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その時、凛は見た!


 ◆御剣 凛◆


 学校が終わって放課後になり、弓ちゃんに電話をしてみたけど出なかった。

今の時間は部活かな? もう少ししたらもう一度電話してみよう。


 帰ろうと正門を出て、自宅の方に向かっていたら袴姿の弓ちゃんが学校に向かって走っていくのが見えた。

やっぱり部活だったんだね。走り込みか、でも校外で走るって珍しいな。


 すると、弓ちゃんの後から同じく袴を身に着けた男の子も、弓ちゃんを追いかけるように走っている。

でも、その表情は普通じゃない。

何か、獲物でも狙っているかのような怖い表情。そして、走っているのに涼しい顔をしている。

先に走ってきた弓ちゃんは結構つらそうだったのに。


 ちょっとだけ気になって正門から弓ちゃんたちを見てみた。

あ、翼君とシープラさん。

なんだろう、何かもめてるのかな?

それに、他の部員たちがいない、もしかして何か起きているのかしら?


 そして翼君がさっきの男の子に襲われそうになってる。

弓ちゃんも何だか怯えているみたい。

せ、先生を呼びに行かないと!


 と、思った瞬間四人が消えた。

え? まただ。今朝と同じように翼君が消えた。


 走って消えた辺りを見てみたけど何もない。

普通の昇降口。周りを見たけど誰もいない。


 おかしい、こんなことが二度も起きるなんて……。

翼君、一体何が起きているの?

もしかして、何か危険なことに巻き込まれているんじゃ?


 そして、そのうち私の力が必要になって助けを求めに来るの?

そ、そうなったら私も力を貸してあげるよ。


――


「凛、お前が欲しい」

「わ、私でいいの? 本当に?」

「あぁ。俺にはお前が必要なんだ」

「いいよ。私の全てを翼君にゆだねる」

「ありがとう。凛、俺はお前の事がずっと昔から――」

「わ、私も! 私も翼君の事が!」


 抱きしめあう二人。

そして、私は少しだけ背伸びをして瞳を閉じる。

彼は優しく私の顎をつかんで……。


―― 


 わぁぁぁぁぁ! な、何考えているの!

べ、別にそんな事考えてないしっ!

確かに、私から距離を置いちゃったかもしれないけど、別にそこまで好きじゃないしっ!


 そう、私は弓ちゃんが心配なの。

きっと翼君に変なことされて、変な事に巻き込まれているんだわ!

私が弓ちゃんを助けないと!

全く、翼ったらダメなお兄ちゃんなんだから!


 とりあえず、この場を少し離れて様子を見よう。

今朝と同じならきっとまた現れるはず。


 私は正門の方に再び戻り、陰から昇降口の様子をしばらく伺った。

あ、やっぱり! 私の予想は当たった!


 男の子が倒れており、翼君も弓ちゃんも無事みたい。

でも、何だか様子が変ね。二人ともすごく疲れているみたい。


 あ、弓ちゃんが翼君の手を握った!

ずるい! 私だって握りたいのに!

って、違う違う、私は弓ちゃんが心配なの!


 こ、こっちに向かって来る。

まずい、見ていたのがばれちゃう!

早く移動しないと。


 私は止めてあった自転車に乗り、全力で自宅の方に向かって飛ばした。

急げ、早くしないとあの二人が帰ってきてしまう。


 自転車を自宅に置き、一度深呼吸。

すぅぅぅ、はぁぁぁぁ。よし、落ち着いた。


 髪を直して、服のみだれもチェック。

ついでに、リップも付け直しておこう。

うん、淡いピンク色で可愛いね!

翼君、私のこと見てくれるかな?


 準備オッケイ。

あとは翼君の自宅前で待機していればいいね。

早く話が聞きたい。


 何が起きているのか。

私を襲ったあの黒い物は何なのか。

二人が消えた理由。そして、突然現れた銀髪の女の子。


 シープラさんが来てからきっと何かが変わった。

あの女、翼君となれなれしいし、問い詰めないと……。


「凛ちゃん! 何してるの?」


 弓ちゃんが走ってこっちに向かって来る。

やっと帰ってきた。私の格好、変じゃないよね?


「あ、弓ちゃん。お帰り、遅かったね」


「えっと、ちょっと色々あってね」


 きっと、その色々がさっきの事だね。

私は知っているよ。見ていたから。


「凛、こんな所でなにしてるんだ?」


 学校でお礼を言おうと思ったけど、周りの皆が気になって言えなかった。

ちゃんとお礼を言わないと……。


「あの、今朝のお礼ちゃんと言えていなかったから……」


 あ、私のことしっかり見てくれている。

このリップ可愛い? もっとしっかり見てよっ!

翼君の為に付けたんだからねっ!


「いや、大したことじゃないし。怪我してないか?」


「うん。おかげさまで。あのさ、少し話できないかな?」


 断られたらどうしよう。

でも、ここで一歩踏み出す勇気が必要。

お願い、断らないで!


「今か?」


「出来れば、早い方がいいかな……」


「とりあえず、茶でも出すよ」


「うん。ありがとう」


 っしゃ! 久々に翼君とまともに会話ができた!

恥ずかしい! 直接目が合っただけで心臓が爆発しちゃうよ!


 弓ちゃんはよく毎日一緒に暮らしていて耐えられるね。

私だったら毎日死んでいるかもしれない。


 しかも、お茶を出してくれるって!

それって翼君の部屋に行くって事だよね?


 失敗した! 大きい袋を持って来ればよかった!

いや、そこまでしたら変な女って思われちゃうね。


 せめて、翼君の私物を少しだけ拝借しよう。

えへっ、私がこんな事を考えているなんて、夢にも思っていないでしょ?


 私は生まれた時から、ずっと君を見ているんだよ?

弓ちゃんよりも付き合い長いんだからねっ!


 そこんところ、わかってくれるのかな?



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