第67話 言葉遣い
お待たせ致しましたー
「すぐに変われるかどうかわかんないからねぇ?」
声を掛けてくださったのは、龍羽様だった。目端を軽くこすられて、あくびしている姿が……大変可愛らしかった。
他の皆様もゆっくりと起き上がられたのだった。
「そうなのですか?」
「そもそも、人間から精霊に転身することはあっても。大精霊に転身するのは……たしか、千年以上はなかったかな?」
龍羽様のお言葉に、皆様は首を大きく縦に振られた。
「最後は璐羽だったっけ〜?」
「……せやな」
「璐羽、様が?」
少しだけ……恐ろしく感じてしまった、あのふわふわな鳥の簡易体をお持ちの方。
私のために怒ってくださったが……あのような表情をなさると言うことは、私以上に人間との関わりで何かお有りなのだろう。千年と言う年月を思うと、私では想像もつかないが。
「ところで、ミラ」
「はい」
龍羽様が瞳をぱっちりされると……何故かじっと私を見つめてこられた。
「……いつまで、そんな畏まった態度でいるの?」
「え?」
「僕らはもう同胞なんだから、遠慮は必要ないんだよ?」
「……遠慮、ですか?」
「もっと砕けた言い方……んー、リョクみたいな」
「緑斗、様のような?」
話し方? と口にすれば……皆様は、何故かキラキラしたような表情になられたのだが。
私は理解すると……首を強く横に振った!
「え〜? なんでさー!?」
緑斗様が私の前に来られると、肩を強く掴まれた。
「む……無理です! いくら、大精霊になったとは言えど!!」
「すぐなった、これまで存在してたの差もなんもないよ〜? 龍羽様だって良いって言ってるんだし!」
「そーだよー?」
「無理ですぅ!!」
そのように畏れ多いこと、やはり出来ない!!
さらに強く首を横に振ると、ヒョイっと何かに引き寄せられたのだ。
「ミラが困っとるで? お前の馬鹿力で肩壊したらどないすんねん」
優しく、丁寧に……珀瑛様が引き寄せてくださった。
思わず、ときめいてしまうが……人間でなく、私も大精霊になったのなら。
この方に、想いを寄せても……もう大丈夫と言うことなのだろうか?
「え〜? じゃあさ、じゃあさ? せめて、龍羽様以外『様』付け無くすとか」
「無理です!」
「頑固だなあ〜? それか何か理由あるのー?」
「無い、わけではないのですが」
あの城に居た頃は……王族だけでなく、すべての人間にこの言葉遣いをしていた。
だから……仕方がないのもあると言うわけで。
「……せめて、『さん』とかは?」
ずっと静かにされていた、翠雨様のご提案も有り難かったが……そう呼んでいいのか皆様を見ると、珀瑛様までキラキラした表情になられたのだ……。
次回はまた明日〜




