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異世界トリップ  作者: 神尾瀬 紫
1/1

何度生まれ変わっても絶対赦さない─1─

こんにちは

別ジャンルではじめまして

神尾瀬紫と申します


自分が何を書きたいのか探っていたら出来た物語です

ぜひお楽しみください





 

 ─────────────────・・・・・・


 ふわ、ふわと。

 意識が揺らめき、どこかへ落ちていく。

 いや、もしかしたら上っているのかもしれない。

 そんな不安定な感覚の中、暗闇で探す。

 光の射す場所を。



         ─────◆◆◆◆◆─────



 長いのか短いのかわからない苦しみが突然終わり、解放された。

 思わず大きく息を吸い、たまらない開放感と何故かわからない寂寥感で大きな声を上げる。

 自分にまとわりついていた何かが消えた。とても気持ちよかったのに。

 すぐに何かに包み込まれた。が、とても気持ち悪い。ガサガサする。

 大きく手足を伸ばすと空を切ってバランスを崩す。でもグラと揺れた瞬間何かに支えられて落ちる気はしない。

 ・・・落ちる。落ちるか。

 そういえば随分長い間『落ちる』という感覚を忘れていた。

 『俺』の最期は『落ちる』だったのに。

 今まで聞こえていた、何か膜がかかったような音ではない、ザワザワと温かい音が心地いい。

 その時一際激しい音がした。

 それがどんな音なのか少し考えて、何かを落とした音だと感じた。

 金属の、そこそこ大きい器状のものだ。それが起こす音の余韻をかき消す様に、大きな『声』が上がった。

 そこで初めて、今まで聞こえていたザワザワとした音が人の声だったと理解する。

 目は見えない。でも聞こえる。

 何を言っているのかわからないけれど突然大きくなったそれらの声には、今までの穏やかさはなく、あまり良くないモノが含まれていると感じた。

 不安。

 恐怖。

 ・・・絶望?

 この声には覚えがある。『私』はよく知っている。

 悲鳴。

 嘆き。

 負の感情が高まっている。

 なぜ?

 そしてそれはすぐに殺意に変わった。

 何を言っているのか、言葉は理解できない。

 しかし意志だけは伝わってくる。

 殺さなければいけない。

 これを殺さなければならない。

 生かしておくわけにはいかない。

 その意志が向いているのは、

 ・・・自分。

 そうだ。この意思は自分を殺そうとしている。

 せっかく『産まれた』自分を。

 産まれたことを祝福していた意思が、殺意へと変わった。

 硬いものの上に寝かされた。

 もはや温かい空気はまったくない。

 体は動かない。自分を縛るように包む何かから逃げ出せない。

 声は出る。必死に声を上げる。

 『殺さないでくれ!何かの間違いじゃないのか!まだ何もしていないのに!』

 その言葉は届かない。自分は喋れない。泣き声しか上げられない。

 悔しい。悔しい。悔しい。

 産まれたばかりでなぜ殺されなければならないのか。

 ならばなぜ産んだ。

 産まれた時には喜んでいただろう。

 言葉にならない声を上げる。

 殺意が最高潮になる。

 逃げられない。

 自分は体のすべての力を振り絞って自分の身を守ろうとした。

 守った。


 ・・・

 気がついた時には、物音一つしなかった。

 殺意も悪意も、何もなくなっていた。

 遠くで何かの動物の鳴き声らしきものは聞こえる。でもそれだけだ。

 何も聞こえない。

 しかしこれは自分の死ではない。

 何度も死んでいるからわかる。自分は生きている。

 そして何度も産まれているからわかる。

 自分は今産まれたばかりの何も出来ない赤ん坊だ。

 殺意が無くなったことには安心した。

 でも一人では何も出来ないということは、死ぬのも時間の問題だ。

 『俺』だった頃、テレビで見た赤ん坊の虐待死。

 親に見捨てられて死ぬのはどれほど怖かったろうと、その時は想像しかできなかった。

 今無力感に苛まれて同じ境遇になって、泣く以外どうすることも出来ない。

 悔しい。『俺』が絶望の中落ちて、『私』がその復讐を果たしたと思ったのに。

 今度は何も出来ないまま死んでいくのか。

 何も音がしない。

 一人取り残された自分は力の限り叫んだ。



 どれほど経ったかわからない。

 空腹で力が入らず声も出せない。

 寒い。とにかく寒い。

 その時、近くでガラと何かを崩す音がした。

 咄嗟に野生動物を想像する。

 自分の『記憶』にある、肉食の野生動物。あるいは魔物。モンスター。

 しかし穏やかな空気を纏ったそれは、驚いた声を上げて近付いてきた。

 『*****。・・・あ***う?』

 男の声がつぶやきながら近づくのを感じる。

 悪意は感じない。むしろ優しい気配。

 自分は男に向かって両手を伸ばす。

 その自分を抱き上げる男。

 『う************い*****。』

 周りを見回し呟く。

 『*う**い**、****い***い。お*え******************。***い***。**い*****。』

 男がよくわからない言葉を喋っているが、もう空腹と疲れで意識を保っていられない。

 温かい腕に抱かれて自分は深い眠りについた。 


 ※


 森の中を歩いていた。

 あてもなく、ただ気の向くままに。

 いや、あてはある。

 この先には小さな村があったはずだ。ただ、あてにならない地図をあてにすることもできず、とりあえず獣道を行く。

 伝う汗を拭いふと顔を上げたとき───

 ドン!と凄まじい音がした。

 飛び立つ野鳥や魔鳥の羽音、鳴き声。野獣や魔獣が駆ける音、鳴き声。

 静かだった森の中が騒然となる。

 かすかに足の裏に伝わる振動。

 その残り香を感じ取るために意識を集中する。

 ほとばしった魔力の名残りは、すぐに捕まえられた。

 男は興奮している森の中の動物たちを刺激しないように、それでも急いでその残滓を辿った。


 どれくらい歩いたのか。

 細かった魔力の残滓が少しずつ強くなる。強くなるが、まだそれは見えない。

 あんな遠くにいた男にまで魔力を感じさせるなど、どれほどの貯蔵量なのか。

 ようやく森が開けた。

 そして男は絶句する。

 とても、とても大きな爆発があったのだと、瞬時に判断できるほどそこは大きく抉れていた。

 村だったであろう痕跡は全壊している家屋の残骸。

 その、そこかしこに村人らしき遺体が転がっている。

 ひと目見て、遺体だと理解できる惨状が見渡す限り広がっていた。

 一度足がすくんだ男は、意を決して村だったはずの土地に踏み込む。

 中に行くほど衝撃が大きかったことを物語っている。

 多分爆心地はこの土地の中心辺りだ。

 瓦礫を乗り越え、次第に人の形を取れなくなっている遺体を避け、男は歩いた。

 そこに、見つけた。

 もう肉片も残ってないような、瓦礫さえも吹き飛ばされてほとんどないようなところに、机がポツンと残っている。

 足の下の建物の欠片がガラッと音を立てた。

 机の上には布の塊。

 近づいてみる。

 小さな手が見えた。

 震えている。小さな拳が震えている。

「なんだこれ。・・・赤ん坊?」

 慌てて駆け寄る。

 そうだ、この魔力、この赤ん坊のものだ。

 凄まじい。

 すると赤ん坊が震える腕をこちらに伸ばしてきた。

 生まれたばかりの小さな命。本来ならば祝福されて愛情を注がれるはずの命。

 その命が望まれず消されてしまう『都合』がある。

 小さな塊を抱き上げる。こんなに軽い。頼りない生き物が、自分を守るために戦った。

「生まれたばっかでこれはすごい力だな。」

 まだ温かい。生きている。

 改めて周囲を見渡し、こんなに小さな存在が放った魔力の大きさに目が眩む。

 きっとこの場にはこの子供の母親がいたのだろう。そして遠くないところに父親がいたのだろう。もしかしたら兄弟もいたかもしれない。

 それでも・・・。

「しょうがないよな、誰のせいでもない。お前を見つけることが出来たのは良かったよ。歓迎するよ。新入り魔術士。」

 小さく震える体を包んでる布ごと懐にしまい、真っ赤に染まった誕生の地をあとにした。


 ※


 あれからどれくらい経ったのだろう。

 とても温かいものに包まれていることに気づいた。

 うまく動かない首と腕を動かそうともがく。足はガッチリ抑えられているから無理だ。

 するとすぐ間近から声が聞こえた。

『お。お****?*ぁ******?』

 鼻先にほのかな甘い香り。

 口元に濡れた感触が触れる。

 そのままなんの抵抗もなく口の中に入ってきたものは、なんと表現していいかわからないほど、衝撃だった。

 甘い、美味い、温かい、柔らかい、嬉しい、幸せ・・・

 ありとあらゆる感覚がひたすらその液体を求める。

 空腹すぎてその感覚もなくなっていたところに与えられた食事。

 口の中に少しずつ入ってくる液体を、もっともっとと足掻きながら必死に  飲み込んだ。


 そして、もどかしいほどゆっくりと飲まされていたものがミルクだとわかったのは、しばらく飲み続けて空腹が満たされたおかげで余裕が出来てからだった。

 あいかわらず目はよく見えず、ぼんやりとしている。

 が、自分が置かれている状況はなんとなく理解した。

 自分は、この赤ん坊の体は、男に抱かれてミルクを飲まされている。

 多分木製のスプーンで、ぬるく温めたミルクを、一匙一匙根気よくゆっくり飲ませてくれていたのだろう。

 時々かけられる声は何を言っているのかわからないが、優しい響きでとても心地良い。

「けぷ」

 ミルク臭いゲップが出ると、男が笑った。

 気持ちいい。

 すごく安らぐ。

 この感じはいつぐらいぶりだろう。

 自分の前世では生まれた時から戦いだった。安らぎなどなかった。

 ・・・ああ、あの瞬間は、あの時だけは安らぎを感じたかもしれないけれど。

 そしてその前。

 前世の前の生で覚えていることは、苦しみ。痛み。

 恨み。

 恨み。

 恨み。

 恨んで恨んで恨んで・・・

 そして・・・

 ───あ

 だめだ。眠い。

 頭は働いているのに体は赤ん坊だ。眠気に逆らえない。

 お腹がいっぱいになって、温かくて暖かくて微かな揺れが気持ち良くて─

『いい*。****。』

 優しい声と優しい揺れに誘われて、まどろみに落ちていった。


         

         ─────◆◆◆◆◆─────



「・・・ふぅ。」

 私は傾けていた首を戻した。

 集中した。集中しすぎてまだ頭が現実に戻ってきていない。

 釣り上げられた深海魚ってこんな感じなのかな。頭がフワフワする。

 固まっていた体を伸ばす。

 指を組んで力いっぱい上に伸ばすと、固まっていた上半身がギューッと伸びる。

 そのまま右に倒して左脇腹を伸ばしていくと、バキッとすごい音がした。

「んんん〜〜〜〜・・・、・・・ぷはぁ〜」

 左右に体を伸ばし体をほぐす。頭の付け根の首の部分に左右の指を押し当ててグリグリと揉みほぐす。

「っっあ〜・・・、さて、どうしよう。」

 首をぐるっと回しながら独りごちた。

 目の前のノートには、なぐり書きのような文字がのたくっている。

 文章を思いつくままにその勢いを殺さないように早く書いていると、どうしても文字は崩れてしまうものだ。

 と乱筆の言い訳をする。

 さて、どうしよう。

 ここまで書いた小説の、分岐点。

 ひとまず、この場面は終わり。次の章に入る。

 そこで彼の前世の回想にするか、とりあえず今世の何年後かに飛ぶか。

 喉の乾きを覚えてコーヒーカップに左手を伸ばす。

 半分ほど残ってたホットコーヒーは見事に冷えていた。

「タンブラーってどれくらい保温してくれるのかな。」

 冷たいコーヒーを流し込みながらペンを持ち続けた右手をプラプラした。

 手が痛い。もうこれはしょうがないけど、手が痛い。

 でもパソコンとかは書いている気がしないというか、書き直したり読み返したりが面倒で、どうしても紙にペンで書くほうが多くなる。

 アナログ人間だから紙が好きだ。

 あと、読むのは紙の本がいい。

 物理的にページをめくるのが読んでいる気がする。単純に目に優しいし。

 なんて脱線しているが脳内の別の部分では別のことを考えている。

 そう。

 問題は、名前だ。

 主人公の名前。主人公を拾った男の名前。更には前世の名前も前前世の名前も必要だ。

 私は名前を考えるのが苦手だ。

 日本語の名前なら、そこそこ聞いたことがある苗字に、親の気分になって付けたい名前を考える。もし世代が関係あるなら、名前ランキングみたいのでよく使われる漢字を探したりする。

 が、カタカナの名前は苦手だ。どこかで聞いたような名前しか思い浮かばない。

 外国の俳優だったりスポーツ選手だったり、あるいは過去に読んだマンガだったり小説だったり。

「名前〜・・・う〜ん、名前〜」

 次のコーヒーを淹れるためにお湯を沸かしながら、歩き回って考える。

「まぁ、珍しく今回はタイトルがもう決まってるしね。」

 いつもはタイトルを決めるのも苦手で最後まで空欄だったりするけど、今回は最初から決まってた。

 昨今の異世界転生や召喚もののラノベの傾向は、タイトルが長くてあらすじみたい。なので。

 [何度生まれ変わっても絶対赦さない]

 私は一枚目の一番上の罫線の上に大きめの字で書いた。





読んでくださりありがとうございます

はっきり言うと、この話にはジャンルがありません

今後、異世界転生を続けるか、はたまた恋愛になるのかファンタジーになるのかリアルになるのか

もしリクエストが


長く生温かい目で見守っていただけたらと思います

それではまたいずれm(_ _ )m

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