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紅蓮の大地  作者: 大田牛二
第二章 五胡躍動

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段末柸

 広平の人・游綸ゆうりん張豺ちょうざいが数万の兵を擁して苑郷を占拠し、王浚おうしゅんの假署(仮りの任官)を受けた。


 これを受け、石勒せきろく夔安きょうあん支雄しゆうら七将を派遣して苑郷を攻撃させ、外塁を破らせた。


 これに対して王浚は、督護・王昌おうしょうを派遣し、諸軍と遼西公・段疾陸眷だんしつりくけん、その弟・段匹磾だんひつてい段文鴦だんぶんおう、従弟の段末柸だんまつはの兵・五万を指揮して襄国の石勒へ進軍させた。


 段疾陸眷が渚陽に駐屯した。


 石勒が諸将を派遣して出撃させたが、皆、段疾陸眷に敗れていった。


 段疾陸眷が大いに攻城兵器を造って城を攻めようとしたため、石勒の兵は甚だ懼れた。そこで石勒は諸将を招いて策を謀り、こう言った。


「今は城壁がまだ堅固ではなく、食糧の蓄えも多くない。兵の数は敵のが多くて、俺たちは少ない。挙句の果てには外からの救援もない。そこで俺は全ての兵を動員して戦を決したいと思うが、どう思う?」


 諸将は皆、


「堅守することで敵を疲れさせ、退くのを待ってから攻撃した方が良いでしょう」


 と、反対した。


 しかし張賓ちょうひん孔萇こうちょうはこう言った。


「鮮卑の種では段氏が最も勇悍であり、中でも段末柸が突出していますので、その鋭卒は皆、段末柸の所にいます。今、聞くところによると、段疾陸眷は数日内に北城を攻めようとしていますが、その大軍は遠くから来て、連日戦闘しており、しかも我々は孤弱で敢えて出撃することはないと思っているため、戦意が緩んでおります。とりあえずは出撃せず、怯えているように見せて、北城の城内に秘かに設けた突撃用の門を穿って敵が来るのを待ち、隊列が定まる前にその不意に出て、直接、段末柸の帳を衝くべきです。そうすれば、敵は必ずや驚愕して計を為す暇もないので、必ず破ることができましょう。末柸が敗れたら、残りの者は攻撃しなくても潰えます」


 石勒はこの意見に従い、秘かに突門を造った。


 暫くして段疾陸眷が北城への攻撃を開始した。


 石勒が城壁に登って眺め見ると、段疾陸眷の将士の中には油断して武器を手から放して寝ている者もいた。


「戦というものは人が成す以上、油断が生じるものだな」


 石勒は孔萇に命じて、鋭卒を監督して突門から出撃させた。城壁の上で鼓譟(戦鼓を敲いて喚声を上げること)して助勢させる。


「さて、行くとしますかね」


「どこに行かれるのですか?」


 張賓がそう聞くと石勒はこう答えた。


「なに、ちょっくら突門に行くのさ」


 孔萇は段末柸の陣を攻めたが、突破できず、退いた。もちろんわざとである。


 段末柸はそれを追い、塁門に入ったところで、彼の頭上から影が落ちてきた。


「你好」


 落ちてきたのは石勒である。彼はそのまま段末柸の顔に拳を叩きこみ、馬上から叩き落しそのまま捕えた。


「さあ、やるかい?」


 石勒は周りの兵を見据えながら言うと、兵は逃走していった。


「つまらんなあ」


「将軍、無茶を」


 孔萇がそう言うと石勒は肩をすくめながら、気絶している段末柸を肩に抱きかかえる。


「お前は段疾陸眷らを攻めろ」


「承知」


 段疾陸眷軍は段末柸が捕らえられたと聞くと皆、逃走を図り始めた。そこに孔萇が勝ちに乗じて追撃し、屍が三十余里も並んだ。孔萇は鎧馬(鉄甲を着た馬)五千頭を獲た。


 段疾陸眷は余衆を集めて引き還し、渚陽に駐屯した。


 石勒は段末柸を人質にして、使者を派遣して段疾陸眷に和を求めた。段疾陵眷はこれに同意しようとすると、段文鴦が諫めた。


「今、末柸一人のために滅亡に瀕している賊を放てば、王彭祖(王浚)に怨まれて、後患を招くことになるのではありませんか」


 しかし段疾陸眷は従わず、逆に賄賂として鎧馬や金銀を石勒に贈った。併せて段末柸の三弟を人質として送り、段末柸を返すように請うた。


 石勒の諸将は皆、段末柸を殺すように勧めたが、石勒はこう言った。


「遼西鮮卑は強健な国だ。俺たちとは元々仇讎がなく、王浚に利用されていただけだ。今、一人を殺すことで一国の怨を結ぶのは、良い考え方とは思えない。彼を帰らせれば、俺たちに感謝し、再び王浚に利用されることはなくなるだろうさ」


 こうして石勒は厚く金帛を贈って応え、石虎せきこを派遣して、渚陽で段疾陸眷と会盟して兄弟の契りを結ばせた。因みに石勒が兄弟の契りを結んだのか、石虎が結んだのかははっきりしていない。


 段疾陸眷が引き帰したため、王昌も一人で留まるわけにはいかず、兵を率いて薊に還った。


 石勒は段末柸を招いて共に宴飲し、父子の関係を結ぶことを誓って、遼西に還らせた。段末柸は遼西への道中、毎日南に向かって三回拝礼した。それほどに彼は石勒に感謝していた。そのことがわかる話がある。


 段末波は南を向いて放尿しようとしなかった。ある者が理由を問うと、


「我が父が南におられるからだ」


 と答えた。段末波が石勒に感謝する様はこれほどであった。


 この後、段氏は専心して石勒に附くようになり、王浚の勢力がしだいに衰えることになる。


 游綸と張豺は石勒に投降を請うた。


 石勒が信都を攻めて冀州刺史・王象おうしょうを殺したが、王浚が邵挙しょうきょを行冀州刺史に任命して信都を守らせた。



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