第48話 炎の大精霊、観察
お待たせ致しましたー
ほんにのお?
昨日とは違い、我ら大精霊を救ってくれた女子……ミラとやらは、随分と意欲的になっておった。
我らの祝福を得ただけでなく……どうやら、精霊化になろうと身体が変化しているのもある。
銀と虹を掛け合わせたかのような瞳。
今、リョクとハクが取り合いになっていることで……ベールから見えておる金の髪。髪色は元からじゃろうが……どう見ても、聖女の称号を剥奪されたとは思えん。
妾らには、精霊王の龍羽様のように鑑定出来る瞳は持っておらぬ故……よくわからぬ。
じゃが、ミラが妾らには益となる召喚魔法は今も扱えると言うことは……称号はそのままのはず。
なにせ、遠し視で確認したが……ミラの故郷とも言える国では、神からの呪詛が蔓延っておるのじゃからな?
それをこの幼い子に伝えていいものかどうか。
「……ふたりとも。やめて」
妾が考えておると、ずっと横におったスイまで割って入りおった。ミラを抱きかかえ、妾の隣に下ろしたのじゃ。
「ちょっと〜! スイ!?」
「何すんねん!!」
「……ミラが困って、いた」
「おや?」
スイがそう言うので顔を見てやれば……顔が熱を出した赤児のように赤かった。察するに……気に入りのハクからの触れ合いで羞恥に悩まされているのだろう。リョクは妾程ではないが、胸が大きいのでその感触に驚いたのか。
とりあえず、妾は熱を加減しながらミラの身なりを整えてやった。
「あ……りがと、ござ……ます」
「ほっほ。気にせんで良い。驚いたのであろう?」
「……はい」
昨日の印象では、よく泣く女子だとは思ったが。
今日は違うようじゃ。まるで、年相応の女子のよう。それを気づかせてやれたのは……ハクのようじゃ。ちと悔しいが、ハクには感謝せねばな?
我らの恩人を見事癒すことができたのじゃから。
『凰華ー? ちょっとお願い〜』
頭を撫でておると、龍羽様からの念話が届きおった。ミラには気づかれぬよう、妾は応答するのじゃが。
『どうなされた?』
『ハクから、目を貸しても使った感じないからさー? 君にも貸そうと思って』
『目を?』
『ミラを観てあげて? 何か変化ないかなあ? 僕とかの魔力を触れてから』
『あいわかった。今お頼もうします』
『うん』
相槌をすると同時に、目が少し熱くなった。
だが、不快な感じはなく……すぐにミラを鑑定してみると。
【《名前》ミラジェーン=アクエリエス
《歳》十八歳
《性別》女
《称号》渡しの聖女、神の寵愛
《状態》精霊化へ成長途中
《魔法》召喚魔法……精霊などに有効の糧が主
生活魔法
】
やはり、聖女の称号は外れておらなんだ。
あの愚かな人間どもには悪いが……ミラは我ら精霊には必要な存在。
とくれば、神の寵愛の項目を考えると……今頃、呪詛で死ぬのも苦痛以上の事を与えられておるじゃろう。
神は我ら精霊の生みの親とも言える存在。
その神を怒らせただけで済まないのじゃ。
里が枯渇していたのも……おそらく、ミラに好き勝手召喚させていたかつての財宝などに関連しておるじゃろう。でなければ、辻褄が合わん。
『龍羽様。ミラからは聖女の称号は外れておらなんだ。加えて、神からの寵愛も刻まれておるようじゃ』
『だよねー? 僕が自分を鑑定した時に、ミラの召喚してくれたご飯……僕らには最上のモノだって出たし』
『であれば……ミラにはいつ伝えますかの?』
『うーん……僕が言うよ。皆今一緒?』
『ええ。ミラで少々遊んでいましたが』
『楽しそうで何より。じゃ、待ってるよ〜』
その言葉と同時に、目と鑑定結果が消えてしまったが。
妾は皆に龍羽様がお呼びだと告げ、あちらに向かおうと飛ぼうとしたのじゃが。
『ミラはこっちがええやろ!』
ハクが精獣化で姿を変えた虎になると……ミラはゆっくりとそちらに近づき、迷わずハクの首に抱きついたのじゃった。
(おやまあ……?)
昨日の今日じゃが……此奴ら、想い合っておるのか?
次回はまた明日〜




