本当に賊なんかじゃありません…
私は別の部屋に連れて行かれ、丁寧に拘束を解かれた。
「さて…お茶でもどうですか?」
ニッコリと笑うニード。ポットのお湯を注ぎ、いい香りのするハーブティーを入れて私の前に出す。
「あ…ありがとうございます」
急に優しくされて私は戸惑いながらも何故かお礼を言ってしまい…それを見る。
薄紫のそのハーブティー。なんか…毒じゃないか心配。
「ご安心ください。毒なんて入れてませんから。お菓子もよかったらどうぞ」
テーブルの上にあるクッキーの皿から彼も1つ取り、ハーブティーに付けて食べる。
「あの…私、本当に賊なんかじゃありません…」
「そうですね…」
コトリとカップを置き、ニードは真っ直ぐに私を見つめる。
年齢で言えば30代だろうか…優しいその眼の端には柔らかいシワがある。
「まずは、お茶が冷めないうちに飲んでください。
このお茶は身体が温まり、心がとてもリラックスするんですよ」
「あ…はい…」
彼も飲んだのだから平気だろう…一口飲むとさわやかなハーブの香りと甘さが口の中に広がった。
「美味しい…」
「よかった。このお茶はノワール様もお気に入りで。毎朝入れて差し上げているのです」