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その杖は空には遠いけど

「【ストレングス】【神母の加護】…… 行ってらっしゃい」


 離れて戦う人を支援するスキル。初めて一緒に戦ったときに芽生えた物だけど、最初から分かっていたみたい。


 このゲームでの初フレは鳥人の男の子だった。チュートリアルでの敵キャラ、《草狼》にボコボコにされて少し沈みながら着いた街。

 そこで声をかけられたのが切っ掛けだった。


 同じ初心者の様相をしている彼は『冒険を始める前にした方がいいことってありますか?』って、同じ初心者の私に聞いてきた。


 チュートリアルキャラのにゃん太は冒険者ギルドに行けって言ってたけど……

 彼は言われていないのだろうか? それとも悪質な出会い厨?

 てか分かんないなら取り敢えず外出てモンスターと戦って死ねばいいのに。

 取り敢えず無難に返してみる。


「あ、あぁ私!? えっと…私も始めたばっかりなの。でも確かチュートリアル担当の猫ちゃんが言ってなかった?」

「猫ちゃん? 僕のところは犬だったよ。何種類かいるのかなぁ。あっ、ごめん。ダッキー…その子は多分言ってくれなかったと思う」


 チュートリアルキャラは何体か居るらしい。まぁそれなら分からないというのも嘘じゃない、のかな……?


「そうなの?えっと、ニャン太…あ、私の担当ね! は、冒険者ギルドに行って登録が必要だって言ってたかな」

「冒険者ギルドね。わかったよ、ありがとう! 」


 彼はお礼を言うと去って行こうとした。フレンド交換しようとも言ってこなかったし、出会い厨じゃないのかな?

 だから私は彼を呼び止めた。

 自分もギルドに行かなきゃだったし、私には戦闘ができない。だから弓を持っていて、そしてそれなりに優しそうな彼は好都合。


 それからギルドに行って、一緒にゴブリンと戦って。


 ゴブリンをコインで釣るなんて、斬新で面白かった。戦ってみたら想像の数倍強かった。

 一緒に遊んでるとなんだか楽しくなってきて、素材もガッポガポ。


 あっという間に時間が経って、狩りが終わってレベルが上がって。

 そして塾の時間になった。

 彼はギルマスから依頼を受けていたから…… まだやるみたい。終わったらまた戻ってこよっと。


 今日授業が無くって、進級に関する説明だけだった。

 早めに帰って、ご飯を食べる。

 夕飯は炊き込みご飯。大好きなものだから味わってたらちょっと時間が経っちゃって。


 部屋に戻って黄色の本を開く。


『おかえりなさい』


 最初に来た時とは違う、少しすえた匂いが鼻に入る。

 目を開けて、見えたのはちょっと離れてただけなのに懐かしい建物と……


「あ、ライトやっほ~!」


 ここ数時間見慣れたパーティメンバー……


 うん? 見慣れた……? いやなんか色変わっとる!?

 彼はいつも驚きを連れてくる。


 それからまたレベリングに行って、一緒にプリン食べて私の行きたかった装備屋に行って……

 そこで私が怪我しちゃったとき、優しくしてくれた。

 そこで私が彫刻刀で襲われたとき、守ってくれた。

 短い時間に色んなものが詰まってて、装備作ってる間はずっと彼のことを考えちゃって。


 一生懸命作ったものを嬉しそうに受け取ってくれたのが嬉しかった。

 人混みで助けてくれたのが頼もしかった。

 手をほどかれて、少し寂しかった。

 一緒に飛べて楽しかった。

 ボロボロになってて、本当に心配した。

 あーあ。なんだか私の方が出会い厨みたい。


 彼は大空を鴉に向かって飛んで行く。私からどんどん離れていく。

 守るって行ったのに、危ないところに言っちゃうの? そんな事は言わないけど。


『今度こそ守る』


 彼はよくそんなことを悲しげに言う。何故だかわからないけど、私も守られるだけじゃ嫌だから。


 離れていても、君は私が守るから。


「必殺:蒼穹覆う盾(キミニトドケ)


 この杖は空へは届かない。

 

――――でもこの小さな気持ちは、空へと溶けるはずだから。

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