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8.聖女、遠方を知る


聖女になり1年が過ぎた。


「神様、500年と言われて不思議に思ったのですが、計算すると16代までで480年だと思うのですが、私が聖女になった時、498年なのはなぜですかね。」


「簡単な事だ、30年経ち、盟約に基づき次の聖女を探す訳だが、15才の誕生日が同じではないのでな、13才だったりする場合もある。

また、この石に辿り着くのに数か月掛かる者もいる。

つまり、一人当たり数か月から2年程度遅れるものがいるのだ。

たまたま16回の遅延合計が18年になっただけの事だ」

大聖堂周りの商店街も落ち着いて来た。

殆どは美味しい店だったので、聖女の手形を証明として置いてきた。

近頃は、店を回ると勝手に何かくれるので食費が助かっている。ただ、饅頭や漬物、煎餅などが多く、ちょっと偏りすぎかもしれない。


アクセサリー屋は、聖女が実際に着けたネックレス・イヤリングとしてディスプレイしている。

結構売れているようで、内心ほっとしている。

漬物屋さんには、聖水銀貨1枚にしてあげた。


私の代になり聖水が濃く効き目が良いそうだ。実際これ、私の“オシXコ”と“うXち”が染み出したモノなんだよね。

絶対私は飲まないわ。皆も本当の事を知ったら、飲まないわね。

いや、一部のマニアなら・・・・・。


「神様、国境を見て回りたいんですが、また、2週間におしっこ伸ばしてください」


「ああ、それはいいが、東の荒れ地も見てきて欲しい。今どうなっているか気になっていてな。あそこもこの国の一部だからな」


へー、今まで東の荒れ地は、この国とは関係ない所だと思っていたわ。


商店街に暫く留守が続くと話し、何時もの様にスラムの炊き出しを見学しながら、病人の治療をした。ここでも暫く留守が続くと話しをして王都を旅立った。


まず、南の国境を特急馬車で5日掛けて向かった。(通常馬車だと20日以上かかる)

前回の失敗から大きなクッションを買ってお尻の痛みを軽減した。

ナイス!グッジョブ・マイクッション!


黄金に輝く、広大な小麦畑を猛スピードの馬車は走る。

夕方になると小麦畑は、赤道色に姿を変え、また違った景色になって行く。

永遠に続くかと思われた黄金の絨毯は終焉を迎え、馬車は、国境の町サウスンへと吸い込まれるように入っていった。

サウスンは、国境から10km手前にある。国境は、アップダウンの激しい緩衝地帯になっている。

街の塀は石造りで7mは有り、投石器でも簡単に崩すことは出来ない。


街には、国境警備隊の駐屯地が有り、常時800名が昼夜交代でその任に当たっている。聖騎士団も200名が常駐し、有事の際に活躍する。


敵国の狙いは、不作など一度もなく豊富な食糧をもたらす豊かな大地が欲しいのである。

一度として成功したためしはない。それほど聖騎士団の力は凄まじく一騎当千の騎士が一度戦場を駆ければ、一人で本当に千の首を飛ばすと言う。

ただ、絶対に国境を超える事は無い。


サウスンでは、2年前に戦があった。相手国は10万の兵で攻めて来たが、王都にいる聖騎士団約1000名が2日で国境まで駆け、休むことなく3日で敵を殲滅した。

敵国は、大損害を被り、和睦を申し出て来たので、今は、穏やかな日々を過ごしている。


なぜ、今ここに来たのかと言うと、和睦から多くの商人が行き来するようになり、相手国の本が少量ながら手に入るためである。


お目当ては、他国の歴史書である。500年以上前の書物が殆どない聖女国では、神様が5000年と言っている過去が分からないのだ。


古本屋に立ち寄った。古本屋と言ってもこの世界では、本自体が珍しい物で、活版印刷の無い時代では、本は大変貴重な存在だった。


「すみません。500年以上前の古い歴史書があったら見せて頂けませんか。」

店主が暫く考えて、ボロボロになった薄い一冊の本を持ってきた。

「500年以上前のもんは、これ一冊しかないのじゃ。金貨3枚じゃ」


こんな古びた十数枚しかない本を金貨3枚は、いくら何でも、ぼり過ぎだ。


やっぱりいいと言ったら店主が金貨1枚にして来た。交渉有りと見て結果銀貨5枚で買った。

実際に中を読んで見ると、本は、南の国の物で、ほんの少しだけ、600年前の聖女国の事が書かれていた。


***

北に位置する聖女国は、聖女が実り豊かな大地をもたらしたが、多くの難民が越境する。

皆、疲弊した顔をしながら、この国に奴隷でも良いと懇願する。

***

と二行だけ書かれていた。

吟遊詩人が面白可笑しく書いた風文のようなので、信頼性は低いが、過去に聖女国は存在したことは、分かった。

もし、内容が本当なら内乱があったのか、酷い政治が行われたのか疑ってしまう。

いい加減な本なので深く考察するのは、危険だ。

国で悪い事をしたなら、生きているだけで儲けものと思うかも知れない。


その他にも本屋を回ったが、500年以上前の書物は、南の国の楽器教本や恋物語等で聖女王国について書かれた本はなかった。

金貨10枚ほど散財してしまった。

王都に戻り、オシッコして北の国境に向かった。

特急馬車で6日かかるので帰るのがギリギリだ。


北の国境の15km手前にノースンの町がある。

ここも南と同じ7m以上の土塀に囲まれている。


街に着いた所、今小競り合いの真っ最中だった。


ここに来た理由は、聖騎士団が苦戦しているようで、この一年ずっとこの調子なのだそうだ。

原因は、簡単に解かった。相手は、国境を越えて弓矢を放つと速攻で国境を戻るため、国境を越えられない騎士団は、追っていけないためだ。


国境警備の人に話を聞くと、相手の陣地は、国境の5km先にあり、その数5万はいると言う。

聖騎士隊が隙を見せるか、根負けするか、最も狙っているのは、他の事案で聖騎士団がそちらに向かわざる負えない状況を狙っているのだろうとの事だ。


・・・・・・・王子ジョエイン・・・・・・・・・・・

越境してきた敵兵を追うジョエインだったが、すんでの所で国境を越えられてしまった。

「チ、本当にムカつく奴らだ。我らが越境できないのを知ってギリギリの所で逃げていく。全く切りが無い」


相手は、追ってこない事を知っているので、ゆっくり砦に帰っていく。


そこへ、新米騎士が興奮し、越境して敵を追ってしまった。

「おい、止めろ、力が無くなって殺されるぞ」


相手は、千載一遇のチャンスとばかり、踵を返して新米騎士に襲い掛かった。

その数30騎ほど、新米騎士は一刀両断で一分程で片づけた。


ジョエインは考えた。これは、奴隷聖女がこの街にいるからだ。言い伝えでは、50km位、4,5時間は、越境しても戦えるはず。


「皆の者、今から敵殲滅作戦を行う。我に続け!」


そうして、1000の聖騎士団は、5km先にある相手の砦を蹂躙した。皆殺しである。

敵国の兵は、今までこちらに攻めてくることは皆無だったため、油断も油断で裸で寝ていたり、酒盛りや女を連れ込んでいたりと軍規はどこへ行ったのか状態だった。


3時間後くらいに街に帰って来たジョエインは、

「えい、えい、おー!、えい、えい、おー!」

国境警備隊と騎士団で勝鬨を上げた。


ジョエインは、街の中で聖女を見つけ、

「やっぱり、いたな。 この奴隷が!」

と言って去っていった。


マリオンも、いつもの事なので、気にもせず街を去っていった。




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