表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

9.聖女、東の荒れ地を旅する


今日は、東の荒れ地を探索する事にした。

神様から、今回は、特別に3週間の期間を貰った。


王都から、特急馬車で5日の東の荒れ地前に来ている。

荒れ地前10kmに村があり、そこで馬を借りた。


東に向かうには、10km位ある暗闇の森を抜けなければならない。


荒れ地に行く前に、神様から話を聞いて来たのだが、暗闇の森があるが、聖女が行けば自ずと通れるようになるそうだ。


神様が、必ず東の荒れ地の中心に行き、どんな状態か確かめてこいとの事。

中心に行くのは、“中心に行きたい”と願えば勝手にその方向に道が開けるとの事だった。


取り敢えず、馬にパワーチャージを付与し、暗闇の森に向かった。

森に着くと、勝手に森が開き、真っ直ぐな道が出来た。

暗い中、猛スピードで、10km程の森を抜けると、そこは、草木も生えない砂漠だった。砂漠の砂は、木が燃え切った時の灰のようで、触ると風に乗って消えていく。


そこに馬が足を入れると、灰色が白くなり、一直線の道を示した。


「ここ通れって事よね」

誰も居ないが思わず喋ってしまった。


物凄いスピードで馬は走る昼夜問わず丸一日走った。

「パワーチャージって凄いわね。疲れてない?」

馬に聞くと“ひひーん”と雄たけびを上げ、


「まだまだ行けるぜ、ベイビー」


と言っているような気がする。


白い道は、終わりを告げた。そこには、直径10mの大きな石らしきものがあり、卵を立てて下が埋まっている様な形をしたものがある。


灰を被っている石を手で擦ると、

「これは、あの石と同じものに見えるわ。一体何故こんな所に」

入口を探し、“ぺたぺた”外周を触ってみたが入口は見つからなかった。


パワーチャージも付与してみたが、入口は、開かなかった。

代わりになぜか周りが緑の草が繁茂した。


「まさかオシッコ掛けると開くとか?」

誰も見ていないが、さすがにレディーには出来ないと思ったが。またここまで来るのは・・・・。

やっぱり開かなかった。

「やるんじゃなかった」何かを失ったような気になったマリオンだった。


帰る時も白い道が現れ、森を抜けて、近くの村まで帰って来た。

馬を返し、今日はこの村で一泊することにした。

この村の臨時の宿屋として村長宅に泊まった。


「いやー、聖女様が我が家に逗留される事があるとは、末代までの栄誉です。」

そう言って、一部屋タダで泊まれることになった。

ちょっと申し訳ないとも思ったので、


「この村で体の具合の悪い方はおりますか?」


「うちの娘が生まれた時から寝たきりで、いつ死ぬか分からぬでな、通りすがりの名医と名高いお医者様に見て貰ったら、生まれながらの病だで、聖女様でも直せねーと言われました。それでも親としては、診て頂きたいだが、宜しいですかいのう。」


「ええ、構いませんよ。」

娘の寝床へ行くと、透き通るほど真っ白な、血の気が全くない肌をした娘が殆ど虫の息で寝ていた。


「アナライズ」

これは、血の病気ね。血が固まらなくなる病気で心臓も相当弱っているわ。


「エクストラヒール」

体全体を包むように、白い光が10才位の娘に染み込んでいく。

「キュアヒール」

こう言った状態になると、他の病気にかかり易くなって命を落とすのよ。


娘はゆっくり目を覚ました。

起き上がろうとするのを手で制し、


「駄目よ、まだ起きちゃ。もう大丈夫だから栄養を沢山取ればすぐ元気になるわ」


「ありがとうございます。聖女様」

彼女は、直感的に聖女と思った。


「ほんとだか、本当に娘は治っただか、おっ母、おっ母 聖女様が娘を治してくれただ」

そうして、母親も現れ、三人で抱き合って号泣しだした。


他にも病人がいるのなら来て頂ければ治療します。といったら村中から50人くらい集まって来た。

全員を村長宅の前に並ばせ、

「エリア・ハイヒール」


全員を癒し、村長に聞いた。

「この村には、奴隷の方はいないのですか」


「おりますが、さすがに聖女様の前に出すのは拙いと思いまして」


無理やり全員を連れてきてもらった。

「エリア・ハイヒール」


足を引きずる者や、生気の無いものは、いなくなった。


次に寝たきりの家も回った。

ここの奴隷は、掘っ立て小屋だが家があった。顔色も私が住んでいた村とは比べられない程いい。

これは、村長含め村人の奴隷に対する待遇が良い事が伺える。

きっと優しい人だろう。


一件の奴隷の家で寝たきりになっていた中年のご婦人が、

「私など生きていてもいい事などございません。このまま死なせてください。」

人生に絶望しているのだろうな。

私の力では、心までは癒せない。なぜか無力さを感じる。


ただ、

「そうですか、私は生まれた時から奴隷でした。

でも春になれば土筆がにょきにょき出てくるし、秋になれば葉が赤くなる。それだけでも私は幸せでした。

貴方の心は癒せませんが、生きていれば、何か楽しい事が見れるかもしれませんよ」

そう言って彼女を治し宿に戻るのだった。

本当は、奴隷時代は辛かった。13才を過ぎるといつだれかに犯されるかびくびくしていた。でも、それでも生きていたかった。

人間は、健康であれば、楽しい事もある。ご飯を食べるだけでも楽しい事はある。


生きていれば、殆ど辛いことだらけだ。

いつも幸せ何てあり得ない。

辛いときにほんの少しでも楽しい事があるから幸せなんだと思う。


それなのに、自分達だけ贅沢な暮らしをし、自分だけ幸せになることを考え、人の命など虫けらのように扱う奴は、やっぱり許せない。


そう思うマリオンだった。





誤字・脱字、文章の繋ぎがおかしな所を修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ