第76話 屋敷精霊の観察
お待たせ致しましたー
ミラが倒れた。
原因は、ゆっくり浸かり過ぎた風呂のせい。
大精霊になったからって、まだまだ人間だった名残りが多いのは仕方がないかもしれない。
私はすぐ、主である珀瑛様に言霊を転送したのだ。
【主、主!!】
『あ? どないしたん?』
【ミラが……のぼせて!】
『は?』
とにかく、服だけは簡易的なものを着させるだけは頑張ったが……脱衣所で寝かせても、ミラの顔の赤みがなかなか引かない。
主がすぐにやって、慌てた表情でミラを診てくれたが。
【主……、どう?】
「……大丈夫や。ほんまにのぼせただけや」
【……治る?】
「せやな。腹空いたら大変だろうし…………治癒」
主が簡易的な、大精霊だから扱える治癒の魔法を唱えると……ミラの身体に、薄緑の風が巻きつき。消えたら、赤みも引き、息遣いも落ち着いた。
それから、ゆっくりと目を開けてくれて……自分に何が起こったのかわからず、何度も瞬いた。
「……わ、たし?」
【ごめん、ミラ! 私が気づかず、ゆっくりお風呂に入っていいからって!!】
「え? ゆっくり……お風呂にですよね?」
「それがいかんかったんや。ミラはまだ大精霊になったからって、人間の名残りがあるからなあ?」
「…………早く、きちんと大精霊になりたいです」
「焦らんでもええで? 時間はたっぷりあるんや」
そうは言うが、我が主。
ミラは……おそらく、主のことを『好き』以上に『愛している』と思うのだ。
ミラは、昨日来たばかりだけど……主をわざわざ、居住先に選んだ時点で……私は何と無く察していた。
主に必要以上の好意を抱いていることはわかったが……今日の出来事をかいつまんで聞いただけでも、ミラが主を愛しているのがよーくわかった。
今も……主が労りの言葉をかけていても、『早く近づきたい……』って感情がすごい。なのに、肝心の主は鈍いのか全然気づいていない。
あれだけ、好意を表現しているのに……主は朴念仁か?
単純に鈍感なだけか?
ミラが……少し可哀想だった。
(……私は、主に創られた存在だから。敬意以外何もない)
むしろ……ミラには、主と幸せになって欲しい。
ミラほど……良い子が大精霊となった今。結ばれるのに、何ら問題はないのだ。
ちょっとだけドジで、けど頼り甲斐のある主となら……ミラも幸せになれるだろう。
であれば、私も尽力は惜しまない!!
けど……出来ることはまだ少ないので。今は、ミラにお水を飲ませている主を観察するだけだが。
(……主、もか)
実際、ミラはまだまだ子供だが。
主自身がミラを労る様子……鈍感でも、自身もミラを想っているのが第三者側でもよーくわかった。
さっさと、くっつけと思っても……焦ってはいけないとも私は思えた。
次回はまた明日〜




