1.プロローグ
聖女王国ウエステリアは、500年以上続く由緒ある聖女が起こした国である。
南北には、強国がいつでも攻め込もうと隙を伺っている。小競り合いは数え切れず、5百年もの間、均衡を保っている。
西には、魔物が棲む大森林が,人間の侵入を阻んでいる。数千キロにも及ぶ森には、国境が存在しない。
東には、人も魔物も棲まない,草木一本生えない,荒涼とした大地が広がっている。その大きさは、ウエステリアに匹敵する大きさだった。
ウエステリアは、周りの国から見れば、本当に小さな小さな小国である。
それでも、大国と互角に渡り合えるのは、聖女の力が大きく関係していると故事には詠われている。
ウエステリア首都には、街の中心に大聖堂がある。大聖堂の大きさは、縦横50m四方の高さ30m程の塔になっている。塔の最上には、大きな鐘がある。それは、街に時を知らせるか、緊急を知らせる鐘なのだが、殆ど時の鐘である。
鐘の真下から、15m奥に、直径10mの大きな石らしきものがあり、卵を立てて下が埋まっている様な形をしたものがある。
入口は無いのだが、周りは鋼鉄の柵で覆われ、誰も触れない様になっている。
この石に聖女以外が触ると干からびて死んでしまうし、槍を投げると投げたものに黒い霧が追っていき必ず干からびて死ぬ。
一か所だけ柵の扉を開けると触れるようになるのだが、誰も開けるものはいない。
その石からは、染み出すように水が滲み出る。滲み出た聖水は一か所に集まる様に樋があり石桶に溜まるようになっている。
この聖水は、飲めば万病に効き、飲み続ければ10才は若返ると言われている。
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――ー聖女は、突然やって来る。---
聖女誕生には、人智を超えた不思議な力が関与するからだ。
まず、15才から45才の30年間と聖女の任期は決まっている。
約30年であって、2,3年ずれる事はあるが、概ね30年である。
聖女には必ずティアラの様な紋章が額に現れる。
先ず、聖女は45才位になると、額の紋章が薄くなり、次の世代に代わると消滅する。
今代聖女の額の紋章が薄くなり始めると、その聖女の能力は衰え始める。
すると、全身が薄く光り出す14~15才の少女が現れる。
光は、常に大聖堂に向かう方に広がる。そのまま導かれる様に大聖堂の卵型の石に吸い込まれるように入っていく。
すると、今代の聖女の紋章は消え、額に紋章がくっきりと浮かび上がった新しい聖女が誕生する。
聖女は、王族であろうが、平民であろうが誰に降臨するかは、分からない。国民であれば誰がなるかは、その時になって初めてわかる。
それがたとえ、奴隷であろうが。
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