初めて聞いたぞ
神殿の前の広場には何匹ものヴァルカーンが羽を休めている。
「一匹一匹特徴が違う。ジャンヌの愛竜はこの中にはいない」
大小様々だが、どれも似たような感じだ。
「そっか…ちょっと待ってみよ?」
それからたぶん1時間くらいノワールと待ってみたけどジャンヌは来なかった。
「おかしいな。姉さんは毎日欠かさず朝の礼拝には参加するのに」
もう朝の礼拝の時間は過ぎ、皆自分のヴァルカーンに乗って空へ飛び立っている。
「やっぱりジャンヌの身に何かあったのかな…」
最悪の予感が頭を過ぎる。
「そうだ。フランツさんにも話を聞いてみない?」
「…父に、か」
明らかにノワールは嫌そうなのか眉間にしわが寄る。
「私も…自分の父親は苦手だよ。
ウチのお父さんは他に女作って出ていったし、お母さんは私より少し年上の男を作って私を邪魔にした。
でもノワールのお父さんはいい人じゃない。ノワールを邪魔になんかしてないでしょ?」
「はっ?なんだそれ……初めて聞いたぞ」
そういえば、ノワールに私の家族の事を話したの…初めてな気がする。
今まではノワールと一緒にいて忘れてた。でも、父親の話をして思い出してしまった…。
「うん…ノワールと一緒にいて幸せで忘れてた。でも…思い出しちゃった」
「カノン……分かった。父に会おう」
ノワールは優しく私の背中に手を添え、神殿の中に一緒に入る。