第97話 省略召喚
お待たせ致しましたー
鏡羅となった私だが。
大精霊と転身しても……『聖女』の称号はそのまま。
であれば、必要な糧は己自身で……得ることが出来るだろう。
私は、宙へと手を伸ばした。
【降りろ】
詠唱を破棄し、ひとつの言葉だけを告げれば……私の手の中が光り。
皆様が驚かれていらっしゃる目の前に、様々な建物の『ガラクタ』や『ゴミ』が出現した。
やはり、人間でなくなったので……魔法なども、一部は詠唱を破棄することが出来るのだろう。
自分の手を見ても、特に変化はなかった。
「え!? 今のだけで!! すごい、凄いよミラ!?」
「……ほぼ詠唱破棄じゃな」
「……すごい」
「たまげたわ……」
「わーいわーい!! これ、皆で食べていいのー?」
「……はい」
祝杯、とは違うかもしれないが。
我ら、大精霊以上には……普通の食べ物よりも、こちらの方を好んでいる。
私が頷くと、龍羽様以外の方々が簡易体となられ、飛びつこうとしたが。
龍羽様に、術か何かで足止めされてしまった。
「待った待った。これはもう、皆で宴としようじゃないか」
「宴……ですか?」
「そうそう。糧は、ミラが用意してくれたけど……改めて、祝わせてよ」
ね? と可愛らしく片目をつむられた龍羽様のお言葉に、私は頷くことにした。
すると、術で止められていた皆様も首を強く縦に振られた。
『せやな?』
『宴、宴〜!!』
『であれば、妾は酒を出そう』
『僕は……果実水』
『じゃ、あたしは果物〜!!』
『くっ! 俺は何も出せん!!』
ぽん、ぽん、ぽん、と。
ガラクタ達の前に……様々な品が並んだ。
私も簡易体になった方がいいかと……意識を集中させて変化してみたが。
まとう鏡が少し小さくなった以外は、ほとんど以前の簡易体と変わりなかった。
『あ、ミラ〜! かーわーいーいー!!』
果物を出していただけた緑斗様に、ぎゅっと抱きしめられた。人型とは違い、ふくよかな胸はないけれど……柔らかくて少しドキドキしてしまう。
『潰すな、アホんだら!?』
対する、もこもこしている珀瑛様に引き剥がされると……もこもこした手触りに、つい……人間だった時と同じように触りたい欲求が出てきた。
少しだけ……少しだけ、と思うと、フワンとした毛並みを掴んでしまい。珀瑛様に『わひゃー!?』と声を上げさせてしまった。
『ほっほ。ミラはハクの毛並みの方が好みかえ?』
『……みたい』
『……もふもふ』
ああ、簡易体となっても……この手触りはやめられないわ!!
ひとしきり満足してから……やっと、ガラクタ達を食べることになったが。
次回はまた明日〜




