表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の大地  作者: 大田牛二
第一章 八王の乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/226

陸機

 石超せきちょうが進軍して緱氏の朝廷軍の本陣にまで迫った。そのため太尉・司馬乂しばがい西晋の恵帝・司馬衷しばちゅうを皇宮へ戻した。


 朝廷軍が押され始めたが、東陽門外では朝廷軍が牽秀しんしゅうの軍を破った。


 大将軍・司馬穎しばえいはこれを受け、将軍・馬咸ばいを派遣して前将軍・陸機りくきを助けさせた。


 太尉・司馬乂は恵帝を奉じて建春門(建春門は漢代洛城の上東門。穀水がその前を流れており、石橋がある)で陸機と戦った。


 ここで司馬乂の司馬・王瑚おうこが奇策を仕掛けた。数千騎を派遣し、馬に戟を繋げて馬咸の陣に突撃させたのである。


 これにより、馬咸の軍が乱れ、馬咸は捕まって斬られた。


 馬咸の軍の大崩れから立て直すことのできなかった陸機軍は大敗して七里澗に向かった。死者が積み重なり、そのために川の水が流れなくなるほどの大敗であった。


 この勢いのまま朝廷軍は大将・賈崇かすうら十六人を斬り、石超は遁走した。


 以前、宦人の孟玖もうくは大将軍・司馬穎に寵用されており、自分の父が邯鄲令に任命されることを欲した。


 左長史・盧志ろしらは皆、敢えて反対しようとしなかったが、陸機の弟である右司馬・陸雲りくうんが頑なに同意せず、こう言った。


「この邯鄲は、公府の官属の資格がある者が担当するものです。どうして宦官の父が居られるのでしょうか?」


 この件があったため、孟玖は陸雲を深く怨むようになっていた。


 孟玖の弟・孟超もうちょうは一万人を統領して小督になり、戦いが始まる前に兵を放って大略奪させていた。


 陸機が主犯を逮捕したが、孟超が鉄騎百余人を統率して、直接、陸機の営内に入って奪い、顧みて陸機に、


「貉奴に都督になれるのか?」


 と、罵った。


 陸機の司馬・呉郡の人・孫拯そんじょうが孟超を殺すように勧めたが、陸機は進言を受け入れることができなかった。この時、建春門の戦いの前でその前に指揮官の一人を裁くことに躊躇してしまったのである。


 しかし彼の甘い態度を見た孟超は衆人に、


「陸機が謀反しようとしている」


 と宣言し、また、孟玖に書を送って、


「陸機は双方の様子を伺っているので、速やかに勝敗を決しない」


 と告げた。


 建春門の戦いが始まると、孟超は陸機の指揮を受けず、軽兵を率いて単独で進み、敗れて戦死した。


 孟玖はこれを知ると弟を陸機が殺したのではないかと疑い、司馬穎に、


「陸機は長沙に対して二心を抱いています」


 と、讒言した。


 牽秀はかねてから孟玖に諂って仕えており、将軍・王闡おうりょ郝昌かくしょう、帳下督・陽平の人・公師藩こうしはんも皆、孟玖によって推挙・任用されたため、一緒になって陸機の謀反を実証した。


 司馬穎は大いに怒り、牽秀に命じて、兵を率いて陸機を捕えさせた。


 参軍事・王彰おうしょうが諫めた。


「今日の挙は強弱がはっきりしており、凡人でも我々が必ず勝利すると知っています。陸機ならなおさら形勢を理解しているので、謀反するはずがありません。ただ、陸機は呉人なのに、殿下が過分に用いたので、北土の旧将が皆それを嫌っているだけです」


 しかし司馬穎は諫言に従わなかった。


 陸機は牽秀が至ったと聞くと、軍服を脱いで白帢(白い帽子)を被り、牽秀と会見し、司馬穎に別れを告げる書を準備してから、嘆いて、


「華亭の鶴の鳴き声をまた聞くことができるだろうか」


 と言った。


 牽秀は陸機を殺した。


 陸機は将軍としての才覚はほとんどない人物であったが、主君からの期待に対して応えようとする誠実さを持った人物であった。そんな彼に大任を与えておきながら彼を最後まで信じることさえできなかった司馬穎は批難されるべきである。


 司馬穎は陸機の弟に当たる右司馬・陸雲、平東祭酒・陸耽りくしと孫拯も逮捕し、全て獄に下した。


 記室・江統こうとう、陳留の人・蔡克さいこく、潁川の人・棗嵩そうすうらが上書してこう主張した。


「陸機は浅謀のために敗戦をもたらしたので、これを殺すのは問題ありません。しかし反逆に至っては、衆人が共にそのようなことはなかったと知っています。先に陸機の反状を調査し、もしも証拠があるようならば、それから陸雲らを誅しても晚くはありません」


 江統等が懇切に請願して止まないため、司馬穎は三日間、躊躇した。


 蔡克が入室して司馬穎の前に至り、叩頭して血を流しながら言った。


「陸雲が孟玖に怨まれていることは、遠近で知らない者がいません。今、果たして殺されることになったので、心中で王のためにこれを惜しんでいます」


 蔡克に従って入室した僚属も数十人おり、皆、涙を流して強く命乞いをしたため、司馬穎は同情を覚え、陸雲を赦そうとし始めた。


 しかし孟玖が司馬穎を抱えて中に入らせ、陸雲と陸耽を処刑して、陸機の三族も皆殺しにするという命令を下すように催促した。


 獄吏が孫拯を拷問して、両方の踝骨(くるぶしの骨)が現れるほど殴ったが、孫拯は終始、陸機の冤罪を語った。


 獄吏は孫拯の義烈を知ってこう言った。


「二陸の冤罪を誰が知らないというのだ。君は自分の身を愛さないのか?」


 孫拯は天を仰いで嘆息し、こう言った。


「陸君兄弟は世の奇士であり、私は知遇と愛情を蒙った。今、既にその死を救うことができなくなったのに、どうして孟玖らに追従して誣告することができようか?」


 孟玖らは孫拯を屈服させることができないと知り、獄吏に命じて孫拯の言葉を偽造させた。


 司馬穎は陸機を殺してから心中で常に後悔していたが、孫拯の言葉を見ると大いに喜んで、孟玖らに、


「汝の忠がなかったら、この姦を追究することができなかった」


 と言い、孫拯の三族を皆殺した。


 孫拯の門人・費慈ひじ宰意さいいの二人が獄を訪ねて孫拯の冤罪を弁明したが、孫拯は二人を諭して還らせ、こう言った。


「私は義によって二陸を裏切らなかった。死ぬのは自ずから私の運命なのだ。汝らはなぜそのようにするのだ」


 しかし二人は、


「あなたは二陸を裏切りませんでした。私もどうして君を裏切ることができるでしょうか」


 と言い、かたくなに孫拯の冤罪を訴えた。


 孟玖は二人も殺した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あっ陸瑁の方は全滅してないのか。
[一言] 陸機、権力者がころころかわる時代に比較的うまく生き残ってたのに最後はほぼ冤罪なのが残念…陸遜系の子孫が途絶えたのももっと残念ですが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ