表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の大地  作者: 大田牛二
第三章 闘争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/226

王鑒

 安定太守・焦嵩しょうすうと討虜将軍・陳安ちんあんが兵を挙げて上邽に迫った。


 相国・司馬保しばほは使者を送って張寔ちょうしょくに急を告げた。


 張寔は金城太守・竇濤とうとうを派遣し、歩騎二万を督して赴かせた。


 竇濤の軍が新陽に至った時、愍帝崩御の報せが届いたため、司馬保が謀って尊号を称そうとした。


 破羌都尉・張詵ちょうせんが張寔に言った。


「南陽王(司馬保)は国の疏属(傍系の親族)なのに、その大恥を忘れてすぐに自尊を欲しています。成功できるはずがありません。晋王は近親で、しかも名徳があるので、天下の人を率いて彼を奉じるべきです」


 司馬保は宣帝(司馬懿)の弟・司馬馗の曽孫で、晋王(元帝)は宣帝の曽孫に当たるため、司馬保は「疏属」、晋王は「近親」になる。


 張寔は張詵の意見に従い、牙門・蔡忠さいちゅうを派遣して、上表を奉じて建康を訪ねさせた。


 蔡忠が到着した時には、元帝が既に即位していた。


 しかし張寔は江東の年号を用いず、そのまま愍帝の年号である建興を称した。


 その頃、東晋が王敦おうとんに江州牧を加え、王導おうどうを驃騎大将軍・開府儀同三司にした。


 王導が八部従事を派遣して揚州の郡国を巡行させた。


 諸従事が帰還して共に王導に会いに行き、それぞれ二千石の官長(太守・国相)の得失について発言したが、顧和こかだけは無言であった。


 王導がその理由を問うと、顧和はこう言った。


「あなた様は陛下を輔佐する立場になったので、むしろ、舟を呑みこむような大魚でも漏らしてしまうほど、法を緩くするべきです。なぜ、風聞を聴き集めて、察察(細かくて潔白すぎること)によって政を為そうとしているのですか?」


 王導は感嘆して称賛した。


 顧和は字を君孝といい、顧榮の族子(同族兄弟の子。自分より一代下の親族)である。二歳の時に父を失ったが、幼年の頃から節操高く、族叔の顧栄に重んじられて、


「これは我が家の麒麟であり、我が一族を興す者は、必ずやこの子である」


 と評された人物である。


 






 漢趙の中常侍・王沈おうしんの養女は美しかったため、漢趙の昭武帝・劉聡りゅうそうが左皇后に立てた。


 尚書令・王鑒おうかん、中書監・崔懿之さいいし、中書令・曹恂そうじゅんが諫めた。


「私が聞くに、王が立てる后とは、徳が乾坤(陰陽・天地)に匹敵し、生きている間は宗廟の祭祀を受け継ぎ、没したら后土(土地神)に配され、必ず世徳名宗(代々功徳がある名門)かつ柔順・清静で美善な女性から択ぶものであり、そうすることで四海の望みに副い、神祇の心に符合させるのです。前漢の孝成帝は趙飛燕を后としたため、後継者を絶滅させ、社稷を廃墟にしました。これは前鑑(前代の教訓)です。麟嘉以来、皇后の位は徳によって挙げられていません。たとえ王沈の妹や娘であっても、王沈は刑余の小醜(刑を受けて生き残った醜い者。宦官)なので、なお椒房(皇后の宮殿)を汚すことはできません。その家婢であるのならなおさらです。後宮の妃嬪は皆、王侯の子や孫なのに、どうして一旦にして婢を主にできるでしょうか。私は国家の福とならないことを恐れます」


 昭武帝は諫言を受けて大いに怒り、中常侍・宣懐せんかいを使って太子・劉粲りゅうさんにこう告げた。


「王鑒らの小子は狂言侮慢した(狂言を発して皇帝を侮った)。君臣における上下の礼がなくなっているので、速やかに追究せよ」


 王鑒らは逮捕されて市に送られ、皆、斬られた。


 金紫光禄大夫・王延おうえんが車馬を馳せて、宮中に入って諫言しようとしたが、門者(門衛)が通しませんでした。


 王鑒らが刑に臨むと、王沈が杖で叩いて言った。


「庸奴よ、まだ悪が為せるか。我が家の事が汝に何の関係があるのだ」


 王鑒は目を見開いて叱責した。


「豎子よ、大漢を滅ぼすのは、正に汝のような鼠らと靳準きんじゅんが原因になるだろう。先帝に汝の事を訴えて、地下で汝を捕えて裁かなければならない」


 靳準が王鑒に言った。


「私は詔を受けて汝を捕えたのだ。どのような不善があって、汝は漢の滅ぶ原因が私にあるというのだ」


 王鑒が言った。


「汝は皇太弟(劉乂)を殺して主上に不友の名(友愛ではないという悪名)を獲させた。国家が汝のような者を畜養しているのに、なぜ滅びずにいられようか」


 崔懿之も靳準に言った。


「汝の心は梟鏡(「梟」はフクロウで、母を食べる悪鳥とみなされていた。「鏡」は「破鏡」という獣で、父を食べるといわれていた)のようであり、必ず国患となる。汝が人を食べたら、人もまた汝を食べるであろうよ」


 彼らが斬られた後、昭武帝は後に宣懐の養女も中皇后に立てた。


 漢趙の忠臣たちが斬られていく中、華北で奮闘していた晋の使持節・侍中・都督・太尉・并州刺史・広武侯・劉琨りゅうこんが殺害されていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ