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君以外の妻などいらない
「選ぶも何も…俺にはカノンしかいない。帰ってくれ…妻の腹の子に障る」
「!!…よくも……よくも私の求婚を断ったわね…おぼえてらっしゃい!!」
バタバタとミチコ達は逃げるように出て行ったみたい。
「ノワ…ル……」
震えが止まらない…。
ノワールは…ミチコとの婚約を断った。
大丈夫…なのかな?
「ただいまカノン」
優しく額にキスしてくれ、またちょっとだけ強くぎゅってしてくれた。
「おか…えり」
「泣くな。俺はカノンだけのものだ」
「でも…ノワールは、ミチコと結婚した方が幸せに……私、ガルーダより寿命短いし…」
ガルーダの寿命がどれくらいかわからない、でも、100年も引きこもっていたノワールはどう見ても人間でいえば20歳くらいにしか見えない。
「カノン。それは…分かってる。君が俺より先に逝くのくらい分かってる。
でも、俺には君しかいない。君以外の妻などいらないっ」
私の首元に顔を埋め、ノワールは震えながらそう言った。