野戦で輝け装狼よ
「くっそ結構硬いな……」
「リーヒャ先輩は攻めすぎないで! モミジは前に出ろ!」
「わかっている! 【骨折り】!」
「ケーマさん、スタミナ回復飛ばします!【スタミナン】」
「あり! 【一閃】っと。 よし! がっつり削れた!」
俺とリーヒャ先輩は、レイドに近接チームとして参加。
その場で俺らと同じく人数が少なく、そして実力があった鬼人とエルフの二人組とパーティーを組んだ。
そこまでは良かったんだが……
『ケーマさんは最強っすから…… 俺ら有象無象は集まって戦うので、そっちは四人パーティーで闘って下さい!』
へ? ってな。まぁ普通の子氷烏なら勝てることは勝てる。でもその言い種は酷いでせう。
それに俺は死んだら終わりのリーヒャ先輩を背負ってる。積極的には戦えない。
なのに、なのにだ!
「あいつら、俺らに上位種なすり付けやがった……」
鑑定の結果相手の種族は《氷烏》。
おっかしいなぁ。子が付いてないですね~
デカさからして、2mはあるだろう。
ギンナのサポートのお陰で大崩れはしていないが、中々にキツイ。
せめてあともう一人……
そう天に願った時、それは空から降ってきた。
カァァァ!!!
「いや、はは…… もう一体……」
俺たちの前に舞い降りたのは周囲の物より一回り大きい巨大な烏。
「いやあなた達は一人でいいからぁ!!!」
ギンナの絶叫と同時に、新たに出現した氷烏より氷の礫が発せられる。
「ちっ、【ソードガード】!」
リーヒャ先輩の前に大剣を突き立てスキルを発動。ギンナはモミジが守り、それぞれのダメージは微々たるもので抑えられた。
――――が
「ぐはっ!!!」
「ケーマ! ケーマ!」
それは致命的な隙に。
元から居た方の翼が振るわれ、あっと言う間に俺の景色がぶっ飛んだ。リーヒャ先輩の声が遠く感じる。
HPも一気に4割が削られてしまった。。
そして間髪入れずに飛来したもう片方が翼を振り上げ――――
「カァァァ!?」
何かに気付いて動きを止めた。
「うん……?」
何故? それは2度目の空からの来襲者。
その色は蒼い。確かに蒼い。
でも目の前の物よりずっと優しい蒼さで……
ラヒ○ュタは本当にあったんだ!
一人の鳥人が、戦場の中心に降り立った。
敵も味方もフリーズする。一番最初に動けたのは――――
俺だった。
「楽しそうなことしてるじゃん! ついでに俺らも助けておくれ!!!」
俺が知る限り最強のプレイヤー。
『上位種を擦り付けられるならお前だろ!』なプレイヤー。
「狼人よ! そんな変t…… じゃなかったライトに頼るな! 我ら4人で十分だ!」
「姐さん…… 運営さんからの言葉忘れてないですよね?」
「あっ…… あぁ……」
モミジはあいつと何か確執でもあるんだろうか?
確かに決闘の感じとか陰湿だったけど……
あー、ライトも面倒くさそうな顔しちゃってるよ。
しかし、一瞬で顔が切り替わる。
「リーヒャさんのいる所に上位種、それも二体ですか……? モミジ姐さんさん、あなた馬鹿なんですか?」
「私の責任じゃない! あぁ、今のも…… そのさっきのも悪かった。謝る! ピンチなんだ。助太刀してくれ!」
やっぱ結構なことあっただろう……
でも俺らに時間はない。モミジが謝ったのはいい判断だ。
悠長なことをしているうちに、硬直から脱した氷烏は再び動き始める。
「ヤッベ! タゲはまだ俺のままかよ……!」
「【黒縛鎖】っと。んじゃあ僕がそっちを受け持ちます。もう一体は…… ホノカ、あっちを手伝ってくれる?」
「えっ…… 私ライトの力に…… ううん! わかった! 頑張るね!」
「うん。すぐにこっちは熨すから…… 生きて待っててね。」
「うん! ライトこそ! あっ、【神母の祝福】【ストレングス】っと。離れてても応援するしてるから!」
スキルの宣誓と共にライトの首から黒い鎖が伸び、俺に向かってきた烏の動きを止める。
うーん、やっぱ相当強いな?
それを見たモミジはなんか様子がおかしいが…… 今は構っている暇などない。
ライトは共に降りてきた少女となんかラブコメしてる。今はそんな暇はない、と言いたい所だが、戦力が増えるならありがたい!
「俺は剣士のケーマ! あんたの名前は!」
「ホノカ! 生産職! サブジョブはバッファー!」
ライトから離れて、赤髪の女子と並走しながら自己紹介をしていく。
生産職って言われた時はビックリしたが、支援職か。
後ろではライトが笑いながら闘ってる。
こわ……
なんか爆発音とか聞こえてくるし。
「っと。【ストレングス】!」
「戻ったぞ! 【幻蝶斬り】! はぁぁぁぁ!」
大分飛ばされていたようで、合流までまぁまぁ時間がかかってしまった。
が、距離が詰まればこっちの間合い。
3人相手に攻勢を強める相手の隙に向かいでっかい一撃をお見舞いする。
ホノカもライトと同じく、鑑定してもレベルが見えない―――
格上だ。
そんな高倍率のバフが乗った、強装備の固有スキルがクリティカルヒット。
バキィ!
翼に直撃した一撃はソレをひん曲げ……
ポリゴンが爆発。
烏は地面に落ち、全身から微かにポリゴンが流れ出す。
「【剣劇瞬歩】! ケーマ、いい隙だ! 」
「【剛旋】あの変態、あんな強かったのか!? さっきはヒーヒー言って逃げてただけなのに……」
できた隙を、見逃さずにリーヒャ先輩が溜めの長いスキルを発動。
一瞬で移動し、烏の片目に細剣をブッ刺し、それに追従してモミジも金棒をブン回して俺が作った傷を更に広げた。
「ちょっと! 軽く揉めただけって聞いてた話と違うんだけど! ライトに何したの!」
「はん? 変態を凝らしめただけだが?」
「モミジ姐さん!」
余裕が出てきたのか、女性同士のハナシアイが行われているが、関わらぬが吉。
「はぁ! はっ!」
「ふっ、はっ!」
堕ちているうちに少しでもという目論見で、先輩と一緒に通常攻撃で攻めていく……
が、すぐに起き上がり翼で振り払われてしまう。
「ぐふっ!」
「リーヒャ先輩!?」
ヤバいヤバい! 先輩は死なせられない!
守らなきゃ。俺が、前に出なきゃ!
「【必殺(仮):装狼】! 」
無我夢中で、何か逆転の一手を探して、眼前に出現したウィンドウの文言をなぞる。
するといつも以上に強く輝くスキルの光が俺を包み……
痛みが全身に走る。
「ウーーー、アオーーーン!!」
無意識に口から咆哮が上がった。
「ケーマ!?」
周囲の声が濁って聞こえる。
(あぁ、そういう事か)
これまでのゲーム経験が俺を冷静にさせる。
おそらくこれは超必。
視界に剣が無いこと、スキル名から考えて装備との同化と獣化が効果。
(仮)と視界の隅の78,7,6……と減少していく数字、全身の痛みからこれは時間制限付き+自傷付
き。
止め方はわからない。
だから今しなければならないことは……
(俺が死ぬ前にこいつを殺す!)
「アオォォォン!!!」
「オリジナルの暴発!? ケーマ!」
「なんだなんだ攻撃か? 私もいっくぞー!」
「【ストレングス】っと。みんな、ここで決めよう!」
「リーヒャさんは安静にして! 【ヒール】!」
後ろから声が聞こえる。
俺は四足で駆ける
駆けて駆けて……
飛ぶ!
首筋に噛みつき、赤い爪で引っ掻く。
「ウオッ!」
烏がブンブン身体を振り、ちょっとバランスを崩しかける。
が、口に力を込めて更に深くに牙を突き立て、落下を防ぐ。
首筋を削り、削り……
「うおっ! 危ないな!」
ギンナに氷の礫が飛ぶが、先ほどより明らかに威力が弱い。
金棒の一振りであっという間に払われてしまった。
それを尻目に見ながら削り削り……
ブチッ!
「カァァァァァッッ!」
―――――何かが千切れる、音がした。
ポリゴンが溢れて顔面にかかる。
そして足場もポリゴンと消え……
残り5秒。
《レベルがアップしました!》
脳内にファンファーレが響く。
(勝っ……た……)
「アオォォォン!!」
勝利の雄叫びを上げる。
身体が端から崩れていく。
視線の先に元気になった先輩の姿が見えて……
「ケーマ! ケーマ!!!」
俺は満足して逝った。
『面白かった!』『続きが気になる!』『面白くなかった!』という人は、是非ブクマ、評価、感想、レビュー等々お待ちしております! きっと次の話がちょっと早めに投稿されます。
本日分です。明日はライト視点。




