第55話 元聖女空を飛ぶ
お待たせ致しましたー
「……こう、でしょうか?」
「うん。頑張れ頑張れー」
大精霊となり、まず初めに私が成すべきことは。
力を解放するのではなく……空を飛ぶというところからだった。
だけど、今まで人間だった私にいきなり出来ないと思ったのに……。
「ええで、ミラ!」
珀瑛様に片手を握って支えていただいているとは言え……私は、その……きちんと、浮いていたのだ。
ただ、浮きたい飛びたいと思っただけなのに……人間じゃなくなったら出来るということなのだろうか?
「頑張れ〜頑張れ〜」
「その調子じゃ」
「……うん」
他の皆様からも、声援の声をいただけている。ならば……もっと、高く! と思うと、珀瑛様とご一緒に少し高く浮かんだのだ。
「……まあ」
決して、優雅な飛び方とは言えないものだが。
大精霊に生まれ変わり……初めて出来た、魔法とは違うこと。
それを嬉しく思ってしまい、私はさらに上へと飛び上がった!
「お、お? ミラ?」
「すごいです! 私……自分で空へ!」
「……おん。せやで? 自分で空飛んどる」
「はい!」
そして、珀瑛様に支えていただかなくても飛べるか……手を離そうとしたら、何故か珀瑛様には手を強く握られてしまった。
「ま、まだ飛び立てやろ? 落ちたらあかんわ」
「……そう、ですね」
そのお気遣いだけでも……すごく嬉しい。頷けば、珀瑛様は照れたような表情になられ……私の手を引いてもう少し上に飛んだ。
「ミラの魔力が……循環した里の姿やで?」
繋いでいない方の手で珀瑛様があちこちに指を向けると……たしかに、珀瑛様の背にまたがっていた時とは違う……さらに美しい風景があちこちにあった。宝飾のように、いや……それ以上に輝いているように見えた。
これが……私が召喚したあのガラクタゴミを、皆様に食していただいたことで……行き渡った姿?
なんと……美しい光景なのだろうか。
「……私なんかで、お役に立てただなんて」
「『なんか』ちゃう。ミラだから出来たんや」
「……ありがとうございます」
少しだけ、自信を持てたのは……珀瑛様、貴方様のお陰です。
真正面からそのお礼を伝えたかったが……真剣な横顔を見ると、見惚れてしまい……胸の鼓動が高くなり、なかなかうまく言葉に出来ない。
だから、まだ繋いだままの手を……少し強く握ったのだった。
「……ほな。戻ろか」
「はい」
ゆっくりとおりて行くと……龍羽様から、提案があるとおっしゃられた。
「ミラが同胞になったから、近いうちに大精霊全部集めて宴にしよう!」
「賛成〜!」
「良いことじゃ」
「……宴、会」
「食いもんぎょーさん揃えとかななあ?」
皆様、騒いでいらっしゃるようだが……私はと言えば。
「うたげ……とは?」
素直に質問すると……珀瑛様もだが、皆様は思いっきりその場で転げたのだった。
次回はまた明日〜




