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2.新聖女誕生


大聖堂の北側の真後ろには、王城がある。

謁見の間には、一段高いところに、王、王妃が座る玉座がある。しかし、この聖女王国には、王と王妃のもう一段上に聖女の椅子がある。

この国では、一般的なまつりごとは、国王が取り仕切る。だが、重要な国事など国全体に関わる事は、聖女の承認が必要となっている。

しかし、ここ200年以上は、国王が実際の最高権力者であり、聖女は、お飾りの様なもので、式典以外に座っていることは無い。


16代聖女 パトリシアは、45才となり、額の紋章が薄くなって来た。


「姉上、いよいよお役御免ですな。」


「これ、お前は国王なのだから、聖女と呼びなさい。」

そう、パトリシアは、国王の姉なのだ。

ここ、6代は、王家、王の親戚筋などから聖女が誕生している。


「今度の聖女は、わが娘のアイリーンに成りそうですな。13,4才の娘は親戚にはいませんから。」


「確かにアイリーンは、14才だから候補にはなるわね。だけど聖女になるのが必ず王の親戚とは限らないわ。5代前には、子爵家の娘が聖女になった例もあるのよ」


「しかし、その娘とは、5代前の王妃では在りませんか、つまり親戚ですよ。

違うにしろ王家に成るのだから問題無いでしょう

王子も17才だし丁度お似合いのカップルになってもらえばいい」


この国の聖女は、処女でなければならない訳では無い。

結婚しても問題はないし、子供がいてもいい。

そこら辺は、崇める神が、処女の女神ではないので大らかなのだろう。

但し、聖女が心から望めばの話だが・・・


パトリシアは、聖女だが神への祈りは週に一度5分間しかしない。

お祈りを終えるとお付きの護衛を供に神官に目も合わさせず立ち去ってしまう。


石の中に入ってしまうので誰も何をしているのか分からないが、パトリシアが石から出てくると“じわー”っと聖水が出てくる。


いつの間にか長蛇の列が出来上がるが、皆聖水を求める病人たちだ。

神官は、貴族の従者からお金を受け取り、“にやにや”している。

必ず先頭に割り込む貴族の従者がいる。彼らは、若返りの聖水としてコップ一杯づつ持ち帰る。

一般市民は、その残りに肖るのだが、お猪口いっぱい程しか貰えない。それでも病魔に苦しむ民は、最後の望みに縋って来ているのだ。


大聖堂には、常に聖女付き神官がいる。任命は王が行う事になっているが、実態は、勝手にそこに居る神官が名乗っているだけで誰も任命していない。

大聖堂には、司教がいるが、聖女とは全く関係なく、聖女教を唱えている。200年以上前は一緒になって政治にも口を出していたようだが、聖女が王族側になってからは、全く聖女との結びつきが無くなってしまい、式典の時だけ呼ばれる存在となり、民の事など我関せずの守銭奴の集団と化している。


「聖女になったのはいいけど、必ず1週間以内に聖水出さないと頭が割れるような痛みに襲われるのよね。水もガバガバ飲まなきゃならないし、これが一番面倒だったわ」

そう言って聖女は、大聖堂を後にしたのだった。


・・・・・・・・その頃、農家の納屋で・・・・・・・・・・・・・


そこには、15才の少女がいた。名前をマリオンと言う。

彼女は、農家で下働きをする奴隷である。

犯罪奴隷の子で、生まれながらの奴隷である。物心ついた時から畑を耕していた。

12才の時に両親は、過労で倒れ、そのまま息絶えた。


奴隷になる以前の両親は、結構やり手の商人だったが、聖女に売った首飾りが偽物だったとして捕まった。両親は、最後まで売っていないと主張したが受け入れられず、聖女への詐欺行為は、重罪として、財産没収の上、奴隷落ちとなった。

両親は、聖女を恨みながら死んでいった。


彼女が朝起きた時、体中が光っていた。何が何だかわからなかったが、光が王都の方を向いているのが分かった。

マリオンは、

「私は、王都に行かなければならない」


「お前奴隷だぞ。勝手に出て行く事など許す訳ないだろ。

奴隷紋がある以上逆らえないんだから、変な夢など見てないで死ぬまで働け」

しかし、彼女にはもう奴隷紋は無かった。光り輝く彼女に臆したのか、何かの力が働いたのか、奴隷主は、マリオンが出て行くのを立ったまま見送っていた。


マリオンが、王都に着き、門番の前に立った。

「今から、行くところがあります。ここを通して下さい」


すると、門が勝手に開き、大聖堂に光の道が真っ直ぐ光って行った。

門番は、聖女の話は聞いていたが、神々しく光るマリオンに腰を抜かし後ずさった。


マリオンは、その光る道の上を歩いていく、街行く人たちはその光に押し割られる。

その道を大聖堂へ進んで行く。


大聖堂の扉が開き、石の前の鉄柵も開いた。

そこに吸い込まれるようにマリオンは入って行った。


中に入ると、光っていた体が、段々額に集まり、ティアラの様な紋章に変わった。


17代聖女 マリオンの誕生である。


マリオンは、青白く光る方を向いて聞いてみた。


「貴方が神様ですか」


「神様・・・まあどう言おうが構わん。我は、5000年前の少女との盟約に基づき30年毎にこの国を守る力を渡している。

お前が何をしようと自由だ。ただしこの30年間は、死ぬことも出来ぬ。

人を癒し治す力も与えよう。我の力の一部を貸し与える力も授けよう。」


「人を癒し治す力が使える。・・・3年前に使えれば父さん母さんも救えたのに」


「ああ、だが、過去は変えられぬ。」



「ただし、この国から出る事は許さぬし、与えた力は、国の外では使えぬぞ。

それと必ず1週間に一度はここへ来て、そこのトイレに小水以上をしろ。必ず流せよ水洗だから、それが聖水だ」


「肝に銘じておけ、お前は、聖女王国の主だ。決してウエステリアの主ではない。

どうしても困った事があったら、相談に来い。盟約に基づきアドバイスはしてやる。

人の話は聞くなよ。お前が主であって、他は主ではない。

もう一度言うぞ、お前がこの国の主だ。」


ちょっと、変態か?とも思ったが、奴隷であった自分は、皆が見ている前で畑にオシッコ・ウンチをしていた。“臭い”・“汚い”・もっと開いて見せろとか毎日のように泥を投げられていた。

それからすれば、こんな綺麗な所で出来るなら嬉しい限りだ。


しかし、どうやって食べて行こうか考えなければと思うマリオンだった。



誤字・脱字を修正しました。

ちょっとネタバレがあったので修正しました。

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