不思議な種を手に入れた!!
快晴。
抜群の洗濯日和だ。
干された家族3人分の洗濯物を見て、達成感と幸福を噛み締めていると
不意にパタパタと足音が聞こえてきた。
「ぱぱー! みてみてー!」
足元から聞こえる若干舌ったらずな声に瞬発的にしゃがんで笑顔になる。
「どうしたんだ、あきちゃん」
今年小学生になった娘は、太陽のような笑顔を向けながらこちらに何かを差し出していた。
手の中にあるものを僕に見せたいらしい。
「お、何か見つけたんだな」
今日は何があの小さな手の中に入っているのだろう。
ダンゴムシか蝉の抜け殻か。
過去にもぐらの死体を持ってきた日は流石に度肝を抜かれた。もう多少のことじゃあお父さん動じないぞ。
「ぱぱーこれなに?」
愛らしい娘の手の中には種が一粒握られていた。
「種かな?」
「なんのたねー?」
「んー、なんだろう?」
参った。植物については全くわからん。
胡桃くるみの様な……けど胡桃にしては小さすぎる。
「ママーちょっといいかい?」
「はーい」
リビングから少し顔を出して、こちらを伺っていたママに声をかける。
サンダルを履いたママは恐る恐る近づいてくる。もぐらが相当応えたらしい。
そっと隣から娘の手を覗きこむと、ママも種を見て首を傾げた。
「んー? なんだろうね?」
「ママ、これやっぱり種かな?」
「そうねぇ……種かなぁ? けど、こんなの見た事ないのよねー」
僕らが首を傾げていると娘の顔がパッと輝いた。
「わかった!」
そう言うと僕の袖をクイと引っ張った。
「おっとっと、いきなり引っ張ると危ないだろー?」
娘は元気よく倉庫の方へ進んでいく。
ママも少し遅れてついてきた。
「これ!」
娘の小さな指の先には、昔僕がプチトマトを育てていたプラスチック製の植木鉢があった。
「あら、懐かしいわねー」
ママが懐かしそうに目を細める。
最近は使われていなかったそれはうっすらと砂ぼこりを被っていた。
「あきちゃんおせわする!」
得意気な顔をしながら娘が言う。
あぁ、確かに育てれば何の種かわかるなぁ。
「ママ……」
「パパ……」
僕たちは顔を見合わせて頷きあった。
家の娘は天才かもしれない。
その後、皆で謎の種を植えた。