賊なんかじゃないから!
「創造主の子の名前を出すよう雇い主に言われたか?ふっ…不敬もたいがいにしろよ」
「待ってってば…ホントに違うの…ホントに……」
(このまま私は殺されるの?
環の嘘吐き…私を必要としてくれるどころか、殺そうとしている人のところに送るだなんて…)
バンッ
「…ノワール様?!」
その時、茶色の髪をした男性が入って来た。
「ニードか」
優しそうな、ちょっと弱そうなその男性の背には翼がなかったが、イケメンと同じように耳のあたりに小さな翼のようなものがついている。
「お前がいながら賊の侵入を許すとは。居眠りでもしていたか?」
「い、いえ……申し訳ございません」
深々と頭を下げるその人が可哀想だった。このイケメン、ノワールって呼ばれたっけ?なんか偉そうだけど性格すっごい悪い。
ドンッ
「きゃっ」
ノワールは私の背をニードの方に押し、よろめいた私をニードはしっかりと抱き留めた。
「依頼主を吐かせろ。あと、姉さんにも報告しておけ」
「はっ、かしこまりました」
言って私の手を紐で素早くグルグル巻きにするとニードは私の背をそっと押して歩くように促す。
「待って!本当に私、賊なんかじゃないから!助けて環──っ!!」