マンジトカゲの悲劇
ここはヨーロッパ。今日も自生しているバナナが黄金色に輝いています。
おや?白地に黒の幾何学模様が浮かぶ生き物がバナナの木を登ってきました。
今日の主役は、このマンジトカゲです。
マンジトカゲは、右側面から見れば卍模様が浮かぶトカゲですが、左側面から見ると………鱗を削り取られているのです。
これは、絶滅したホモ・サピエンスが遺したロボットによるものです。
ホモ・サピエンスは、原生生物に対して環境破壊を働いているのです。
ロボットはマンジトカゲだけでなく、ホモ・サピエンスが生息していた時代から姿を変えていないバナナやパイナップルも特定外来危険種として排除しています。
ある学説によると、生息していた時代を完新世と呼び、全ての生物が最終進化を遂げてその時代を最後に全生物が絶滅すると考えていたとされています。
そのため、完成していたはずの地球環境を復元するために現存する全生物を攻撃するようなのです。
もし恐竜が大型化できたジュラ紀の地球環境が復元したとしても、自分達の環境に合わないという理由で生物を絶滅に追いやることでしょう。
ホモ・サピエンスにとっては、完新世の地球だけが地球なのです。
クリオロフォサウルスが適応して暮らしていた南極は南極ではないのです。
過去と未来の生物は、全て邪魔な存在なのです。
なぜマンジトカゲの左側面の鱗を剥がすのか、その理由は判明していません。
勿論、ホモ・サピエンスは最終進化など遂げていませんでした。
驚くべきことに、ホモ・サピエンスは肝臓に放射性物質分解酵素を持っていなかったようです。
それなのに、発電のためにプルトニウムを放出し、同時期を生きた生物を絶滅に追いやり、進化して放射性物質分解酵素を獲得した生物を絶滅させようとしているのです。
おかしな話ですね。
今日も、マンジトカゲがロボットに追われています。
ところがその時、大地震が発生し、地滑りを起こしてマンジトカゲとロボットを飲み込んでしまいました。
完新世の頃は環太平洋地域で発生していた大地震は、今ではヨーロッパプレート周辺でも頻発するようになりました。
完新世に存在した大陸が姿を変えつつあったからです。
ここでとうとう原子力発電所が大爆発を起こし、ロボットのエネルギー源は断たれてしまいました。
残念ながら、地殻変動によってマンジトカゲも絶滅してしまいました。
その一方で、新たな進化によって誕生した命もあります。
そのトカゲは、白い鱗の上に、左上と右下に黒い×字が並ぶ模様を浮かべていました。
もしホモ・サピエンスが生き残り、このトカゲに学名を与えるとしたら、ヒンケルトカゲと命名したことでしょう…