勇者は仁王立ちした!!
お弁当を食べ終わるとあきちゃんは庭のお花を見に行った。今回の一件で植物が好きになったらしい。
「ねぇさっきの話なんだけど……」
食器の片付いた机を皆で囲む。ナゾくんも難しい表情で机の傍で仁王立ちしている。
植木鉢が邪魔で椅子に座れないのだろう。
僕は二人の顔を見てから一つうなずく。
二人もうなづき返してくれた。
スッとママが手を挙げた。僕らの視線がママに集まる。
「ねぇナゾちゃん。もしかしてなんだけど……間違ってたらごめんね?」
ママは少し困った顔でそう言った。
「大丈夫です」
ナゾくんは穏やかな顔でそう言った。
ママはあきちゃんが窓の外にいるのを確認してから一つ深呼吸をした。
「ナゾちゃん、『最後に魔王を倒すことができました』って言ったわよね? 『最後に』ってことはもしかして相討ちになったんじゃない? それかギリギリナゾちゃんの方が先に倒れた。だからまだ鍛練を続けてるんじゃないの?」
ママの言葉にナゾくん、元勇者はゆっくりとうなずいた。
「はい、そうです」
気づかなかった……あんなに爽やかに言っていた言葉に、そんな意味が込められていたなんて……。
そういえば、僕がナゾくんから聞いた話も勇者時代の話だけで"その後"の話は無かった。
「じゃぁ、もしかして…」
僕の声に二人はしっかりうなずいた。
「ここまでナゾちゃんの意識がハッキリしてるんだし、ナゾちゃんが分裂してるって可能性は低いと思うの」
「私もそう思います。特に何かが欠けている様な感覚は無いです」
真剣な表情でママが口を開く
「たぶんミミちゃんの持ってる種は……」
そう言って、ちらりと勇者に視線をおくる。
「えぇ、おそらく私と戦った魔王のものですね」
静かな勇者の声に思わず息を呑んだ。ママは瞳を閉じて細く息を吐き出した。
勇者が倒れて、種になったのと同じように魔王も種になった。そしてその種がミミちゃんの元に……
「巻き込んでしまってすみません」
ポツリと端正な声がした。