13.王城を出て (3か月前)
私は、王城を出て大聖堂の石に入り込んだ。
「神様、教えてください。東の荒れ地は、豊かな大地に出来るのですか」
「急にどうした。なぜ東の大地を豊かにするのだ」
「今いる私を支持する者たちを連れて、どこかに新しい国を造りたいと思ったのです。
東の大地は、豊かなら丁度良い場所だと思ったからです」
「それは、本心から言っているのか、ここに残る民がどうなってもいいと言うのか」
「はい、私は決意しました。私に一生懸命従う者達は、ここに居れば皆殺されてしまいます。ここに居たい人はここに残ればいい。」
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「もう一度聞く、聖女よ。それがお前の本心なのだな。曲がることのない絶対的な思いなのだな」
「はい、本心です。どんなに良い行いをしても報われない国など無くなってしまえばいい」
「判った。我でもそのような膨大なエネルギーは、持ち合わせていない。
東の大地に新しい国を造るには、代償となる膨大なエネルギーが必要だ。
西の大地のエネルギーを使うがいいか、西は荒野になるがいいか、住む者のエネルギーも我が貰っていいか」
「はい、王に言われました。“誰を生かすか、誰を殺すか”が大事だと」
「相分かった。聖女との盟約に基づき、西の大地のエネルギーを東の大地に移す
また、盟約の代償として西に住む者の全ても我が貰う。
これで、誓うか」
「誓います」
一瞬の迷いもなくマリオンは答えた。
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黒い石は、一瞬眩く光り
「今から3か月間準備をせよ。我も準備をするが、既にエネルギーの移動は始まっている。
少しづつ、東の大地は力を取り戻し、西の大地は痩せていく。
おそらく、西の者が異変に気付くのは、5~6か月後ぐらいだ。
6か月後、移動遅れになると助けられん。必ず最後は確認しろ。
この1カ月間で、野菜、牛馬、穀物などの種を準備し、1か月後、草木が生え出したらばら蒔いていけ。
移動には、3か月後から2か月半を目標に移動する事だ。
お前の歌には聖女の力が籠っている。
3か月後、思いを歌に乗せ、皆を導くのだ。
農作業道具や鍋鎌など必ず持ってくる様に伝えろよ。生活できないからな。
家は、周りの木を伐採しろ、早めに木こりと大工の信者を行かせろ。
我も相当のエネルギーを使う。重要な話以外は、控えよ。
賽は投げられた。もう後戻りはできぬ」
司祭・神官に事情を話した。
小麦や野菜の種、果物など仕入れるのにそのまま大量に買うと怪しまれるので、スラムの者に十数組に分け、他国の商人を装って貰った。
特に信者の商家が手伝い、それらしくなるよう装ったが、やはりスラム育ちだとどうしても言葉遣いが怪しいので、商家の者を仲介の業者として同行して貰った。
小麦倉庫の3割を相場の1.3倍で買い付け、果物の種などは、国の管理はいい加減なので、腐って廃棄する果物を安く買いたたいた。
野菜の種などは、農家から買い付けた。
荷馬車や牛馬も大量に買い付け、穀物などを運んだ。
信者の木こりと大工は、荷馬車を買い、鋸、ノミ、釘なども大量に買い、半年分の食料を持たせ、直接向かって貰った。
聖女教の金庫の中は、殆ど使い果たした。
余り一度に動くとバレるので、朝、昼、晩と数台ずつ南と北に迂回して走らせた。
私は、東の森で待ち構え、来たものにパワーチャージを掛けた。
東の荒れた大地は、少しずつ灰色から土の茶色に変わって来た。
司教・神官は、草が生え始めると種をまき始める。朝少々の雨が降る。
芽はにょきにょきと育っていった。
木こりが一撃で大木を倒す。運搬人は、大木を担いで山を降りる。
雨風が凌げるだけの長屋が沢山出来て行った。
3カ月間必死になって準備した。皆で準備した。
後は、歌うだけ、皆に希望を渡すだけ。
・・・・・・・王国側・・・・・・・・・・・・
「宰相、穀物が爆発的に売れています。通常時の1.3倍の値段で売れてます。
今まで古古小麦で買い叩かれて半値以下で売っていたのにとんでもない儲けが出ています。
果物など腐ったものまで買っていきますよ」
「しかし、こんな量誰が買うんだろうか」
「荷馬車を追跡すると北と南に半々ですね。ひょっとしたら両国とも穀物全般の出来が悪いのかも知れませんね。
それで今から買い付ける商人が出て来たのかも」
「だが、腐った果物など買う意味があるのか、馬でも食わんぞ」
「買い付けた商人が言うには、たまたま種があったので、ついでに買った。更地になってしまって種から育てると言っておりました。つまりこれは、大火事か、他国との戦争で焼かれたのではと推察されます。そこで、穀物を買うついでに、種から育てようと思ったのではないですかね。」
「うーん、その理由はちょっと考えにくい気もするが、値段も安いしそんなに気にすることもないだろう」
「その他にも、鍋、釜、釘や雑貨全般売れているようで、結構な税収が見込めるそうです」
これは、一生のうちに1回あるかないかの大型好景気だ。誰が見ても売り切らないと後悔する。とある大臣がうちの古女房も買ってくれないか商談する姿を見て、笑いが止まらない宰相だった。
誤字・脱字、文章の繋ぎがおかしな所を修正しました。
最後が尻切れトンボになっていたので数行付け足しました。申し訳ございません。




