第59話 神の処置
お待たせ致しましたー
狼狽えるでない、と精霊の子らには告げたものの。
この変化は仕様がない。
愛し子の内に……溜まりに溜まった、『膿』のようなもの。
あの愚かな、王族から受けた……謂わば、『呪詛』。
妬み
恨み
辛み
苦しみ
蔑み
それらが……精霊になる前に、この子が受けてしまった繋がりだ。
まだまだ、この子は無垢ゆえに。
純真過ぎるゆえに。
我の予想をはるかに越えてしまうくらい……優しくて、愛おしい子だ。
風の精霊は、厭わずに触れてしまったが……急がねば、またこの子の身体は蝕むのを止めやしない。
消滅させるのは簡単だ。
だが、一度やならず二度もこのようになった。
であれば……あの王族が受ける枷を増やせばいい。
未だに、反省の色を一向に見せようとしない……愚かな人の子。末代まで呪うことは簡単だが……子はこれ以上増えることはないだろう。
なら、あの者らに還すまでだ。
【…………行け】
我は手を愛し子にかざし……靄を払った。
払った靄は、愛し子から剥がれていくが……予想以上の量だった。それだけ、この子が抱え込ませていたものも……あの王族から受けた仕打ちということ。
どこまで……愚かなことだ。
滅ぼすだけでも生ぬるい。国民は全てとまではいかぬが……あの国を埋めてしまおうか?
それだけでも、生優しいかもしれぬが。
「……み、ら……」
精霊らが我の行動を見ておるようじゃったが、うちひとつが靄の影響を受けておるのを思い出した。そちらも払ってやれば……風の精霊は、すぐに我の前に膝をついた。
「……神よ。ミラは……この愛し子は、助かるのですか!?」
己とて、辛い目に遭ったのに……愛し子を優先するとは。
それほど……この愛し子を、本来の意味で愛おしく思っておるのだろう。
だから、我は強く頷いた。
【案ずるでない。峠は越した……今なら、手を握ってやると良い】
まだ目を開けぬと言うことは……余韻があるかもしれぬが。
風の精霊は、すぐに愛し子の手を掴み……優しく、しかし強く握ってやっていた。
他の精霊らも囲んでやっていたが……それほど、この愛し子はこの子らを救ってやったのだろうな?
「……神よ。我々の力量不足でした」
虹の目と翅を持つ王の称号を与えた精霊は……深く、深く我に腰を折った。
【お主らのせいではない。あの王族とやらが……どこまでも、愚かなだけよ】
「……そうかもしれませんが」
【今頃……苦しみ以上のモノを味わっておるだろう】
さて、あれらはどうなっておるか。
思念で、ひとつ探ることにした。
次回はまた明日〜




