴女と新選組~  作者: 山野 紗世
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普通の生活とおさらばなんて、嫌ですっ!

 いい音しているな~。誰と誰が戦っているんだろう。

と思いドアを開けると、ちょうど人が立っていた。


「あっ!」

「お、誠奈(せいな)ちゃんいい所に来た!さ、上がって~っ!」

「え、あ、ちょっと左之(さの)さん⁉」


私、道着きてないよ!バレたら父さ、じゃなくて新誠(しんせい)先生に怒られる!と、さんざん抵抗したけれど、左之さんの肩に担がれて道場の中に入れられた。


「お、誠奈じゃねえか。ヤル気になったんだな。」

「いや違うってセイ兄!」


全否定するに決まっているでしょ!


 カラカラッ


ひぃぃぃい!この殺気、もしや・・・。


「・・・・・・・と、父さん・・・・・・。」


ヤ、ヤバイ、怒られる・・・っ!


「誠奈。」

「はいいぃぃ!」


やっぱり怒られる!左之さんめ~っ!


「小6と中1を連れて、母屋の広間に来い。20分後にな。」


「はい!」


 カラカラッ


さ、去った。よかった~。


緊張が解けて、私は膝から崩れ落ちた。


「誠奈っ!」


膝から崩れ落ちた私を、同級生の総司(そうじ)が支えてくれた。


「そ、総司・・・。ありがとう・・・。」


私は父さんが苦手。あの冷たい声で話されるのが一番辛い。

私は総司の手を借りながら立つ。


「じゃ、小6、中1!広間に行くよ!」


 はい!


私たちは道場から出て広間に向かう。


「ちょ、誠奈。」

「なに?総司。」

「俺らの臭い道着、脱いだ方がいいよな?」

「・・・確かに。じゃ、脱げば?」

「ここで⁉」

「いや、自室で。って、私も着替えなきゃ!」


ほぼ部屋着のジャージで母屋に入ったら、今度こそ父さんに叱られる!





「で、早速本題に入るが、お前達はどのくらい家業について詳しいか?」


か、家業?


「先生。」

「なんだ総司?」

「家業というのは、新道家(しんどうけ)が医者、ということですか?」

「いや、違う。」


え、違うの⁉


「お前達は、この世に迷い込んだ異時代の者を元の世界に戻らせる役目の家系に生まれてきたがために、その役目をしなくてはならないのだ。」


な、何その役目~っ!


「丁度今本隊内が混乱していて、子供だけの別動隊を作ることになった。」


子供だけの別動隊かぁ~。面白そう。


「そしてその隊の名前は、これだ。」


父さんが掲げた紙に書いてあった名は・・・。


『新選組』


ん、新選組?どこかで聞いたことのある名前だなぁ。


「で、基本は2人行動という決まりだ。とりあえず、今発表出来るのは、誠奈と総司ペアだ。」


え、私のペア、総司⁉


「これで以上だ。皆は練習をするように。」


って、これで終わり⁉早っ。


「誠奈、ペアよろしくな!」

「・・・・よろしく、総司。」


敵(総司)とペアって、超最悪!

他の皆が去ったことを確認して立ち上がる。小さい子の去った事を確認するのは、年上の役目なんだ。


「いたいた。総司、誠奈ちゃん。」

「「勇兄~!」」


大学3年生の近藤勇(こんどういさみ)はさんは、うちの道場(相新道場(そうしんどうじょう))内屈指の剣使いの1人。


「急で悪いね、2人とも。」

「大丈夫です勇兄。ね、総司。」

「あぁ、うん。何かあったんですか?」

「・・・うん。そこに、座ってくれないか?」

「「はい。」」


もしかして私と総司、何かやらかした⁉


「これ、2人の分の隊服と刀。」


隊服と、刀⁉あれ?この隊服の羽織、どこかで見たことある気が・・・。

私の脳内テキストを急いで開く。・・・・・・・あ!


「勇兄。この羽織、江戸末期に活躍した新選組のパクりですよね?」

「・・・・・正解。流石誠奈ちゃんの脳内テキスト。よくわかったね。」


私の趣味は歴史の研究をすること。いわゆる歴女。


「へへっ。最近、江戸末期の研究をしているので覚えていただけですよ。」


と話していると、頭上に?がいっぱいの総司が聞いてきた。


「な、なぁ誠奈。江戸末期に活躍した新選組って、何?」

「え、総司知らないの?新選組っていうのはね・・・・。」


私のマシンガントークのせいで余計総司の頭の中をこんがらせたので簡単に言うと、江戸時代の後半(いわゆる幕末)に、五年間京都の治安を守った幕府寄りの隊。


「ふ~ん、そんなのがあるんだ。」

「そう!私の推しは、天才剣士と言われている沖田総司(おきたそうじ)で・・・・。」

「って、まて誠奈。なぜ俺の名前が出てきた?」

「・・・・言ったっけ?」

「お前の推しが、天才剣士の沖田総司って。」

「・・・・・・言った。ど、どどどどどどういうこと⁉」

「知らん。」


私はプチパニック状態。


「誠奈ちゃん、総司も落ち着いて。そのことについて、話してもいいかい?」

「「はい。」」


2人で正座をし、勇兄の前に座る。


「実は、相新道場にいるほぼすべての人が、幕末に活躍した新選組のメンバーなんだ。」


・・・・え?


「つ、つまり、この時代に迷い込んじゃったってことか、生まれ変わりのどっちかですか⁉」

「誠奈ちゃん大正解。俺たちは生まれ変わりで、年の差もそのままなんだ。」

「ウソでしょ⁉あれ?じゃ、ほぼ全てということは、新選組隊士ではない人って、誰ですか?」

「・・・・・新道家の人たちだよ。」


つまり、私の家族⁉


「ということを新誠先生に教えてもらった。」


やっぱり。父さんが私達子供に対して何か隠しているって思っていたけれど、このことだったんだ。


「じゃあ、私の憧れている斎藤さんって、私より年下・・・。」

「斎藤さん?あ、ハジちゃんか。」


ハジちゃんこと斎藤一(さいとうはじめ)は、道場内の剣術ランキング5位以内の常連の小6。ちなみに私と総司は3位以内の常連。ドヤァ。


「ということは、局長の近藤勇は勇兄で、鬼副長こと土方歳三(ひじかたとしぞう)って、トシ兄のことなんですか⁉」

「・・・そうだよ。」


ウソでしょ・・・。


「でなんだけれど、二人に今日から仕事をしてほしいんだ。」

「「今日から⁉」」


急すぎる!


「そうなんだ。ほら、2週間後に月食があるだろう?だから、時空が交わって異時代の人がこの時代に来やすくなっているんだ。それで本隊内がてんてこまいで大変なんだよ。それで、子供たちに手伝ってもらえばいいんじゃないか、ということを新誠先生が言ったのを発端に、話がトントン拍子に進んだんだ。特に誠奈ちゃんと総司ペアを勧めていてね・・・。だから、すぐに出動要請が来ると思うから、覚悟していてね。」

「「・・・はい・・・。」」


すると、窓から灰色の鳥が飛び込んできた。


「出動要請、出動要請。新道誠奈・沖田総司ペア。急ぎ家長の間に来るように。」


へ、鳥が、


「「しゃべった~⁉」」


ファンタジーの話の世界じゃない!ここ、ナ〇ニア国物語の世界なの⁉


「あ、この鳥は伝書鳩。通称・デンバトと言って、隊士同士とのやり取りなどに使う鳥だよ。透明になって敵にバレないように連絡を取ることや、壁とかを通り抜けることが出来る凄い鳥なんだよ。」


いやいや、本当の意味とは違いますよね⁉

勇兄の自慢話を心の中で突っ込む私。

伝書鳩とは、遠く離れた場所などからの通信に使われているハトのこと。連絡のやり取りを行うこと自体に間違いはないんだけれど、透明になることや壁を通り抜けることが出来る鳥なんて、ファンタジーの世界に行かないとないって!


「ほら、もたもたしていると、新誠先生に叱られるよ。」

「「は、は~い。」」


さっきのデンバトにびっくりして意識が飛んでいた私と総司は、なんとか立ち上がり家長の間へと向かった。

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