あの女を選ぶの?
「……」
……心が…崩れそう。
「うぅっ…」
賢いノワールなら……あの女を選ぶの?
下等生物の私よりもあの美女を選ぶの…?
「やだ…ノワール……」
私はノワールが好き。誰にも渡したくないっ。
ノワールと…結婚したい。
でもノワールは…?ノワールは……やっぱり自分と寿命が同じくらいの…ミチコを選ぶ?同じガルーダのミチコを選ぶ?
「やだよぉ…やだ…」
昨日、愛し合ったのは嘘なの?
私を妻と呼んだのは嘘だったの?!
「…うるさいっ。俺にはもう妻がいる!」
開けっぱなしのドアから聞こえて来たのは愛しいノワールの怒鳴り声。
「カノン!」
「ノワ…」
ノワールが浴室に入って来た。
「待ってノワール!そんな下等生物のどこがいいのよ!」
ヒステリックに叫ぶ声はミチコだろうか。湯気は開けっぱなしのドアから逃げて視界はいいはずなのに…涙でそこまで見えない。
「下等生物?誰の妻に向かって言ってんだ?」
ノワールは裸のままの私を抱き上げ、濡れるのも構わずにぎゅっと抱きしめた。
「その貴方が抱いているゴミよ!ノワール。爵位のない貴方はこのミチコ公爵よりもそのゴミを選ぶの?!」
「……」
ノワールは…どっちを選ぶの?
私は心の中で呟く。