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6.聖女王都を出てみる


「おい、聖女よ。なぜここで寝泊まりしている。布団まで持ってきて何をしているのだ」


「え、ここって、一番安全でしょ。トイレ完備だし。綺麗だし、音もしないからよく眠れます。」


「初めてだな、この5千年の間、ここで寝泊まりしたものはいない」


「いつも5千年と言いますが、この国の歴史500年前から全くないですよ。ちょっと不思議だと思うんですが。」


「いや、500年以上前が無いのは、覚えておきたくない歴史でもあるのだろう。我には関係ない話だ。」


「ふーん、それじゃあお願いがあるんですが、おトイレ2週間に伸ばしてくれませんか。ちょっと王都の外も見てきたいもので」


・・・


「まあ、いいが、それよりそのマントはどうしたのだ。確かそれは、初代聖女に渡したマントのはずだが」


「それが不思議なんです。古着屋さんにいったらマントをタダで貰ってしまって、着てみたら凄い力が湧いてくるんです。着心地もいいんですよ。」


「それは、起点のマントと言ってな、最初の聖女が色々出来ないと国が形に成らないからと渡したマントなのだがな。・・・・・やはり寄って来たか」


「へー、凄いマントなんですね。勝手に黒い霧が出たり、光ったりするんです。結構便利ですね。」


「そのマントは、国外に一時的に範囲を広げることも出来る。お前を起点として、力を付与したもの若しくはお前自身が、50km位は国外まで出る事が出来る様になる。ただ、一時的だぞ、半日もすれば、効力を失う。」


「その他にもお前に何か思いがあれば、可能な限りサポートしてくれるはずだ。」


まあ、便利なマントであることは分かった。

私は、王都以外が気になり、周辺地域を回って見る事にした。

この世界では、一般の馬車と急行馬車がある。

普通の馬車で6日の所3日で着く。値段も倍するが、早くて便利だ。

ただ、凄くお尻が痛い。

また、その倍早い特急馬車があるが、行くだけで金貨3枚もする。


王都以外の殆どが農村で、北と南には、国境に砦があり、そちらには、辺境の街がある。

貿易を主にしている街である。


今回は急行馬車で西に3日程の所にある村に来ている。この村は、街に近いぐらい大きい。


村の村長宅を中心に麦畑が広大に実っている。点々と家があり、小麦を突くための水車小屋があり、牧歌的な雰囲気を醸し出している。


村の更に西には、大森林が広がり、南にも大森林とは違う3~5mの低木と鬱蒼とした雑木の森がある。


農民達が酒盛りをしていた。

ここには、奴隷がいないので不思議に思ったが、地域により偏りがあるかも知れない。

8割も税を納めているのに、ここの農民はなぜこんな贅沢が出来るのか不思議だ。

宿屋兼農家の家に一泊だけお願いした。

一日観察したが、重税を苦にすることもなく過ごす農民に疑問を持ちながらも明日は、別の村に移動しようと準備をしていると、“どどど”と地響きがする。

何事かと外を見ると、嫌な奴らがやって来た。


黄金の鎧を纏って颯爽と馬を走らせる美青年が村長宅へ向かっていった。

暫くすると数名の村人と村長が、南の森に入って行く。

何か様子がおかしいので、随分遠くから後ろをついて行って見た。


南の森をほんの5分ほど抜けると、そこは、果樹園やイモ等の畑だった。

畑の周りには、20ほどの掘っ立て小屋があり、真っ黒になった人たちが働いていた。


「これは、登録されていない畑だね。そこに居るのは奴隷に見えるけど、おかしいなー、この村の奴隷は、はやり病で全員死んだはずだけど

ねえ、村長どう言う事かなー」


村長は、だらだらと脂汗を流しながら、

「これは、奴隷たちが勝手に畑を耕しているので、私たちには関係ございません」


「だったら誰が奴隷たちの死亡届を書いたの。後ここで取れたろう果物が村長宅で出て来たのは説明できるの。」


「お見逃し下さい王子様、税金がきつくてつい出来心でやってしまいました。お許しください」

もう誤魔化せないと観念したのか、村長を含め村民たちは土下座し、許しを請うた。


「だって、おかしいでしょ。これ、何年も前から仕込まなきゃ果物育たないでしょ。

そうだな。税制官を呼んで、この畑分は、過去10年間を収める事なら許してあげよう。でなけりゃここで打ち首だね。

理解したかい。」


「はい、許していただいた事。感謝いたします。」

と言って脂汗をだらだらと垂らしながら土下座をする。


「後、この奴隷たちは死んでいるから、殺さないと辻褄が合わなくなるね。

丁度、新騎士に人を切る感覚を覚えさせようと思っていたんだ。

おい、新騎士たちを連れてこい」


そこへ新しく入隊した騎士たちが現れた。

「人切ると興奮して起っちゃうって本当かな。」

「旨く切れないで、血まみれになるらしいぞ」

「そこの奴隷を切れ、一太刀で切らないと脂がついて切れなくなるぞ」

新騎士達が剣に手を掛け抜こうとした時、

「お待ちください。王子様」

「あれ、君はひょっとして奴隷の聖女かい。

磨けば、こんなに綺麗だったんだ。でも奴隷は奴隷、中身は汚い血が流れているんだから僕の前には現れないでくれるかな。

この前は付与式典だから敬意を表したけれど、今は公務で来ているんだ。式典以外は、奴隷が口出しするなよ。誰も見ていないし、先に王都へ帰りな」

そう言って、王子は、目配せをした。


マリオンの後ろから“ガキン”と音がして首の手前で剣が止まった。


王子は、このマントを大聖堂で見たこと事に気づいた。

「それは、初代のマントか! 伯母上が探したが見つからなかった最強のマントをお前の様な下賤の者がなぜ持っている。」


「もし、これ以上、私やあの奴隷の人達に危害を加えようというのなら、貴方たちに付与した力をすべて返して貰いますよ」


「いや、聖女にそんな力は無い筈だ。はったりもいい加減にしろよこの生まれ持っての最低奴隷が!」


「では、今から返して頂きますが宜しいですね。」

そう言って右手を前にゆっくりかざしていく。

少し考え込んだ王子だったが、今 聖騎士の剣を止めた力は、尋常じゃない。もし本当だったら大変な事になる。

「わかった。ちょっと待ってくれ、新騎士達、そこの村長と村人の首を刎ねろ、こいつらが首謀者だ。」


「そんな、先ほどは許して下さったじゃありませんか」


「早くしろ、騎士を辞めさせるぞ」


“ザシュッ”・“ザシュッ”・“ザシュッ”・“ザシュッ”・“ザシュッ”


「副騎士長、残った村人で10年間の税を払わせろと税制官へ通達しろ。後、奴隷は知らん、もう死んでることになっているしな」



「分かりました。奴隷が死んだ場合、平民に戻るとなっています。平民として登録いたします」


「ははは、別に構わないが、奴隷紋は消せないからな。奴隷商では、主でない限り勝手に奴隷登録は消せない。普通の仕事はどちらにせよ出来ないよ」

そこへ、副官が現れ、王子の耳元で囁いた。

「北の国境で不穏な動きがございます。直ぐ移動しないと間に合わなくなります」


分かったと王子は話し、

「聖女よ、30年後必ず今日の屈辱を王として払わせてやる。覚悟しておけ、

皆の者、北の国境まで一気に駆けるぞ。後れを取るな」


そう言って王子達は、馬で北へと駆け出した。


マリオンは、30人程の奴隷の人たちの前に立ち、

「皆さん今日から奴隷ではなくなりました。王子からのお話しの通り、村役場へ行って死亡取り消しをして貰えば、一般市民になります。

もし、ここから離れたければ、王都に来てください。職はあるか分かりませんが、麦粥くらいは、食べれます。ここの食物は、貴方たちが作ったものですから、10日以上の食料を持って王都まで歩いて来てください。

必ず門番に“聖女から仕事を言いつかった”と言えば入れて貰えます。」


「でも俺達には、奴隷紋があってこの地から出る事は出来ねー制約があるだ」


私は、“この人達の奴隷契約を排除して”とマントに一生懸命に念じた。

すると、黒い霧が皆を覆い尽くした。

霧がマントに戻ってくると、奴隷紋は綺麗に無くなっていた。




誤字・脱字、文章の繋ぎがおかしな所を修正しました。

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