規制された未来
◆鳴神 翼◆
玄関先で凛と会って、話の流れで自宅に呼ぶ。
父さんは仕事、母さんはパート。家には誰もいない。
俺はみんな分のお茶と茶うけを準備し、自分の部屋に運ぶ。
誰か手伝ってくれてもいいんですけど？
そして、テーブルにお茶を置き、やっと座布団に座ることができた。
が、俺の右に弓、左に凛、そして正面にシープラ
「なぁ、なんで俺は挟まれているんだ？」
普通に四角いテーブルなんだし、それぞれで座ればいいじゃないですか。
なんで俺が挟まれて、しかも狭いし。
「シープラさんの話をしっかり聞く為じゃない」
「そうだよ。お兄ちゃんもしっかりと聞いてよね」
答えになっていませんよ？
とりあえず、今はいい。早いとこ説明をしてもらわないとな。
「シープラ」
「はいっ！ 何でしょうか？」
「知っている事全部吐け。全てだ」
「全部ですか？」
「あぁ、全てだ」
「私の知っている範囲で、かつ話せる範囲であれば全部話しますよ」
ん？ と言う事は離せない事もあるって事か？
とりあえず、話せる部分を聞いてみるか。
「じゃ、まずは――」
「シープラさんはお兄ちゃんの事、どう思ってるの！」
「そうです！ 突然現れて、一緒に住んでいるし！ 説明してください！」
おいおい、そんな事はどうでもいい。
もっと聞くことがあるだろお二人さん？
「鳴神さんの事ですか？ そうですね、好きですよ。ぞっこんです」
時間かとまり、空気の流れも止まり、シープラ以外の生命活動が止まる。
何言っちゃってるの？ バカなの？ アホなの？ 何そのセリフ。
もし、俺がお前に気があったら堕ちる所じゃないですか。
「ゴホン！ それよりもだ！ 一体モエルギ―って――」
「好きなの！ ダメだよ！ お兄ちゃんはダメ！」
「そうよ、いきなり出てきて奪うなんて、論外です！」
おーい、話を進めたいんですけど？
「鳴神さんの味って、濃くておいしんですよ。昨夜もかなり吸い尽くしたので、今夜もお願いしたいですね」
笑顔で話しているシープラの隣では、暗黒オーラが出まくり、俺に向けて殺気が飛んでくる。
「つか、そうだよ。俺もお前に何か吸われたんだ。しかも動けなくなるし。あれ何されたんだよ？」
「お兄ちゃんが、動けなくなるまで！」
「シープラさんに吸われたぁ！」
激しく動揺している二人。
なんか、どうでもよくなってきた。
さっさと話を進めよう。
「あれは鳴神さんの体内にあるモエルギ―を吸い取ったんですよ」
「モエルギ―が無くなると動けなくなるのか？」
「そうです。今の時代ではまだ解明されていませんが、皆少なからずモエルギ―を持っています」
「で、それって何？ 分かりやすく話してくれ」
「モエルギ―は萌える想い。人が人に、人が物に対する性的興奮を含めたエネルギーです」
「あの黒いのは？」
「あれはモエルギ―生命体、略して萌え体。モエルギ―の結晶を核に、モエルギ―を取り込む活動をする生き物です」
「何でここに現れた？」
それから、さっきまで騒いでいた左右の人達も真剣に話を聞いてくれた。
普段から、その姿勢が大切ですよ？ 人の話はしっかりと聞きましょう。
――
近未来、地球はエネルギー不足に陥る。
そこで発見された新しいエネルギー、モエルギ―。
人に宿っているモエルギ―を抽出し、結晶化させる。
さらにその結晶体にいろんな物を混ぜたのが『萌え体』になるそうだ。
萌え体は近くの適合するモエルギ―を集め、結晶を大きくさせる。
ただ、取り込めるモエルギ―が限定的で、一種類の萌えしか対応できない。
このモエルギ―の結晶を集め、電力などに変換させているらしい。
――
すごい技術ですね。
モエルギ―とか、すごいものを発見したもんだ。
「モエルギ―については分かった。で、シープラはどっから来たんだ？」
「ざっくりいうと、未来ですね。未来でもモエルギ―が切れかかって……」
なんだそりゃ、エネルギー問題解決してないじゃないか。
「何で切れかかっているんだ？」
「その、遠い未来の人は萌えないんですよ。萌え人が極端に減ってしまったんです」
マンガ、アニメ、小説の規制。
さらに服装や髪形、言葉使いまで規制されてしまい、萌える事が出来なくなったらしい。
マンガを見たから殺人が起きた。
小説を読んだから強盗が起きた。
エッチな本を読んだから幼女誘拐が起きた。
メイド服を着るから刺された。
チャイナ服を着るから誘拐された。
セーラー服を着たから監禁が起きた。
規制、規制、規制。
何かが起きるたびに政府は規制を行い、結果モエルギ―を出す環境が失われてしまった。
「じゃぁ、なんでシープラがこの時代に、俺の所に来たんだ」
