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紅蓮の大地  作者: 大田牛二
第二章 五胡躍動

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趙染

 漢趙の中山王・劉曜りゅうよう趙染ちょうざいは長安へ侵攻し、六月、劉曜が渭汭に駐屯し、趙染が新豊に駐屯した。


 晋の索綝さくちんはそれを受けて、兵を率いて出撃し、漢趙軍を防ごうとした。


「ふん、索綝如き、何ができようか」


 趙染は索綝を軽んじていた。それを長史・魯徽ろびが諫めた。


「晋の君臣は自ら強弱が敵わないことを知っているので、我々に対して必死になるはずです。軽んじてはなりません」


 窮鼠が猫を噛むことがあるかもしれないのだ。しかし趙染はこう応えた。


「司馬模の強盛をもってしても、私は枯木を倒すようにそれを取った。索綝のような小豎が、どうして私の馬蹄や刀刃を汚すことができようか」


 早朝、趙染が軽騎数百を率いて索綝を迎撃し、


「索綝を獲た後、食事にしようではないか」


 と、笑いながら言った。ところが、趙染は索綝と城西で戦うと索綝は必死に兵を鼓舞して戦ったため、趙染は敗れてしまった。


 趙染は後悔して、


「私は魯徽の言を用いなかったために、こうなってしまった。何の面目があって彼に会えるか」


 と言うと、真っ先に魯徽を斬るように命じた。


 魯徽は殺される前に、


「将軍は諫言を容れずに敗北を招いておきながら、忠良の士を誅殺するとは、どうやって今後世間に顔向けされるのでしょうか。袁紹がかつてこのようなことをしましたが、将軍の行為はこれに続くものであり、その滅亡は必至でしょう。残念なのは大司馬(劉曜)の姿を最期に一目見ることが叶わずに死ぬことです。死者には知覚がないと言われますが、もしそうでないというのであれば、田豊に会い、将軍のことを黄泉の国において訴え、安らかな死を迎えられないようにいたしましょうぞ」


 と言い放った。そうしてから、処刑人を叱りつけ、


「我の面を東へ向けよ」


 と言い、劉曜の陣がある方向を向いて処刑された。


 劉曜はこれを聞くと、


「僅かな水溜りには、一尺もある鯉は入らぬというらしいが、これこそ趙染のことを言うのであろうな」


 と、嘆息した。


 魯徽の言う通り、趙染の行動はまるで官渡の戦いで敗れた時の袁紹に似ている。しかし、袁紹は一度は田豊を用いようとしただけに彼は袁紹より劣ると言えるだろう。


 晋の朝廷はこの戦いで勝利した索綝に詔を発して驃騎大将軍・尚書左僕射・録尚書を加え、皇帝の代わりに命令を発して諸事を行う権利を与えた。晋はいつの時でも賞する時、極端である。


 劉曜と趙染が再び将軍・殷凱いんがいと共に兵・数万を率いて長安に向かうことにした。


「どこぞの尻ぬぐいをしなければならないとはな」


 酒を飲みながら劉曜は趙染のことを揶揄った。趙染は言い返すことができないまま進軍した。


 晋の麴允きくいんはこの漢趙の動きに馮翊で迎撃しようとしたが、敗戦した。


「敵は勝利して油断している。今、奇襲をかければ、勝利できる」


 彼はそう言って兵を集めなおすと殷凱の営を夜襲した。結果、殷凱は敗死した。


 劉曜はこれを受けて兵を還すと懐で河内太守・郭黙かくもくを攻撃した。三屯(三つの兵営)を並べて包囲した。


 郭黙は食糧が尽きたため、妻子を人質にして劉曜に送り、米を買い入れる許可を請うた。


「良かろう」


 劉曜が許可したが、郭黙は買い終わると再び城に籠って守りを固めた。


 怒った劉曜は郭黙の妻子を黄河に沈めてから攻撃を開始した。


 郭黙は新鄭の李矩りきょに投じようとした。


 李矩は甥の郭誦かくしょうを派遣して郭黙を迎え入れようとした。しかし郭誦は兵が少なかったため、進んで助けようとしなかった。


 ちょうどこの頃、劉琨りゅうこんが参軍・張肇ちょうちょうを派遣し、鮮卑・五百余騎を率いて長安に向かわせていたが、張肇は道が阻まれて通れなかったため、引き還して李矩の営を通った。


 そこで、李矩は張肇を説得して漢趙の兵を攻撃させた。


 漢趙の兵は鮮卑の兵を望み見ると、


「まさか鮮卑の兵が来るとは……」


 劉曜は戦わずに退走した。こうして、郭黙は兵を率いて李矩に帰すことができた。漢趙の昭武帝・劉聡りゅうそうはこれを受けて劉曜を召還して蒲坂に駐屯させた。


 劉曜に揶揄われただけに趙染はいい気味だと笑いながら寝るとその夜、悪夢をみた。激怒した魯徽が現れ、趙然へ向けて弓を引いて射るというものである。


 趙染は恐怖のあまり目覚めた。


「ふ、夢であったか」


 そんな風に夢を気にすることなく、趙染は秋、晋の北地を攻めた。これを麴允がこれを防いだ。


「麴允如き、何が……」


 趙染は意気揚々に軍の先頭で指揮を執っていたが、そこに弩が中って死んだ。


 十一月、昭武帝が晋王・劉粲りゅうさんを相国・大単于に任命し、百官を総領させた。


 劉粲は若い頃から俊才があったが、宰相になってからは驕慢で、奢侈で、専横にして放縦になり、賢才を遠ざけて佞人と親しみ、厳格苛烈で諫言を聴かなかったため、国人が嫌うようになった。





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