第96話 神からの対策②
お待たせ致しましたー
音を立てて動き……青白い靄が出てくると、瞬時に人型となった。
身なりは……死んだ当時のままか、あちこちが血にまみれている。
鏡羅とよく似た風貌の、ひとりの女の形になった。
『……貴方、様は』
【我は神よ。愛し子の親よ】
『……神? ああ……』
靄のなりではあったが、女は……鏡羅の産みの親は、静かに涙を流したのだった。
【其方らは……あの王族の手によって死したか?】
『……はい。あの子……ミラジェーンが、連れて行かれてから……すぐに』
【……そうか】
どこまでも、腐った性根を持つ愚か者らだ。
己らの欲望のためだけに……鏡羅を囲い、仮初の財を得ようとしたのか。
我が『聖女』の称号を与えたのは……鏡羅が幸せに生きていくためだった。決して、このような結果にならぬことを願ってこそだ。
しかし……それを悔いたところで時が戻るわけではない。
『神よ。あの子は……ミラ、は? 今どのように』
【……案ずるな。あの者は今精霊の里に居る】
『……精霊?』
【あの者は……大精霊となった。もう、あの愚かな王族どもの元にはおらん】
『……ああ』
また涙を流したが、辛そうな表情ではなかった。
【無事に転身を終え、あの者には『鏡羅』と名を与えた。其方もだが、悔いているものがこの場に留まる理由はもうない。……其方は会いに行くか?】
『……はい。はい!』
『……神よ。私も……良いですか?』
別の骨から、靄が上がり……そちらからは、男の人型となった……血まみれの者が出てきた。予想するまでもなく、此奴は鏡羅の父親だろう。
【……よかろう。他の者らは、どうだ? 鏡羅に会いに行くか?】
我が呼びかけをすると、人型にはならなかったが……多くの靄が現れた。
それだけ……鏡羅が幼き頃に引き離されたとは言え、あの子は好かれていた証拠だ。
ならば……と、我は転移の術を駆使して。其奴らと里に向かうことにした。
次回はまた明日〜




