10.異変
マリオンは、多くの村を周った。時間の許す限り、ただひたすら病を治し、皆を癒した。奴隷でも誰でも平等に接するマリオンを嫌うものもいる。
治療を受けたが治らないとか、病気が酷くなったとか、法外なお金を要求されたとか、人殺しだとか、誰とでも寝る売太とか、何処からともなく、ありもしない事を吹聴するものは多かった。
それでも、多くの者を癒し、治す。を繰り返した。
マリオンは、二十歳になっていた。
いつの間にかありもしない事を吹聴していたものはいなくなった。
マリオンは、村を周ると必ず歌う。
――人はいつも苦しい。人はいつも悩む。人はいつも失敗する。
でも、人はそれでも努力する。人はそれでも挑戦する。人はそれでも正しい事をする。
だから、ひとはきっとやる気になる。人はきっと成功する。ひとはきっと楽しい。
そう、人は、みんな私の使徒、きっとみんな幸せになる。
陽が必ず上る様に、優しい子には優しい風が吹くように、頑張る者には熱意が届くように、正しき事を行う者には、正義の風が吹くように、必ず私が応援する。必ず私が成功させる。さあ、あなたの未来を切り開きなさい。誰にでも夢見る世界はあるのだから―――
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いつの間にか、国に逆らうものが出て来た。
「収穫の8割取られると生きていけねーんで、作付けを半分にします。
出稼ぎに隣の国で働きます」
これによって食べる量が賄えず餓死しそうだが、一人残して父親、息子、娘が外国で働くと、外国で働いたお金で飯を食い、繁忙期だけ帰って来れば、収穫は出来る。
今まで2割で4人分で食べていたが、1割で1人分だったら倍食べられることになる。
外国で食べる以上に少しでも稼げれば、それは家族の蓄えになる。
国境紛争が無くなり、国境に近い程こういった農家が増えた。
当然、国の食物の貯蔵量は減り続けた。
国も黙ってはいない。
人頭割して作付面積を決めさせた。そこには奴隷も含まれたため、減らすために奴隷は解放されていった。
今度は、農家も黙ってはいない。作付面積以上作るか別の作物を青地として土地を拡大し作り始めた。
これにより副収入が出来るようになった。
小麦などの主食は、若干持ち直したが、果物やジャガイモなどの税収は少しづつ減り続けた。
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何時もの様に街を歩いていると、スラムの方から黒い煙が上がっていた。
嫌な予感が頭を過った。
駆けつけてみると、そこには、死屍累々の世界が広がっていた。
息が未だある者に近寄ると、
「どうしたの、何があったの、誰がこんなことしたの」
「エリア・ハイヒール」
少しでも助かる様にヒールを広範囲に放った。
「エリア・ハイヒール」
もう一度ヒールを広範囲に放った。
そこに王子が現れた。
「おやおや、聖女さん困るな―、そんなことされちゃ。
こいつらは、罪人で死罪になったんだ。治されちゃったら、又、殺さなきゃならない」
「貴方は一体何を言っているの。この人達は、ここで施しを受けているだけなのに一体何の罪があると言うの」
「こいつらは、国の小麦を盗んだのさ、黒い虫のいる小麦のはずが、綺麗な小麦になっているのは、小麦をどこかから盗んだのか、最初から虫のいない小麦を出させたのか二つに一つどちらにせよ死罪と言う事なのさ。解かったかい奴隷聖女さん」
「今すぐ殺せ!」
マリオンは、血が垂れるほど唇をかみしめた。
「待ちなさい。もしこれ以上罪を犯すなら只では済ませませんよ」
「はは、これは、国王が決めたことなんだ。聖女であろうと覆すことは出来ないよ」
「早く殺せ!」
「私は、今、只では済まさないと言いました。剣を抜いたものは、覚悟があるのですね。王子貴方もですよ。」
聖騎士全員を睨み、黒い霧がマリオンから噴き出し5m位の大きな渦を巻いている。
「く、何するか分からないが、いいかいこれは、国が決めたことだ。それに逆らう事は、国家反逆罪だという事だと解ってるよね。この腐れ聖女」
「いいから、死にたくないなら、ここから立ち去りなさい。
もう一度言いますよ。生きていたいなら、ここから立ち去れ糞王子。
王にはこの後会いに行くと伝えなさい。」
「く、調子に乗りやがって、只で済むと思うなよ。
皆、城に帰るぞ」
「は!」
颯爽とジョエインは、帰っていった。
ただひたすら、マリオンは治療を行った。2,30人は何とか一命は取り留めた。
どうして、どうしてこんな事になったの。
「何が悪いと言うのよーー」
マリオンは、泣き叫び拳を握り締めた。
難を逃れたスラムの人達が数百人程出て来た。
気を取り直し、難を逃れたスラムの人達と近くの住民たちに、なんとか生き残った人たちの看護と死んだ人たちの埋葬をお願いした。商店の人達や今まで関わりのある人達が集まり手伝ってくれた。
「聖女様、いつも私ら下々の者は、搾取されるだけなんだよ。」
「聖女様、危険な事は、しないでおくれよ。聖女様だけが私らの希望なんだ」
「聖女様、いつもの事だから我慢するから、頼むから危ない事はしないでおくれ。聖女様に何かあったら私ら生きていけないよ。」
皆の言葉を振り切り、徐に立ち上がったマリオンは、ゆらゆらと王城へ向かうのであった。
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